プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「桜田門外ノ変」

<<   作成日時 : 2012/04/08 09:07   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 9 / コメント 10

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・佐藤純彌
ネタバレあり

吉村昭の同名歴史小説をベテラン佐藤純彌が映像化した時代劇。

本作の軸はタイトル通り安政7(1860)年の桜田門外の変で、概略の概略くらいしか知らない僕が本作で知ったおおまかな流れは下記の通り。

お世継ぎ問題で紀州を推す一派(南紀派)に属する大老・井伊直弼(伊武雅刀)は、(徳川)慶喜を推す水戸藩主・徳川斉昭(北大路欣也)を頂点とする一橋派を排斥、開国を巡っても尊王攘夷派である彼等と対立、その言動を封鎖する。朝廷が幕府を無視して水戸藩に密勅を送ったことに激怒した井伊は関係したとされるグループを処罰し始める。所謂安政の大獄である。
 これに我慢ならぬと立ち上がったのが水戸藩有志十七名で、井伊の暗殺は成功するが、その後一緒にクーデターを起こすはずだった薩摩藩が藩主の交代により作戦から抜けて戦力が整わなかった為井伊を暗殺した十七名は幕府や藩により反逆者として追われることになり、最後に生き残った関鉄之助(大沢たかお)も暗殺の二年後遂に斬首となる。

佐藤監督の描出感覚は悪くないと思うものの、多くの方が指摘されるように時系列をシャッフルした手法が、桜田門外の変が起こった背景をよく知らない一般観客にとって大いにマイナスになったと思われる。よく解らないまま序盤のうちに事件が勃発した後過去に戻って彼らの立場が少しずつ明らかになって行くのでは、少なくとも日本史に疎い僕のような観客は前半ぽかんと眺めているしかないのである。

回想形式(回想はしなくても便宜上こう言う)も効果的になる場合とならない場合があるが、本作は典型的な後者と言わざるを得ず、観客の感情が盛り上がったところで暗殺というクライマックスを迎えるという構成にした方が大衆映画として上出来な映画となっただろう。佐藤監督はそういうタイプの作品になるのを嫌ったらしい。しかるに、監督が常に正しいわけではないと言うのも観客の勇気である。

関という一人の(ほぼ)無名藩士を主人公にし、他の無名藩士の処罰を一々語る手法は、2・26事件を映画化した「叛乱」(1954年)と似ていて、恐らく桜田門外の変ではなく、一人一人が国家を思って行動したという作者の考えを前面に押し出したかったのだろう。さらにドキュメント性を帯びる効果もあるが、実際には事件の全体像が曖昧になる為功罪相半ばといったところ。

僕の生誕の凡そ100年前の出来事。大昔のようでも、僕が生まれて既に半世紀以上経っている。それを考えると、そんなに昔のことではないなあ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(9件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
桜田門外ノ変
茨城県の市民団体が企画を立ち上げて映画化が実現した時代劇。吉村昭の同名小説をベースに、幕末動乱の幕開けとなった「桜田門外ノ変」の現場指揮官・関鉄之介を主人公に、事件からその顛末までを描いている。主演は『GOEMON』の大沢たかお。共演に長谷川京子、北大路欣也、柄本明、生瀬勝久、西村雅彦など層々たる俳優が揃う。監督は『男たちの大和/YAMATO』の佐藤純彌。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2012/04/08 09:19
桜田門外ノ変/大沢たかお、長谷川京子
時代が大きくうねり変わろうとしていた幕末において歴史的かつ象徴的な大事件とされる「桜田門外ノ変」。吉村昭さんの同名小説を原作に徳川幕府の大老・井伊直弼を討った水戸藩士 ... ...続きを見る
カノンな日々
2012/04/08 09:43
桜田門外ノ変
ドラマへの求心力が弱い。。   ...続きを見る
Akira's VOICE
2012/04/08 11:02
桜田門外ノ変
大沢たかおの格好悪い桜田烈士ぶり 公式サイト。吉村昭原作、佐藤純彌監督、大沢たかお、北大路欣也、池内博之、長谷川京子、柄本明、生瀬勝久、西村雅彦、伊武雅刀、渡辺裕之、 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/04/08 11:35
『桜田門外ノ変』 ('10初鑑賞132・劇場)
☆☆★−− (10段階評価で 5) 10月16日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター4にて 16:35の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2012/04/08 13:54
『桜田門外ノ変』
----またまた、ずいぶん間があいちゃったね。 久しぶりに、何喋ってくれるのかと思ったら、 またまた時代劇…。 「いやあ。ほんと今年は多いね。 時代がこうも不況だと、 過去にヒントを求めたくなるのかな」 ----えっ。そう言う映画ニャの? 「それはそうだと思うよ。 こ... ...続きを見る
ラムの大通り
2012/04/08 22:34
桜田門外ノ変
吉村昭の同名小説を原作にした、日本史上、超有名な大老井伊直弼暗殺事件を描いた作品。監督は佐藤純彌、キャストは大沢たかお、長谷川京子、柄本明、生瀬勝久、西村雅彦、伊武雅刀、北大路欣也他。 ...続きを見る
Yuhiの読書日記+α
2012/04/08 23:15
『桜田門外ノ変』
□作品オフィシャルサイト 「桜田門外ノ変」□監督・脚本 佐藤純彌 □脚本 江良至□原作 吉村昭 □キャスト 大沢たかお、北大路欣也、伊武雅刀、渡辺裕之、渡部豪太、本田博太郎、池内博之、長谷川京子、加藤清史郎■鑑賞日 10月17日(日)■劇場 109CINE... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2012/04/09 08:13
桜田門外ノ変
開国か、攘夷か!そこには誇りを懸けた男たちの志があった。1860年3月24日、江戸城桜田門外で水戸藩の浪士らが大老・井伊直弼の行列を襲撃して暗殺したという、歴史的大事件「桜田門 ... ...続きを見る
パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
2012/04/20 10:31

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
プロフェッサー、こんにちは。

本作は、いきなり暗殺場面だったので私もおどろきました。
仰る通り、時系列をシャッフルせず、暗殺という山場をクライマックスに持ってきた方がよかったと想います。原作がありますが、タイトルから受ける印象がどうしても・・・、勝手なイメージですが拍子抜けした感が私はありました。
描きたい部分とこちらの観たいというか、想像した内容との違いですかね。
勝手に忠臣蔵のようなイメージでみてしまったので。
イエローストーン
2012/04/08 12:01
イエローストーンさん、こんにちは。

>勝手に忠臣蔵のようなイメージ
はい、作者と観客の間に完全な齟齬感が生まれた典型的な作品と思います。
幕末史に精通している人なら、彼らの生き方をつぶさに見る余裕があるでしょうが、中学の日本史程度の知識しかない一般観客にはダメでしょう。
客が入らなくても良いという前提で作ったのならこれでも良いのでしょうがねえ。しかし、そんなことはないでしょうから、設計ではなく狙い自体のミスですね。
オカピー
2012/04/08 19:29
歴史を少しでも齧った人間には有名な話ですけどね。
中学でいちおう習ってますけどね。
NHKの大河ドラマにもなっているし、なんども映画化されているので、工夫しようとしたのかな?
それが失敗したのか?
独りよがりな作品になった・・・・・・かな?
ねこのひげ
2012/04/09 06:31
再度すみません。

「ねこのひげ」さんのコメントを拝見して、一言。

私も日本史専攻で、事件は当然知っておりますが、忠臣蔵のようなイメージというのは、暗殺が山場で、その後の結末も描くにしても、その暗殺に至るまでを描く作品だと想ったということです。
おそらくプロフェッサーも同様かと・・・・。

イエローストーン
2012/04/09 17:39
ねこのひげさん、こんにちは。

事件自体は有名ですから、仰るように新味狙いか、或いは、ヒッチコックが「めまい」で途中で真相を明かすことによりミステリー(事件)ではなくサスペンス(人間ドラマ)として見せようとした発想に近いものがあるかもしれませんが、やはり時代劇を観ようとやって来る観客が本作に求めるものはもっとオーソドックスな興奮とそれによるカタルシスだと思うんですよねえ。

そもそも佐藤監督は回想形式好きな方で、「新幹線大爆破」などでは上手く行っていると思いますが、歴史に通暁している以外の方には本作の作り方はあかんと思います(笑)。
オカピー
2012/04/09 20:35
イエローストーンさん、こんにちは。

いやいや、ご心配なく。
最初の二行は構成上のレトリックで、ねこのひげさんはイエローストーンさんや僕の述べている真意は十分解っていると思いますよ^^

いずれにしても、フォロー「かたじけない」です(笑)。
オカピー
2012/04/09 20:41
ちょっと、誤解させるコメントの書き方をしたか・・・・?
としたら、ごめんなさいでありますが、<(_ _)>
回想形式を持ってきたのは間違いであるというのは同意であります。
後の方でけっこう好きなシーンがあるので、もったいないことです。
撮影のおこなわれたぼうそうの村も水戸の偕楽園も行ったことがあるので、そのあたりはおもしろく見ました。
ねこのひげ
2012/04/10 07:27
ねこのひげさん、こんにちは。

ねこのひげさんとの付き合いも長くなり、文章の構成というかレトリックが解る僕には何の問題もありませんが、初めて読まれる方には皮肉っぽく感じられる可能性があったかもですね。
僕も何気ない一言で随分失敗したことがあります。一般的なメールでもこの手の誤解は少なからずありますね。僕ではありませんが、僕が互いに知っている二人がそれで絶交してしまいましたもの。僕は二人とも未だに付き合っていますが、相手の話はしないことにしています(ちょっと疲れます)。

>水戸の偕楽園
水戸と言えば、大学時代音楽の趣味があって親しかった友人が出身でしたが、彼は今なにをしているのかな。ダイヤモンド社に入社したんですが。
死ぬまでにお金が残っていたら一度は行きたいです^^
オカピー
2012/04/10 11:39
私の取り越し苦労だったようですね。
失礼しました。
イエローストーン
URL
2012/04/22 12:31
イエローストーンさん、こんにちは。

いや、全く問題ないです^^
わざわざ有難うございました。
オカピー
2012/04/22 13:30

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「桜田門外ノ変」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる