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zoom RSS 映画評「サンザシの樹の下で」

<<   作成日時 : 2012/07/30 11:25   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2010年中国映画 監督チャン・イーモウ
ネタバレあり

チャン・イーモウとしては「初恋のきた道」路線だが、トータルとしては同作に大分及ばない。

時代は文化大革命の最中1970年代初頭、共産主義の原点に戻って田舎に学べという下方運動の為に都会から地方へやって来た高校生のチョウ・ドンユイが、地質調査隊の好青年ショーン・ドウから熱烈なアプローチを受けてプラトニックな愛を育む。共産党幹部の息子である彼は彼女が都会へ帰った後もしばしば出現して色々と買ってあげたりする。二人の密会を知った彼女の母親が自分たちが走資派(反共産主義的、資本主義的ということでしょう)である為娘が教師として学校に残るべく彼に会わないように説得する。
 基本的にその言い付けを守った二人ながら、彼が入院していると聞くに及び誓いを破って会うなどするうち彼が姿を消してしまう。しかも堕胎した友人から男たるものかくありと聞かされた彼女はすっかり彼もその類と信じ込むが、やがて教壇に立つ彼女の許に彼が最期を迎えているという連絡が届く。

日本なら戦前くらいまでの感覚の純愛で、中国ではあっても色々な規制のあった文化大革命時代を背景しているから成り立つ部分が相当にあり、当時としても走資派の娘ということで恋愛や男女関係に絡む情報を母親が隠して来たからこそ彼女はあそこまで初心であったのだろう。あの時代の中国とは言え、あそこまで真面目な青年はさすがにごく稀ではあっただろうが、いない筈もない。

ベテランのイーモウのタッチも素朴にして叙情性たっぷりで、手慣れたものを感じさせる。純愛ものでは「野菊の如き君なりき」を一押しにしている僕ががっくり来てしまったのは、またまた白血病だからである。死別、離別にも色々あろうが、何故に皆さん白血病ばかりを選ぶ。中国よ、お前もか、てなもんである。

原作を意識してのことか、字幕の多用も疑問で、その代わりに映像による行間で描いた方がより強い印象を残したであろうし、ブラックアウトのタイミングも少々ぎこちない。映画として「初恋のきた道」に及ばない所以である。

因みに、本作の立場は文革批判が基調である。中国において現体制や毛沢東への批判は厳禁であるが、四人組や(実際の起案者たる毛主席ではなく)彼らが指導したことになっている文化大革命への一定レベルの風刺にはお咎めがない様子。

主演の新人チョウ・ドンユイは酒井美紀似、ショーン・ドウはデヴュー直後の中井貴一を思い起こさせ、なかなか爽やか。

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『サンザシの樹の下で』
□作品オフィシャルサイト 「サンザシの樹の下で」 □監督 チャン・イーモウ□脚本 イン・リーチュエン□キャスト チョウ・ドンユィ、ショーン・ドウ、シー・メイチュアン、リー・シュエチェン、チェン・タイシェン、スン・ハイイン■鑑賞日 7月9日(土)■劇場 チ... ...続きを見る
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『サンザシの樹の下で』
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
白血病で評価が相当落ちましたね。
別の理由を探して欲しいですな。

ねこのひげ
2012/07/31 05:13
ねこのひげさん、こんにちは。

>白血病
若い人がかかるガンと言えば殆ど白血病という事実があるのでしょうが、別に病死でなくても良いですし、無理に死別である必要もありゃしません。
ある意味、生別のほうが辛いこともあるわけで、まして文化大革命を背景にしていればこそなおさらそんな気がします。
オカピー
2012/07/31 22:17
体中に黒い斑点があらわれるのは被曝症の特徴であると聞いたことがありますし、彼の本当の病因はウランや放射能による被曝だったのではないでしょうか?
地質調査隊という仕事がどうも引っかかります。
もしかしたらこの映画、純愛というオブラートで包まれた反核映画なのかも知れません。
K_G
2012/08/20 12:52
K_Gさん、初めまして。

確かに中国文革以前から核実験を繰り返していますから、十分ありうるお話ですね。
地理的にはウイグルやチベットで行った可能性が高く、本作のような漢民族の村では考えにくいですし、まして青年は幹部の息子ですから設定上は考えにくいですが、そういう観点から本作を観るのは大変興味深く、炯眼と言うべきであります。

>反核映画
オリンピックの演出を任されたチャン・イーモウは「王妃の紋章」で、体制に媚を売るふりをして実は中国の強権主義を批判したと思われるふしがありますので、仰るような可能性も高いと思います。
オカピー
2012/08/20 14:44

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