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zoom RSS 映画評「ザ・ファイター」

<<   作成日時 : 2012/05/27 11:37   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督デーヴィッド・O・ラッセル
ネタバレあり

小学校時代にプロレスを卒業した僕もボクシングは大学時代まで観ていたが、連覇できるような強い選手が一時いなくなった時に興味を失った。勤め人になって大分経って1991年に契約したWOWOWは当初からボクシングを放映しているが殆ど観ていない。詳しい人によればWOWOWで本作の主人公たるボクサー、ミッキー・ウォードの試合も観られたようである。

監督は哲学コメディ「ハッカビーズ」(2004年)でご挨拶に困らせてくれたデーヴィッド・O・ラッセルだが、今回はリアリズム基調で、最近の伝記ドラマとしてはかなり一般的に仕立てている。

スペイン映画「ベルエポック」が出てくるところを見ると舞台背景は1992年辺りのマサチューセッツ州ローウェル、ウェルター級ボクサーとして見どころのある青年ミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、マネージャーを気取っている母アリス(メリッサ・レオ)と有名ボクサー、シュガー・レイ・レナードを一度ダウンさせたことだけが唯一の誇りとなっている麻薬中毒の異父兄ディッキー・エクランド(クリスチャン・ベイル)から色々と指図を受けることで、寧ろその将来を潰されかけようとしている。
 その顕著な例が体重が9kgも違うボクサーとの対戦で、プロボクシングで二階級ほど違うボクサーとの戦いが出来るか甚だ疑問を抱いたが、ほぼ実話ということなので実際に有ったのでしょう。

そんな折知り合ったのが酒場で働く大学中退の美人シャーリーン(エイミー・アダムズ)で、母と兄が恋人となったミッキーの将来にならないと思い、同様の考えの父ジョージ・ウォード(ジャック・マッギー)とタッグを組んで二人から引き離し別のプロモーターやコーチの下で試合をさせると連戦連勝、遂に世界戦に臨むところで暴力沙汰で服役していたディッキーが出所した為家族間で再びゴタゴタが起きた後、いよいよ本番の日を迎えることになる。

本作の紹介を読むと、“アイルランド系”という書かずもがなの形容詞が付いているのだが、それには理由があり、ジョン・フォードの映画を持ち出すまでもなくアイルランド人の家族愛はイタリア人と同じように強いものと知られ、主人公が何故かくも邪魔をする母や兄たちに愛着を持つのかという背景として書かれているわけである。だから映画の中で一々家族愛について説明しないので、そういうものとして理解しろということであります。

さて、映画は兄ディッキーをテーマにしたドキュメンタリーの撮影風景から始まる。本人は下町ローウェルの英雄としての姿を捉えてくれるものと思っているが、企画者の狙いは麻薬中毒の怖さをテーマにしている、ということが後で判って来る。
 この始まり方が最近流行りのセミ・ドキュメンタリー狙いかと思えて余り良い感じを持たないし、ミッキーのサクセス・ストーリーを描くものとしては違和感を最後まで禁じえなかった。しかし、本作は主人公の成功の裏に揺曳する家族特に兄との関係が実に重要な要素であり、邪魔者でもあり助っ人でもある兄を弟ミッキーの浮沈によりテーマ上の主人公として描出しようとしたのだと考えれば必然的な構成であると理解できるのである。

ただ、僕には作者たちが兄を描く為に意図的に成功者になった弟を主人公にした物語を作ったと断言できるほどきちんとバランスを取っているとも思えず、そのまま誉めるわけにはいかないというのも実際の印象。そう思わせるにはやはり描写のバランスと登場人物に対する視点を多少いじる必要があると思う。とは言え、実感を伴うボクシングものとしてなかなか強い印象をしていることは素直に認めなければならない。

アカデミー助演男女優賞を受賞したベイルとメリッサを中心に演技陣は充実。

この後ジョン・フォードの「静かなる男」(1952年)を観てアイルランド人を研究しよう。主人公はアメリカから帰国するボクサーだった。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
ザ・ファイター/The Fighter
実在したアイルランド系ボクサー、ミッキー・ウォードの半生を描いたスポーツ伝記ドラマだ。主演に『ディパーテッド』のマーク・ウォールバーグ。共演のクリスチャン・ベイルとメリッサ・レオは今年のアカデミー賞助演男女優賞を受賞し、全体でも6部門にノミネートされた作品だ。監督は『スリー・キングス』のデヴィッド・O・ラッセル。典型的なボクシングドラマだが、その展開が心地良い。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2012/05/27 11:42
ザ・ファイター
頂点へ。 原題 THE FIGHTER 製作年度 2010年 製作国・地域 アメリカ 上映時間 116分 脚本 スコット・シルヴァー/ポール・タマシー/エリック・ジョンソン 監督 デヴィッド・O・ラッセル 音楽 マイケル・ブルック 出演 マーク・ウォールバーグ/クリスチャン・ベイ... ...続きを見る
to Heart
2012/05/27 12:07
ザ・ファイター/マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル
アカデミー賞でも注目の作品となり結果クリスチャン・ベイルが助演男優賞、メリッサ・レオが助演女優賞を受賞しましたね。実は全くノーマークと言いますかそんなスゴイ作品だった ... ...続きを見る
カノンな日々
2012/05/27 15:31
どこかでファイター
「SOMEWHERE」 「ザ・ファイター」  ...続きを見る
Akira's VOICE
2012/05/27 17:33
『ザ・ファイター』(アカデミー賞特集第一夜)
(英題:The Fighter) ...続きを見る
ラムの大通り
2012/05/27 19:46
このクリスチャン・ベイルを観よ!!〜『ザ・ファイター』
 THE FIGHTER  1993年、マサチューセッツ州ローウェル。父親の違う兄弟、ディッキー・エ クランド(クリスチャン・ベイル)とミッキー・ウォード(マーク・ウォールバーグ) は、ボクシングとい... ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2012/05/27 20:44
ザ・ファイター
凄いわあ〜!何が、、、?クリスチャン・ベールです。この作品のためでしょうね。かなり減量したその顔は凄く目が奥に引っ込んでいました。昔観た「マシニスト」で眠れない男を演じた時と同じです。正直ちょっと気持ち悪いし怖い。 今回はドラッグ中毒者の元プロボクサ... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2012/05/28 19:32
ザ・ファイター
実在のプロボクサー、ミッキー・ウォードをモデルにリング上での熱き戦いや、家族との葛藤、絆を描くヒューマンドラマ。監督は「ハッカビーズ」のデヴィッド・O・ラッセル。出演は ... ...続きを見る
パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
2012/06/06 22:07
「ザ・ファイター」
この映画、興味なくて忘れてたけど…エイミーちゃんが出てたんだっ! ...続きを見る
或る日の出来事
2012/12/14 09:00

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ねこのひげは、ユーリー・アルバチャコフが好きでしたね。
現在はロシアに戻って後進の指導にあたっているそうですが・・・・
目にも止まらないパンチで相手をKOしてのけるシーンには驚かされました。
どうも、最近のTBSがらみの胡散臭い試合はダメです。
観ません。
プロレスも、馬場、猪木で終わったかんじですね。
ねこのひげ
2012/05/28 05:50
ねこのひげさん、こんにちは。

>ユーリー・アルバチャコフ
もう観ていない時代だけはニュースで知ってはおりました。

>TBSがらみの胡散臭い試合
話題性ばかりでつまらんです。何があっても観ません。

>プロレス
僕もあの時代までです。
オカピー
2012/05/28 19:35
友達と見ました。

今回は厳しいコメントに なります。

問題児な母親と兄貴でしたね。母親を演じたメリッサ・レオがアカデミー賞の助演女優賞と兄貴を演じたクリスチャン・ベールが助演男優賞を受賞した演技力は さすが!

・・・が、ウォルバーグ演じるミッキーに関わりすぎたために重荷にさせてだいぶチャンスを潰したのは まぎれもない事実。急遽代役の相手選手は体重差がありすぎな無茶な対戦を組ませたり  特に兄貴は 薬や暴力沙汰で 足をひっぱりまくって・・・・

 ミッキーは家族に甘過ぎですよ!それが元で前の奥さんと別れて娘との親権も無いんでしょうし、トレーナーや恋人のシャーリーンにも散々迷惑かけて・・・・

 親父さんが連れてきてくれたプロモーターからチャンスをもらったが "厄介者はお断り"が条件。あたりまえですよね・・・・それを快く思わない母親は親父さんに当り散らしたり恋人のシャーリーンを罵倒して気分が悪かったです。

 "家族は家族、 ボクシング・ビジネスはボクシング・ビジネス"の区分けはしないと・・・・

 ボクの小さいときの知り合いのレストランのご主人とその息子さんもそうでしたが 息子さんが後を継ぎたいと言った時 父親であるご主人は・・・

 "よそで メシ食ってこい"と言ったそうです。身内がそばにいては しがらみや甘えが出て 腕を磨くのに妨げになるから よそで修業して一人前になってこいって事です。

 母親と兄貴は そう言うべき立場なんです!
zebra
2012/09/12 21:33
zebraさん、こんにちは。

いやあ、僕もあんな兄貴と母親を持ったら嫌だなあ。
余り没交渉なのも問題ですけど、家族は家族、ビジネスはビジネスというお考えには全く同意であります。

ただ、この映画の本当の主人公は出番は少ないけど兄貴なんじゃないかな、と僕には思えたんですよね。
映画の作りが曖昧でその辺を上手く扱えていず、実際作者がどういう心づもりだったのか判然としませんが。
オカピー
2012/09/13 19:54

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