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zoom RSS 映画評「トスカーナの贋作」

<<   作成日時 : 2012/05/30 13:59   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年フランス=イタリア映画 監督アッバス・キアロスタミ
ネタバレあり

21世紀になる頃から活動拠点を欧州に移したらしいアッバス・キアロスタミの新作はタイトル通り“贋作”をテーマにした一種の実験映画である。

南イタリアはトスカーナ、【本物と贋作】をテーマにしたエッセイ(評論?)が評判を呼んだ英国人作家ウィリアム・シメルが、講演を聴きに来ていたギャラリーの女主人ジュリエット・ビノシュの車に乗って各地名所を案内され、ローマ時代の絵画と長いこと思われていた贋作を飾っている美術館を訪れた後あるレストランに入り、夫婦と誤解されるが、彼が外で電話をしている間ジュリエットは15年連れ添った倦怠期夫婦の妻として老メイドと会話を続ける。

この映画が実験映画たる所以はここからである。

レストランから出た二人は15年付き合った夫婦として現状について意見を交わし、15年前新婚旅行で訪れたホテルに入る。

キアロスタミはレストランに入る前後で(言わばレストランを媒介にして)空間を変え、二人が15年間連れ添った夫婦を演じているのか、或いは初めて出会ったと思われた二人が実は夫婦であったのか、全く判然としない作り方をしているのである。
 つまり、前者であれば後半が人生の贋作であり、後者であれば前半が人生の贋作であるということになる。

その判然としないところが本作の面白味であるのだが、さらにもう一つ、どちらも本当でどちらも虚構であるという考え即ちキアロスタミが映画的に全編遊んで観客を良い意味で弄んでいるという考え方も成り立つ。その考えで行けば、人生なんてものは全て贋作だなんて達観した境地をも感ずることになる。

作品としては欧州的趣味に横溢した一編と言うことが出来る一方、「友だちのうちはどこ?」(1987年)でキアロスタミを知った僕としては些か匠気が勝ちすぎ、イラン時代の素朴な力強さが消えているような気がして寂しさを禁じえないのもまた事実である。長回しにイラン時代の感覚が十分残っているが、「そして人生はつづく」(1992年)の少年と車を捉えたロングショットによる幕切れの長回しに及ぶものは見当たらない。

制限が多過ぎるイランでは碌な映画が撮れないからね。

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トスカーナの贋作
公式サイト。原題:Copie Conforme、英題:Certified copy(認証コピー)。アッバス・キアロスタミ監督、ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル、ジャン=クロード・カリエール、アガット ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/05/30 14:18
トスカーナの贋作/Copie conforme
『桜桃の味』で第50回カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたアッバス・キアロスタミ監督最新作。イタリアのトスカーナ地方を舞台にであった画廊を経営する女性と、イギリス人作家が、ひょんなことから偽りの夫婦を演じる羽目に…。主演は本作で2010年のカンヌ国際映画祭女優賞を獲得したジュリエット・ビノシュとイギリスオペラ界を代表する歌手ウィリアム・シメル。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2012/05/30 20:20

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
アッバス・キアロスタミ監督が日本で日本人俳優とスタッフを使って作った『Like someone in love』が9月に公開されるとか・・・・
カンヌで観た人によると、監督の名前を観ないと、まるで日本映画のようだそうですよ。
小津のフアンだそうですからね。
実験的というか、エンタティーメントな映画ではないので、資金繰りにも苦労をしていたようで、資金集めのためのチケット販売をネットでやっていたので、購入しましたが、これは記念に置いておこうと思います。
9月公開の時にあらためて購入しようと思いますです(*^。^*)

新藤兼人監督が亡くなりましたね。
100歳だから、大往生ということで。
合掌<(_ _)>
ねこのひげ
2012/05/31 04:29
ねこのひげさん、こんにちは。

>小津のファン
「5 five〜小津安二郎に捧げる〜」という映画を作っているくらいですからその通りですが、本作以上に実験的でよく解らない映画でした

>『Like someone in love』
小津のようなローポジションで撮っていたら面白いですが、長回しを駆使する点などは小津より溝口健二に近い印象を受けております。
そのうち観られるかな・・・

>9月公開の時にあらためて購入
おおっ、映画ファンの鑑! 僕も資金にもう少し余裕があったらそうしたいものですが・・・何分家計が苦しいもので。

>新藤兼人監督
報道番組には脚本家としての面も強調して欲しかったですねえ。監督作の4倍くらいは書いているはずですから。
それと反核・反戦だけの人でもなかった。
「安城家の舞踏会」みたいな作品も書いているし、基本は人間探求の人だったと思います。
オカピー
2012/05/31 20:17

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