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zoom RSS 映画評「ボローニャの夕暮れ」

<<   作成日時 : 2012/09/11 10:58   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年イタリア映画 監督プーピ・アヴァーティ
ネタバレあり

田舎に引っ込んで暫く経っているので大都会のミニシアターでしかかからないような作品には観ていないものが多い。その中には現在僕が頼りにしているWOWOWもNHK−BSもやってくれない作品が少なくないからだ。
 そんなわけで、WOWOWの曖昧模糊とした“イタリア映画特集”で放映された本作を作ったプーピ・アヴァーティという監督は何らかの形でフィルモグラフィーの凡そ半分弱に当たる15本の作品が日本で紹介されているベテランながら今回が全く初めてである。

モノクロからカラーに変わって本編が始まるが、カラーと言っても銀残しのような色彩にセピアのフィルターを被せたような極端に彩度の低いもので、恐らく時代背景である1938年から1953年頃までというイタリアの重苦しい時代を表現する為に監督が必要と思って行なった措置なのであろう。

1938年、17歳の娘アルバ・ロルヴァケルが通う高校の美術教師シリヴィオ・オルランドーは、余り見栄えが良くなく繊細すぎて友達は勿論恋人もいない娘に付き添って毎日学校に通っている。
 ここに全て落第点という男子生徒がいて、美術教師の判断次第で進級できるか否かという状況が発生した為、親バカを地で行く教師は彼に娘と優しく接してくれたら進級させると条件を提示する。
 やがて彼女がやっと出来た親切な女友達の家に招待された後その女友達を殺すという事件を起こす。女友達が相手を奪うことで自分の恋を壊したと一方的に思い込んだ結果であり、本をただせば、父親の過剰な思いが事件を引き起こしたわけである。

この父親には色々なコンプレックスがある。同級生が有名画家になったのは誇りであると同時に自分の状態を意識せざるを得ない。見栄えが良くなく碌な給料も貰っていない自分にふさわしくないほど妻フランチェスカ・ネリは美しい。戦前のこと故恐らく彼女の方に訳ありで彼に嫁いだのであろうが、妻を失った隣人の刑事エツィオ・グレッジョと精神的に愛し合っていることに気付いている。彼はそうした惨めな自分の姿を娘に見出し、なるべく上手く世に出してあげたいという気持ちがあったのだろうが、それが裏目に出たことになる。

かくして殺人犯の父として学校から放逐された彼は、裁判所関連の精神病院に入院することになった娘に寄り添う為に、妻を刑事と結び付けて一人近くに越す。その甲斐あって彼女は回復していき、終戦後には父娘仲良く暮せるまでになる。ある時総天然色の映画を観に行った映画館で娘が母親を発見する。娘のナレーションが母の帰還を告げて映画は終わる。

基調はイタリア映画らしく家族愛であるが、案外厄介な作品である。その様相は、イタリア的家族愛を代表する「鉄道員」(1956年)のように明快ではない。
 主人公は考え方次第で素朴な庶民とも取れるし、異常なまでの親バカとも取れる。善良とも取れるし、考え方によっては他人を不幸にする人物とも取れる。観客としてはどう彼に対峙していいものか少々悩まされる。
 が、彼が世渡り下手なのは確かであり、皮肉にもその負け犬的な生き方が彼の運命を好転させる。つまり、ファシストに抵抗も媚びもしないから、善良なのにファシスト協力者として射殺されてしまう刑事とは対照的に、最終的にささやかな幸福を得ることになるのである。

恐らくその展開に戦争中を主な背景とした理由がある。いつの時代でも起こり得るようなお話であっても、想像される妻との結婚経緯と刑事への譲渡、刑事の死、行方が解らなかった妻との巡り合いといった流れは戦争がなければ起こり得なかったと理解すべきものであり、すっきりしないカラー映像同様主人公の鬱屈した気分は、ファシズムという暗雲垂れこめるイタリア社会をそのまま反映しているものと考えるのが適当であるように思われる。戦後漸次訪れ、その度に大きくなっていく幸福を享受する主人公は正に復興していくイタリア国そのものであるようだ。

すっきり秀作と断言もしにくい映画でした。

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ボローニャの夕暮れ
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
WOWOWもBSも、あまりマイナーすぎるのはやらないでしょうね。
しかし、地上波でも、深夜から早朝にかけて、また映画が増えてきましたね。
今朝も『ロケッティア』をやってましたよ。
しょうもない番組よりありがたいですけどね。

スペインがフランコ総統に支配されていた時代のミステリー小説『風の影』というのを読みましたが、あの時代の暗さが出ていてよかったです。
ねこのひげ
2012/09/12 04:49
ねこのひげさん、こんにちは。

深夜映画は依然字幕でしょうか?
1980年代半ばフジテレビが民放では史上初のCMカットなし(勿論ノーカット)の字幕スーパーによるミッドナイト・アート・シアターを始めて我々を驚かしました。
それに影響されて、日本テレビがCMカットはあるものの、ノーカット字幕スーパーを始め、(映画ファンが見ることが前提である為)深夜放送は字幕というのが定着しました。

その後映画館でも吹き替えで観る人が増えました。という次第で、そういう疑問が湧いたわけです。

>スペイン
フランコ政権がなくなって、数十年に渡り人民が不当に苦労を強いられたファシズムと内戦を扱う映画が増えましたね。結果的に輸入されるスペイン映画の水準が一気に上がりました。
オカピー
2012/09/12 22:11

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