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zoom RSS 映画評「ペルシャ猫を誰も知らない」

<<   作成日時 : 2012/05/29 09:04   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年イラン映画 監督バフマン・ゴバディ
ネタバレあり

「酔っぱらった馬の時間」でなかなか感心させられたバフマン・ゴバディが、ドラマをドキュメンタリーにこれ以上出来ない程接近させた異色作品である。

まずゴマディご本人と思しき人物の話から始まり映画製作の許可が下りない現実にちょっと触れた後、彼が映画として企画しているネガル(ネガル・シャガギ)とアシュカン(アシュカン・クーシャンネジャード)という若い男女のアングラ・ミュージシャンが海外に脱出しようとして、ブローカーのナデル(ハメッド・ベータード)を通じて色々なタイプのアングラ・ミュージシャンに接しながら悪戦苦闘する様子を描く。

まず、本作自身が本作をテーマに描いているのが(メタフィクション)映画的な面白さで、注目すべき第一である。主役の二人も本当に撮影完了四時間後に渡英しているという。イラン官憲の監視を意識して実際にヒヤヒヤしながら作ったということになる。

注目すべき第二は、見かけの文化水準とは対照的にイスラム原理的な側面が強いイランで、西洋音楽はアングラ的にこっそり演奏されなければならなかったり、女性のソロが認められず三人の合唱でなければならない、といった現実への興味である。音楽と関係ないところでは、犬(ペット)を外に出してはいけないなんて規則もあるらしい。

僕は映画を観るだけでなく西洋音楽を聴くのも好きだから、この映画で紹介される、フォーク・ロック、ハード・ロック(と言うよりヘヴィメタルですな)、ラップ、イスラム伝統音楽の要素が色濃く残ったポピュラー音楽など秀逸にして多彩な音楽が大いに楽しめ、こうした音楽を埋もらせるのは実に勿体ない。特にアシュカンのフォーク・ロックは僕好みで、なかなかのものだ。

実際には音楽に感心している場合ではなく、西洋文化的な視点からとは言え、イラン当局の束縛に対して義憤が生じてくる。

全然違いますが、アシュカンの曲を聴くとドノヴァンなんか思い出しちゃいます。

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ペルシャ猫を誰も知らない
カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を獲得したイランのクルド人監督バフマン・ゴバディが、テヘランを舞台にとあるミュージシャンカップルを中心に描いた青春音楽ドラマだ。その殆どが実在するミュージシャンたちの音楽シーンを撮影するために、監督は当局に無断でゲリラ撮影を敢行したという。楽曲に併せて流れるテヘランの現実は、あまりにもリアルで、既視感のカケラもない。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2012/05/29 13:35
ペルシャ猫を誰も知らない(2009)●NO ONE KNOWS ABOUT PERSIAN CATS
 トゥモロー〜♪明日はあるのかしら? 京都シネマにて鑑賞。 生き難い国ですね。つくづく日本の自由さを実感します。ましてや若い人にとっては本当にお気の毒だと思います。主人公ネガルとアシュカンは、イランの首都テヘランでバンドを組んで活動していましたが、音楽... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2012/05/29 22:24
『ペルシャ猫を誰も知らない』
(英題:No 0ne Knows About Persian Cat) ...続きを見る
ラムの大通り
2012/05/29 22:30
mini review 11530「ペルシャ猫を誰も知らない」★★★★★★★★☆☆
『亀も空を飛ぶ』などのイランのクルド人監督、バフマン・ゴバディが初めて故郷クルドを離れ、大都市テヘランを舞台に描く青春音楽映画。ポップ音楽の規制の厳しいイランで、さまざまな苦労をしながら音楽活動に情熱を傾ける若者たちの日常をゲリラ撮影で切り取る。主演の... ...続きを見る
サーカスな日々
2012/05/31 11:38

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
以前、町山さんが話していたのですが、映画作りを禁止され自宅に軟禁された監督が、自分が作った映画でなければいいんだろうと、友達に撮影させてドキュメンタリーに見せかけて、映画を作ったそうで・・・・・

イスラム圏での映画作りは命がけです。

宗教に束縛されすぎてますな。
ねこのひげ
2012/05/30 04:50
ねこのひげさん、こんにちは。

イランは一時かなり自由な時があり、その時に西洋文化が随分入ってきた為に一見西洋的なところが目立ちますが、30何年か前ホメイニ師の登場で反動的に原理主義的になった為に、他の国以上にアンバランスな感じが強いような気がしますね。
だから、住民が他国以上に自由に対する束縛感を強く持っている国ではないでしょうか。

>命がけ
映画も音楽も、恐らく文学もでしょうね。
中国はその辺りは大分ましになりましたが、文化大革命の時は流行歌も聴けなかったわけですし、映画や舞台はくだらない革命絡みの作品ばかりだったようです。

>宗教
どの宗教も・・・一部の原理主義派/過激派を除いて、時代の進展とともに戒律や文言の解釈を現実的に変えてきたから(キリスト教においては地動説・進化論など、キリスト教を含めて他の宗教では女性の権利など)信者がついてきたのでしょうが、イスラム教は国により多少の差があるとは言え、時代が何百年も止まっていますね。

僕が知る限り1000年前の中近東の科学水準はキリスト教圏を凌駕していたのですが、それがルネサンス辺りから逆転され離される一方になったのは宗教が原因でしょう。特に女性の力を生かしていないのが勿体ないと思います。
オカピー
2012/05/30 22:12
こんにちは。好きな映画でした、というよりイランの現在について音楽と若者と映し出された風景を通じて、貴重なものを教えられたような感じでした。
kimion20002000
URL
2012/05/31 11:42
kimion20002000さん、こんにちは。

【必要は発明の母】ということでこういう一種実験的な作品が生まれたのでしょうが、芸術の為の実験ではないわけですね。

>貴重なもの
僕はイランにこんなモダンな音楽がアングラとは言え、演奏されていることに驚かされました。
オカピー
2012/05/31 20:21

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