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zoom RSS 映画評「少女たちの羅針盤」

<<   作成日時 : 2012/09/13 12:18   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・長崎俊一
ネタバレあり

水生大海(みずき・ひろみ=女性)の同名ミステリーをベテラン長崎俊一が映像化した作品。原作同様ミステリーと紹介したいのだが、バランス的に少々無理がある。

新進女優の舞利亜が映画撮影の為に廃墟となったホテルに連れて来られる。そこには彼女の殺人をほのめかすスプレーによる書き込みがあり、スタッフからは「“羅針盤”のメンバーだったんですよね」と訊かれ、不安を煽られる。
 そこから映画は4年前に遡って、楠田瑠美(成海璃子)が高校の演劇部担当教師と対立、同学年の二人北畠梨里子(森田彩華)と来栖かなめ(草刈麻有)、他校の演劇部員・江嶋蘭(忽那汐里)を誘って4人組の演劇ユニット“羅針盤”を立ち上げる。かなめの姉のタレント広瀬なつめ(黒川智花)も協力を惜しまない。
 色々細工をして披露したストリート・パフォーマンスは好評を博し、福山市の演劇コンクールにも参加する運びになる。最終的にはリーダーの瑠美が上手くコントロールして大きな問題にならずに済むが、この辺りから映画はメンバー間の軋轢や大人の事情で最初から決まっていたコンクールの仕組みなど少しずつ彼女たちの溌剌とした青春群像模様に暗い影を落とし始め、いよいよ悲劇の幕が切って落とされる。

ということでお話は最初に戻って行くのであるが、全く何も知らないで観始めた僕は最初清水崇君が「輪廻」の作り直しでもしたのかと思ったほど。
 が、その後は暫く溌剌とした演劇少女たちの青春群像劇が続くので、映画は一体どういう方向に持って行こうとしているのか興味をそそられることになる。しかるに、少々分量的に“過去”の部分が多く、余りに気を持たせすぎる感じが出始める中盤になるとその興味は失望に変わることになる。尤も青春群像劇としての興味は十分維持されるので、退屈するわけではない。何を作ろうとしているのか判然としないことにイライラするだけである。

一応ミステリーなので詳細は伏せるが、たまたま友達について行ったメンバーの一人が映画オーディションに合格した直後に彼女に不幸が襲い、その後彼女は自殺と思われる死を遂げる。並行して描写される現在の舞利亜は相変わらず素顔を見せない。

実はここに些か卑怯なミスリードがあって、ミステリー的に大いに気に入らない点ではあるが、探偵役の他のメンバーたちが現れ事件は一気に解決する。
 このミステリー部分はかなりお粗末であるし、全体の構成を考えると「なくもがな」という世評には大いに頷かざるを得ず、一般的解釈に従って僕も☆☆★を付けた。

ところが、本作はひょっとすると小傑作なのかもしれないと思われる解釈も出来るのである。即ち、このお話全体が舞台(練習と思えばなお都合が良い)で進行していた、と考える解釈である。何故そういう発想が生まれるかと言えば、“羅針盤”のメンバー全員が揃って幕切れを迎え、客席(但し誰もいない)に挨拶をするかのように終わるからである。
 そう理解すれば、これは恐らく原作を越えた作劇で、ミステリーはあくまで全体のほんの一部の要素に過ぎなくなり、ミステリー的になっちょらんという批判も殆ど意味を成さない。しかも、彼女たちが一生懸命演劇に打ち込む青春映画としてきちんと完了することになるのである。
 あのラストが映画作者がそこまで考えたものか、最近流行りの単なる時空を超えた演出に過ぎないのか、それは脚本を書いたお二人か長崎監督に訊くしかないので、今の段階ではそう考えられなくもないという評価に留めておくことにする。

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少女たちの羅針盤/成海璃子、忽那汐里、森田彩華、草刈麻有
水生大海さんの同名ミステリー小説を原作に『西の魔女が死んだ』の長崎俊一監督が映画化した作品です。ミステリー小説って積極的に買って読むほうではないので、原作のことは全く ... ...続きを見る
カノンな日々
2012/09/13 21:43

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
時空を超えた演出でしょう(笑)
最近の日本の映画には多いですね。
深く考えて計算してやっているとは思えんですが・・・・・
ねこのひげ
2012/09/14 06:00
ねこのひげさん、こんにちは。

本当に多いですね。
この間の「日輪の遺産」でも、戦時中と現在を結び付けていました。

余りにバランスの悪い作り方に、ちょっとそんな考えも浮かんだわけです・・・が、ねこのひげさんの仰るとおりでしょう^^
オカピー
2012/09/14 20:46

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