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zoom RSS 映画評「エッセンシャル・キリング」

<<   作成日時 : 2012/08/24 10:01   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー合作映画 監督イエジー・スコリモフスキー
ネタバレあり

アンナと過した4日間」(2008年)でおよそ20年ぶりに映画製作に復帰したイエジー・スコリモフスキーが今度は短いスパンで発表した作品。
 異色作ではあるが、僕にとって意外だったのはポーランド時代理解に難渋を極めたスコリモフスキーとは思えないほど解りやすいプロットということである。

アフガニスタン、アメリカ軍に捕まったアラブ人兵士ヴィンセント・ギャロが移送中に猪を避けようとして転倒した移送車から脱走、雪降り積もる中、動物用の仕掛けに足を挟まれたり崖から落ちたりする苦難の逃避行が続き、蟻や木の実を食べて露命を繋ぐ。乳児を抱えた女性を脅して母乳を拝借するという場面は野趣に溢れ異様な迫力がある。
 やがて精も根も尽き果てた状態で辿り着いた家で口の利けない女性エマニュエル・セニエに介抱され、翌朝馬に乗って旅立って行く。しかし、決して生を保証された旅ではない。

社会情勢故にアフガニスタンが舞台になっているが、実はどこが舞台でも良い。一人の人間が生きる為に必死にもがき、為しうることを何でもして生き抜こうとする動物的本能を観照的に描いているのである。動物的本能に則った行動の反面、その行動の狭間に人間的な心模様や生き延びる知恵が垣間見えるという面白さもある。尤もその知恵も動物的勘なのかもしれない。

人間が生き延びる為に本能に則って行動する様を主眼にしたドラマたる本作と、サスペンスを眼目にしたスティーヴン・スピルバーグの出世作「激突!」とを単純に比較するのは無理があるが、後者では主人公がタンクローリーから逃げるうちに原始人的闘争心(本能)が蘇って来る、即ちサスペンスのうちに人間の本能を見せるというドラマ性を内包し、逆に本作ではドラマの中にサスペンスがあるわけで、結局彼らは二人とも生き抜く闘いを終えた後原始人から現代人若しくは動物から人間に戻っていくのである。僕の脳裏に「激突!」が横切った所以である。アメリカ軍人以外に台詞がないというのも、台詞を最小限にしたあの傑作と似ている。映画ファンを自認するなら必見。

最後に主人公がどうなったかよく解らないところだけが、コウモリもといスコリモフスキーらしい。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
両作とも、の本では紀伊国屋書店が配給しておりますが、社員の中によほどの映画好きがいるのでありましょうな〜
『暗殺の森』のDVDの販売も紀伊國屋書店でありますしね。

リーアム・ニーソン主演の『THE GREY 凍える太陽』という映画が公開中で、これもサバイバルゲームであります。
追いかけるのは、灰色オオカミで・・・・灰色オオカミは、こんなことはしないけどな〜というのが気になるところでありましたけど・・・・面白くはありましたよ。
ねこのひげ
2012/08/25 04:43
ねこのひげさん、こんにちは。

>紀伊國屋書店
僕が映画を見始めた頃、配給会社と言えば、CIC、東宝東和、ユナイト、日本ヘラルド、ブエナビスタ(ディズニー)くらいでしたが、いつの間にかCICも再編されて日本支社は消え、大分様相が変わりましたねえ。
紀伊國屋書店はしぶ〜い作品を選んで配給していますねえ。

>灰色オオカミ
そりゃ「ごめんなさい」とオオカミさんんい謝るしかないですね(笑)。
オカピー
2012/08/25 18:07

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