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zoom RSS 映画評「ブンミおじさんの森」

<<   作成日時 : 2012/06/07 09:47   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2010年タイ=イギリス映画 監督アピチャッポン・ウィーラセタクン
ネタバレあり

僕が初めて観たタイ映画は30年くらい前にNHKで放映された「田舎の教師」(1978年)で、悪い作品ではなかったが、余りに素朴で泥臭い表現が目立つ為失笑してしまい、隣で真面目に観ていた姉に怒られた記憶がある。
 21世紀になって幾つかの輸入されたタイ映画は良い意味でも悪い意味でもアメリカナイズされた作品が多く隔世の感を抱くが、今回観るこの作品はカンヌ映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞したことからも解るように欧州人受け(推薦したのはティム・バートンと聞くが)しそうな作品であり、新しいタイプのタイ映画と言って良いのだろう。

死期の近いことを悟った農民ブンミ(タナパット・サイサイマー)が19年前に死んだ妻フエイ(ナッタカーン・アパイウォン)の妹ジェン(ジェンチラー・ポンパス)とその息子トンを都会から招いた夜、妻フエイが幽霊となって現れると共に、大分前に行方不明になった息子ブンソンが猿の精霊となって現れる。やがて彼らはフエイに連れられて森の中に入り、間もなくブンミは息絶える。ジェンは町で大々的に葬儀を行なう。

バートンもダークとは言えファンタジーを作る作家だから魅力を覚えたのだろうが、腹蔵なく言えば、アピチャッポン・ウィーラセタクンという一度では憶えられそうもない名前の監督が何を言おうとしたのかよく解らない。途中で唐突に王族の姫様が現れてなまずと会話するシークエンスが挟まれるのも作劇的にぎこちない印象を強める。この辺りはタイの伝承や王族と国民との関係性を知っていれば印象が変わるに違いない。

日本人より真摯に仏教に帰依している国民が多い(多分)お国柄だから輪廻や転生がモチーフになっていて、その幻想的な大人のメルヘン的展開の中に、ブンミの住む田舎と義妹が住む都会との対照やラオスからの不法移民といった現実問題などをそこはかとなく浮き彫りにしている感じが出ているが、鈍感な僕には感心させられるほど巧みにそれが為されているとも思えず。

葬儀のシークエンスで仏教国だけに日本の慣習と似たところが出て来るのはさすがに興味深い。

映画館で観たら森林浴をしている気分になりそう。本作にもただ身を任せれば良いわけですな。

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ブンミおじさんの森
公式サイト。タイなどの合作映画。英題:UNCLE BOONMEE WHO CAN RECALL HIS PAST LIVES。アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、タナパット・サーイセイマー、ジェンチラー・ポンパス、サックダ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/06/07 10:00
ブンミおじさんの森
タイ東北部の村で一人暮らしのブンミ。肝臓病で余命わずかの彼の元に、ある夜、亡き妻フエイが現れ、更に行方不明だった息子も別の生き物の姿で現れる・・。 ...続きを見る
rambling rose
2012/06/15 14:33

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
今年の審査員の1人が言ってましたが、最近のカンヌでは、大作というより、小品や実験的な映画が選ばれる傾向があるそうです。
ヨーロッパ人も疲れているのかな?

最近、見たいメジャーな映画でも、東京でも一館だけでしかやってなかったりで、困ったものです。
いまにBSだけでしか放映されない映画とか出て来そうですね。
ねこのひげ
2012/06/08 05:42
ねこのひげさん、こんにちは。

戦前から欧州派とアメリカ派に分かれていましたが、それでも映画芸術(間違っても芸術映画ではありません・・・笑)の観点から映画を作るという意味で今ほど大きな差がありませんでしたよね。
芸術なんて言葉を使うと映画は娯楽だという反論が出てくるのですが、僕はいかに面白く映画を作るかという技術こそ映画の芸術性と思っているので、映画において娯楽と芸術は全く矛盾しない概念なのであります^^

しか〜し、そうですなあ(笑)、1980年代頃からカンヌはちょいとおかしくなりまして、高く評価される映画が必ずしも僕の考える良い映画、即ち映画芸術的に優れている作品ではないものが多くなって困りました。

実験大いに結構。しかし、自分だけが解っているのでは観客は困りますよね。僕が映画評で良く使う“一人合点”というやつです。

>メジャーな映画
ある人によりますと、日本人特に大人はシリーズとリメイクしかないハリウッド映画に飽きたそうでありまして、かと言って欧州映画祭での受賞作は大体が難解。これでは一般的な大人の映画ファンは離れて行きますねえ。
実際邦画が優勢で、WOWOWのメガヒット劇場も邦画の方が多いくらい。1990年代は考えられなかった現象ですが、結局TV視聴者を取り込んでいるだけで、映画の質も観客の質も下がる一方。

かくして映画の寡占化が進み、ねこのひげさんの仰るように、メジャー映画でも一館だけとか、そんな現象が起きているのでしょうねえ。

>BSだけ
そのうちハリウッドの超メジャーと日本のTV局絡みの大作以外は自主上映かBSで、そしてそれくらいだったら最初からTV映画として作るなんて時代も来るでしょう。
2005年くらいから僕はそんなことを考えていましたが、段々現実味を帯びてきましたよ。
オカピー
2012/06/08 17:53

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