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zoom RSS 映画評「日輪の遺産」

<<   作成日時 : 2012/07/22 10:56   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・佐々部清
ネタバレあり

浅田次郎の同名小説を、ご贔屓になりかかったままそれ以上進めさせずやきもきさせている佐々部清監督が映画化した戦争秘話(フィクション)である。
 フィクションと言いながらも「日本のいちばん長い日」で見られたように終戦の日に自決する阿南大将(柴俊夫)など実在の人物もチラホラ登場する(自決する場所がお話の都合の良いように変えられている)。

熊谷で奉仕している最中に爆撃に遭って死んだことになっている勤労女学生19名と引率教師1名(ユースケ・サンタマリア)の慰霊碑について、彼女たちと一緒にいたのに運命の差配で生き残った金原久枝(八千草薫)が夫(八名信夫)の死後真相を息子(北見敏之)と孫(麻生久美子)とその婚約者に語り始める。
 すなわち、山下大将が戦闘中に奪ったマッカーサー家の莫大な黄金を詰め込んだ箱を戦後復興に備えて爆弾と思い込ませて少女らに多摩火工廠内部に運ばせ、秘密漏洩を防ぐ為に玉音放送を聞かせた後青酸カリを飲ませるという作戦の推移である。
 作戦を指揮する真柴少佐(堺雅人)は事切れる直前の阿南大将と話し命令解除を引出し、少女たちの命は一度は救われる。が、彼女たちは国を守る爆弾(実は黄金)の前で自ら死を選び、教師も拳銃で後を追う。風呂場の掃除をしていた久枝だけが助かり、彼女の実家にいついた作戦関係者の曹長(中村獅童)と何年か後に結婚する。

マッカーサーに日本経済保護の為に低い為替レートを要求して「ノー」と言われたその場で自らの頭を拳銃で撃つ小泉中尉(福士誠治)を含めこの作戦に関わった三人の軍人は真に国を思い人の命を思う心優しき人たちである。戦争が終った後まで民間人を巻き込むことなどもっての外と思っている。ところが、少女たちは彼ら以上に軍人的で、潔くお国の為に死んでいく。

僕らの感覚では彼女たちが死ぬ理由が厳密には解らない。観ている間は解ったつもりでいたが、今は解ったと断言できない。本作は映画的効果を優先しすぎてその心境について些か省き過ぎたのではないか。いずれにしても、先日観た準SF「わたしを離さないで」同様教育の恐ろしさを感じさせる。

彼女たちの死が悲劇である一方、三人の優しき元軍人(一人は間もなく自死するわけだが)と一人の少女が生き残り強制された沈黙を守り通す辛さたるや想像に余りあり、今更ながら戦争くらい馬鹿らしいものはないと思えてくる。ただ、些か美談すぎるので、当時の少女たちの意識に関してはほぼあの通りであろうが、作者たちが戦争をどう思っているかという点において日本人の中にも抵抗を覚える方がいらっしゃるだろう。僕自身じーんとしきれないものがあった。

とは言え、佐々部清監督が彼らしく実直に展開しているので割合素直に観られる作品になっているとは思う。

昨年亡くなった母(勿論群馬出身)は昭和20年、17歳の時、主人一家が群馬に疎開して空いた東京の奉公先の家を守って東京大空襲に遭遇、辛うじて難を逃れた。これも相当理不尽な話で、本作のヒロインほど劇的ではないが、この類の冒険談を良くしてくれた。父も亡くなり我が家には戦争を知っている人がいなくなった。

母親がこの映画を観たら何と言っただろうか?

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『日輪の遺産』
□作品オフィシャルサイト 「日輪の遺産」□監督 佐々部 清 □脚本 青島 武 □原作 浅田次郎□キャスト 堺 雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草 薫、森迫永依、       土屋太鳳、金児憲史、柴 俊夫、串田和美、山田明郷、野添義弘、麿 ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2012/07/23 12:07
日輪の遺産
ある意味なでしこジャパンの原点 公式サイト。浅田次郎原作、佐々部清監督、堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草薫、森迫永依、麻生久美子、塩谷瞬、八 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/07/23 13:07
『日輪の遺産』
※見どころ、クライマックスにも触れています。原作未読者はご注意。 ...続きを見る
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2012/07/23 19:10

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
マレーの虎と呼ばれた山下奉文大将の秘宝を巡る小説というのはずいぶんありますね。
浅田さんのこの小説もその一つですが・・・・景山民夫さんの『虎口からの脱出』なんて冒険小説の傑作であります。

ねこのひげのオフクロは冷めた目で見ていたようで、この状態では負けるなと思っていたそうです。
じいさんは、屋根の上からB−29が爆弾を落とすのを眺めてあれは呉軍港に落としたなとか観ていたそうです。
ねこのひげ
2012/07/23 06:17
ねこのひげさん、こんにちは。

>山下奉文大将の秘宝を巡る小説
相変わらず、間口が広い!
いやいや、その噂だけは知っておりましたが、小説は一つも知りませなんだ^^;
『虎口からの脱出』なんてタイトルから面白そうですね。
水野晴郎氏の「シベリア超特急」シリーズにはさすがに出て来なかったかな?

母親は焼夷弾のこととか色々話してくれましたが、敗戦について意識していたと明言したことは記憶にないです。
親父は、「終戦の前夜、高崎に爆弾が落とされて明るかった。終戦の前夜にだよ」と呆れたように何度か話すのを聞いたことがあります。
オカピー
2012/07/23 19:00
そうそう、水野さんの山下大将もありましたな〜
先日、友人が夏休みでアラスカに行ったので、シベリアに行けば、水野さんだったのにと笑ったばかりでありました。
ねこのひげ
2012/07/24 06:20
ねこのひげさん、こんにちは。

「シベリア超特急」シリーズ映画版は一応全部観ました。
舞台版もあったとか。
センス不足といいますか、トリュフォーやピーター・ボクダノヴィッチにはなれなかったですね。

>アラスカ
お友達の幅も広いですねえ。
オカピー
2012/07/24 19:34

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