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zoom RSS 映画評「あぜ道のダンディ」

<<   作成日時 : 2012/08/01 11:20   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・石井裕也
ネタバレあり

川の底からこんにちは」で俄然注目を浴びた後若手監督・石井裕也が発表したホームドラマ。

50歳の運送会社社員・光石研は何年か前に妻・西田尚美を失い、男手一人で育てて来た息子・森岡龍と娘・吉永淳が同時に大学に受かってしまう。息子が浪人した為こんなことになったのだが、胃癌の疑いが濃厚になった為幼馴染の田口トモロヲに全てを託そうと働きかける。

というところまでは先般観た「海洋天堂」と酷似しているが、本作はコメディーだから「僕らのワンダフルデイズ」の竹中直人同様早とちりと判って笑わせる、という形で進行していく。

光石氏としては自分が死なないと解っても東京で一人暮らしが始まる子供たちが心配でない筈もないし、孤独にならない筈もない。

かくして本作が描こうとしているのは、(父)親と子供たちの絆・・・という程重いものではなく、かと言って無視できない依存関係である。石井監督は同じ台詞を繰り返して使う傾向があるようで、本作では「解っているよ」という台詞が頻繁に出てくる。
 僕の体験から言っても確かに親子の間では割合良く使われる言葉で、我が兄より若い叔父が使っているのを聞いた。僕も思春期の頃にはよく使った記憶がある。
 本作ではそれが友人同士でも使われていて、それが二人の気の置けない関係を雄弁に物語っていて寧ろ感動的なのであるが、この文言を重大場面で使う心理的背景は自分に照らしてみれば、自分で重々承知していることを他人(ひと)から言われると余計にやりきれなくなり、つい反抗的な態度を取ってしまう、ということになろうかと思う。親しければ親しいほど反発して自分の本心を誤魔化したくなるのである。

本作の子供たちは序盤のうちは醒めているように見えつつ、後半になると父親の苦労が良く解っているまともな連中と判明、僕ら世代の男性の胸を打たずにはおかない。息子の友人はまだ親の有難味を解っていない存在として息子の内面を効果的に引きたてる為に置かれている。
 さらに、僕はついこの間まで父の息子でもあり、立派な息子でなかったことを反省することしきりの状態につき、子供の立場からも観てしまう。父は僕のついぞ打ち明けられなかった内心を解って逝ったであろうか。
 主人公は良い友達を近くに持って幸せである。現在群馬に舞い戻った僕には連絡さえすれば葬式に来てくれそうな親友が何人かいるが、大学や勤務地が地元ではなかったので東京だったり石川だったり遠方な人間ばかり。頻繁に行き来できないもどかしさがある。

いずれにしても、本作はそうした家族の不器用な心情交流がコメディ・タッチながらなかなかうまく表現されていて、生活感情を伴う作品になっているが、笑わせ方に若干肌に合わないものを感じる。

因みに舞台は我が地元・群馬であります。あの感じでは高崎か前橋なんだろうねえ。

後悔ばかりだけれど、少なくとも兄よりは気が置けない親子であった自信だけはある。

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『あぜ道のダンディ』
----あれっ。『まほろ駅前多田便利軒』 じゃないの。 ツイッターで、ひとりで盛り上がっていたみたいだけど…。 「いやあ。あれはもう一回、観る予定。 すでに始まっているし、 ここで喋るのはその後に…。 ということで、まだ喋っていない作品をチェックしたら、 これがあ... ...続きを見る
ラムの大通り
2012/08/01 15:24

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
うちのオヤジは放蕩オヤジで、仲よくした記憶はほとんどないですが・・・・それでも親は親なので、ボケて死ぬまで面倒を見ましたけどね・・・・
こういう父親と息子の情はなかったですが、血は濃いものというのは感じておりましたよ。
ねこのひげ
2012/08/02 06:19
ねこのひげさん、こんにちは。

うちの親父は家の事情で尋常小学校を出てすぐに仕事を始め、一人ぼっちになった為19歳で年上の母と見合い結婚(実際には会わず写真だけらしい)、55年間趣味もなく真面目に勤め上げました。
自分が学がない為学校の成績の良い息子が誇らしかった反面馬鹿にされていると思っていたようだと、いうのは兄弟の話。
僕は学をもって馬鹿にしたつもりはないですが、口論となると知識では負けないので、知らずそう感じさせてしまったのなら申し訳ないなと思っているわけです。
でも、男のくせにおしゃべりな二人なので顔を合わせればよく話をしました。それ自体は良かったと思います。その中で傷つけたことがあったのかもしれないと思うと「人生、難しいものだ」と感じますが、仕方がないのでしょう。

血は濃いと言えば、性格の大部分は父譲りですね。
オカピー
2012/08/02 19:37

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