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zoom RSS 映画評「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」

<<   作成日時 : 2012/09/12 15:05   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2011年フランス=アメリカ=イギリス=ドイツ合作映画 監督ポール・W・S・アンダースン
ネタバレあり

「モンテ・クリスト伯」と並び称される大デュマの代表作「三銃士」はわがHPリメイク・リストに当たってみると60回近い映像化が試みられている。一番古いのは映画発明直後の1898年、決闘場面だけを撮ったほんの数分の英国作品である。

因みに「モンテ・クリスト伯」は読んだものの「三銃士」は読んでいない。とは言え、ジョージ・シドニーが監督したハリウッド版(1948年)、リチャード・レスターの「三銃士」「四銃士」(1973〜74年)も1993年版も「ヤング・ブラッド」(2001年)も見ているので大体のお話は解っているつもり。

1625年、剣士になるつもりで田舎からパリに出て来た生意気小僧ダルタニアン(ローガン・ラーマン)が尽く喧嘩を売って三銃士と呼ばれるアトス(マシュー・マクファーデン)、パトス(レイ・スティーヴンスン)、アラミス(ルーク・エヴァンズ)と決闘すると乗り込んだ広場に、若い王ルイ13世(フレディー・フォックス)を操るリシュリュー枢機卿(クリストフ・ヴァルツ)の配下であるロシュフォール隊長(マッツ・ミケルセン)の部隊が現れた為、結果的に四人で協力し合って退ける。
 王妃アンヌ(ジュノー・テンプル)にぞっこんの13世が王妃の意を汲んで彼らを厚遇したので思惑が外れた枢機卿は英仏を仲違いさせるべくスパイたる伯爵夫人ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を使って、王から贈られた首飾りを王妃が英国のバッキンガム公爵(オーランド・ブルーム)に愛の印として贈呈する不倫事件をでっちあげる。首飾りがなくなった事実を侍女コンスタンス(ガブリエル・ワイルド)からもたらされたダルタニアンは三銃士と共に取り返すべく英国へ乗り込む。

というお話の骨格は、不倫でっち上げを除いてこれまでの映画化と大体同じで、一番違うのが飛行船が活用されている点である。

本作では、小説とも事実とも関係なくその世界初の飛行船が知名度の高いダ・ヴィンチが設計したと設定され、その為に三銃士がヴェニスで設計図を盗む冒険が最初の一幕となっている。それを二重スパイのミレディと組んだ公爵が横取りして、ダルタニアンの描写へと移行していくのであるが、世界史で策士と習った記憶のある枢機卿が悪計をミレディに授ける辺りまではなかなか快調に展開する。
 即ち、絵的には飛行船を舞台に繰り広げられる闘いなど後半の派手さに全く及ばないが、お話としては権謀術数が繰り広げられる前半の方が一見のんびりしているようで、実際にはずっと面白いということ。TVの画面サイズでは余計そうである。

後半は、華美な画面だけではとてもカバーしきれないほど構成的に辻褄の合わぬところが出て来てぐっと調子が落ちる。そういう意味では無駄にはったりをきかせた画面や必要以上に大きい音量に誤魔化されにくいTVのほうが物語の整合性を把握するのにはふさわしい。

問題は悪女ミレディの扱いなり。彼女が二重スパイであること自体に何の問題もなく、彼女に扮するミラ・ジョヴォヴィッチのアクション描写が監督をしたポール・W・S・アンダースンの代表作「バイオハザード」そのままなのも、苦笑は誘われるにしても、さして大きな問題ではない。
 問題は彼女が首飾りをロンドン塔に置かずにネコババしてしまうことである。それなら最初から盗んで英仏以外のどこかへとんずらすれば良いものをわざわざ英国まで渡ってから失敬する。彼女がロンドン塔に偽物でも置けばスパイ活動と宝石獲得と一挙両得になって彼女自身にとって意味が出てくるが、そんな描写若しくは台詞はないし、僕の愚かなる頭では彼女の真意が計りかねる。

この後ロシュフォール一味が首飾りが王妃の許に戻らないように四銃士諸君を邪魔する時限サスペンスまじりのクライマックスに入っていくが、そうなると彼らもミレディが裏切って横取りし、さらにその彼女を銃士たちが捕まえるのを計算していたことになるわけで、枢機卿の最初の計画と照らし合わせるとお話に矛盾が生ずる。ロシュフォールが奪還した後彼女に代ってロンドン塔へ首飾りを置きに行くつもりだった? 男性では不可能だからミレディに託されたのだろうに。いずれにしても首飾りがなくてもロンドン塔から発見されなければ大した意味がない。尤も嘘はつけるが、嘘を付くくらいなら最初からこんな面倒臭い姦計は立てなくて良いであろう。
 かくして、ミレディとんずら以降の場面は、CGを駆使してどんなに華美であろうと、手に汗を握ってみることができなくなった。続編製作は既定路線だろうと踏んでミラ・ジョヴォヴィッチが扮しているが故にミレディが飛行船から落下しても「絶対死なない」と確信できる為最後のワン・ショットには何の効果もない。

四銃士たる諸君にとっての敵即ち映画上の悪役がリシュリュー、ミレディ、バッキンガム公爵と三グループに分かれているのも単純なお話の見通しを悪くしている。もし予定通りに続編を作るなら悪役を整理すべし。本作でも、大部分の旧作通り王妃が公爵に本当に首飾りを渡すというお話にして、公爵を悪役にする代わりにリシュリューやミレディの悪党ぶりを強調したほうが面白くなったはずである。

アルセーヌ・ルパン好きの僕の趣味に適う楽しめる冒険要素がいっぱいながら、扱いが少々雑。勿体ないねえ。

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三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船2D
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2012/10/18 19:42

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これは、劇場で観ました。3D大音量で。飛行船が好きなもので(^^ゞ
昔ながらの冒険大活劇でありましたが、テレビで観ると、たしかに???というところがありますね。
テレビは、冷静に観てしまうので、欠点がよく見えますね。

『プロメテウス』も3Dで観てきましたが、こちらも大音響で、座っている椅子がビリビリと振動して迫力ありましたよ。
ただ、3D向きの映画ではありませんでしたね。

深夜映画は、ノーカット字幕スーパーでありますね。構成しなおす手間をかける予算がないのでそのまま流しているんでありましょうね(^^ゞ
ねこのひげ
2012/09/13 03:59
ねこのひげさん、こんにちは。

そりゃまた失礼<(_ _)>
結論から言えば、原作はやはり良く出来ていた、ということになります。
ロシュフォールがリシュリューとは関係なく別の悪だくみを持っていたら話は別ですが、そうするとさらに悪役が増えて収拾できない。やはりそういう仮定はできないのでしょうねえ^^;

>飛行船
「ツェッペリン」のいうのもありましたが、「ヒンデンブルグ」のほうが面白かったでしょう?
淀川さん自身が語った可笑しい逸話としては、かのハード・ロックの雄のドキュメンタリー「レッド・ツェッペリン/狂熱のライブ」を飛行船の映画と思って観に行ったら全然違っていたという大勘違いの巻^^
しかし、案外楽しめたと仰っていました。

>椅子がビリビリ
その昔椅子が振動するというキャッチでヒットした「大地震」を観ましたが、震えなかったぞ(笑)。
多分大都市の一部の映画館だけだったんでしょうねえ。

>深夜映画
解りました。
一応、映画ファンの為に字幕スーパーという理解にしておきます(笑)
オカピー
2012/09/13 19:16

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