プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「水曜日のエミリア」

<<   作成日時 : 2012/05/13 10:22   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 5 / コメント 2

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ドン・ルース
ネタバレあり

僕らくらいの年になると当り前の人生を描いたドラマの方が面白く観られる。本作などは正に典型で、登場人物の心の変遷を描く作品を見てヒロインの性格がどうのこうの言うようでは映画経験も人生経験も浅いのを自ら露呈しているようなものだ。
 心の変遷を描いた作品が全て心に沁みるなんて馬鹿な事を僕も言うつもりはない。本作がなかなか上手く出来ているということである。

新米女性弁護士ナタリー・ポートマンが上司のスコット・コーエンを優秀な婦人科医師の妻リサ・クドローから奪い、再婚後水曜日に限り前妻の息子チャーリー・ターハン君を迎えるのだが、この少年は母親の教育もあって彼女に対して意地悪な面もある一方子供らしい無邪気さを発揮する場面もある。いずれにしても若い後妻の彼女にしてはうんざりさせられる少年ながら、彼がそういう態度を取るにも理由がないわけではない。

ということでいよいよ映画はその核心に迫っていくという構成で、彼女は生後三日で子供を失ったショックから未だに立ち直れていず、尽く周囲の人々に意図せず尖った態度を取ってしてしまう。これが全てをぎくしゃくさせる原因なのだが、そのショックにも理由があり、自分が乳児を不注意で窒息死させてしまったと思い込んでいる彼女は、遂には自らコーエンから離れる決心をする。
 が、母より自由に振舞わせてくれるナタリーが本当はお気に入りの少年は母親に乳児死亡の本当の理由を突き止めるように頼み、真実が明らかになる。かくして彼女は救われ、真に再生していく。

現象が先にあり、その背景が説明されていくというのは最近の作品では全く珍しくなく、お話も新味がある部類とは言えないものの、人物の配置よろしく、エピソードの積み重ねは丁寧で、台詞も良く練られている。

本作が映画的になかなか巧いということもあるが、昨年の母の死を自分の責任と思っている僕には彼女の心境が誠に身に沁みる。
 僕も「死なせようと思って死なせたのではない」と言われながら、母が遠慮して早めに「病院へ連れて行ってくれ」と頼まなかった理由が僕の実家に戻って来てからの言動にあることに思い至り、心境的に必ずしも去年より良くなっているとは言えないのである。

私事はともかく、何気ない少年との会話で終わる幕切れの味わいもよろしく、IMDbの6.3という平均点は余りにも低い。僕は7点だが、この出来映えなら平均点が7点台中以上でも不思議ではなく、ホラー、SF、カンフー・アクションといったジャンルには大した出来映えでなくても(恐らく見た目で)高得点を与える最近の(若い?)アメリカ人の感性を疑いたくなる。映画は本来人間を見せるものであることを忘れているのだ。

“孤独を抱えて生きて行くのは人にとって祝福でもある” by アスナ〜「星を追う子ども」

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
水曜日のエミリア
女性弁護士vs.女医 公式サイト。原題:The Other Woman。原作の原題は“LOVE AND OTHER IMPOSSIBLE PURSUITS”。ドン・ルース監督、ナタリー・ポートマン、リサ・クドロー、スコット・コーエン、チャ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/05/13 10:56
水曜日のエミリア/ナタリー・ポートマン
ナタリー・ポートマン主演作品の公開が続きますが、これはうっかりノーマークでした。予告編もポスターもチラシもどこかで見た覚えがないような?不倫相手を略奪してまで結婚した ... ...続きを見る
カノンな日々
2012/05/13 16:35
水曜日のエミリア
愛する男性と結婚しながらも、打ち解けてくれない夫の連れ子、口うるさい女医の前妻などとの人間関係に悩む新人女性弁護士の姿を通して、愛と幸福について問いかける人間ドラマ。 ... ...続きを見る
パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
2012/05/13 17:42
水曜日のエミリア/Love and Other Impossible Pursuits
『ブラック・スワン』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンが製作総指揮と主演を務めたヒューマンドラマだ。不倫相手と略奪婚をした主人公が自らの娘の死から立ち上がろうともがく姿を描いている。共演にはテレビドラマでの活躍が多いスコット・コーエン、『きみがくれた未来』のチャーリー・ターハンが出演。監督は『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』のドン・ルース。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2012/05/13 22:16
「水曜日のエミリア」
ナタリー・ポートマン(ナタポー)主演作。 ...続きを見る
或る日の出来事
2012/12/11 09:27

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ねこのひげも、涙ものはご法度です。
樹木希林さんの『わが母の記』なんて、劇場で見ることはできません。
号泣しそうで。
テレビでのちょっとした場面でも涙が自然と流れ出てしまいます。
この作品も・・・・・
ナタリー・ポートマンの美しさを見るために見たんですが、目の前がかすんでしまいました。
SFやアクションも好きですけどね。
ねこのひげ
2012/05/14 05:00
ねこのひげさん、こんにちは。

右に同じであります。
若い頃はそうでもなかったですが、35を過ぎる辺りから妙に涙もろくなり、昨年からはましてほんのちょっとしたことで涙が出て困ります。

本作は非常に真面目に作られた作品で、泣かせんかなといったけれんがなく、それでいて(それだからこそ)感動を呼びましたね。うん、なかなか良い作品でした。

>SFやアクション
何でも派ですから、こうした所謂ジャンル映画は寧ろ歓迎なんですが、CGの普及で似たようなものが大量生産されている現状には些か食傷気味。
多少特撮技術が稚拙でも「スーパーマン」なんかには興奮したものです。たまに観られるから良かったという心理的背景もありますし、SFX時代は一生懸命作っているなあという感慨も自ずと楽しめる要因になっていたと思います。
カンフー映画も個人的には好きなんですが、映画としての評価は別で、アクションがそれなりに見ていられるレベルだとすぐ高得点・・・こういうのは疑問なのであります^^
彼らは、逆に傾向を分析する面白さを生んでくれていますが(笑)。
オカピー
2012/05/14 11:52

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「水曜日のエミリア」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる