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zoom RSS 映画評「真実一路」

<<   作成日時 : 2012/04/06 08:46   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
1954年日本映画 監督・川島雄三
ネタバレあり

「路傍の石」「女の一生」「真実一路」等山本有三の名作群は全て中学生の時に読んだものの、殆ど憶えていない。川島雄三が松竹時代に映像化した本作(の幕切れ)を観て何となく思い出した箇所がある程度である。NHK−BSの録画による鑑賞だが、録画した直後本年2月16日に主役の淡島千景が亡くなり追悼の為再放映もされた。
 WOWOWが食に関するドキュメンタリーばかりを放映しているので気分転換にブルーレイに保存してある作品の中から限られた数少ない未鑑賞作品を探していたら本作に当たったというのが実際ではあるものの、好きな日本女優として高峰秀子の次に挙げなければならない淡島千景を今更ながら追悼することにした次第。

守川義平(山村聡)の十八になる娘・しず子(桂木洋子)が弟・義夫(水村国臣)を連れて婚約の報告の為伯父の家に出かけた時弟には死んだと話してある実母・むつ子(淡島千景)と遭遇する。義夫は姉の「おかあさん」という呼びかけを不審に思うが、喘息で父親が死んだ後彼女が実母であると知らされる。
 19年前しず子を孕んだ未婚のむつ子が周囲の声に押されて世間体の為に愛のない結婚をした相手が義平だったのだが、義夫を生んだ後彼女は自己に正直な生き方をする為に家を出て、最終的に愛することのできる隅田(須賀不二男)という発明家と出会い、カフェを経営しながら過ごして来たのである。
 一度は母親として義夫の許に戻ったむつ子はしず子に責められ再び家を出、蛍光灯の発明に行き詰った愛人を追って死ぬ。

開巻直後の展開から子供を描いたお話かと思いきや、外観的にはサイレント時代の名作「ステラ・ダラス」といった母ものに極めて近い女性映画であり、中味はなかなか解答の出しようのない「嘘と真実ではどちらが人生の真理に近いか」を追究する純文学であった。所謂松竹大船調というオブラートに包まれ難渋な作り方はされていないが、追及しているテーマは難しい。

僕のような凡庸に生きて来た人間に解るのは、完璧な人間はいないこと、完璧な人生を生きることなど所詮は無理である、ということである。
 例えばヒロインにとって自分の種でない娘を可愛がる良く出来た夫が重荷になる。その夫は後に無理な結婚であったと自責の念にかられる。少年にとって実母が生きていた事実を知って幸福であったかどうか。当惑する表情を見ると“親切なおばさん”であったほうが幸福にも見える。結果的に母親が再び出奔し後追い心中をするにつけ不憫である。

が、一番気の毒なのは、見合い結婚も果たせず両親亡き後弟の面倒を見なければならないしず子であろう。しかし、自己犠牲を何とも思わなければ彼女は或いはそれに寧ろ幸福を感じるに違いない。それが家族愛というものである。時代背景は昭和6年、終戦まで14年ある。彼女がそんな思いで育てた義夫が出征し死ぬようなことがあってはならない。戦前に作られた最初の映画化と違って二度目の映画化である本作ではそんなことまで考えさせられる。

二つの骨壷を持って並木道を歩くむつ子の弟(多々良純)としず子を捉えた終幕のショット(4分以上ある)を始め長回しが目立つが、一番上手く行っているのは中盤この二人が夕方に会話をしている2分強のショットである。しかるに、中程で向うの家に明かりが灯り、二人の人物が何か仕事をしているのが見える。これには何か意味があるのか考えたがどうにも解らず個人的にどうも落ち着かない(笑)。
 山村聡の遺影を延々と撮るところなどエキセントリックな感覚が見えてしまうところはマイナスで、川島監督が本領を発揮するのは日活に移ってからと言うべきと思われる。

日活の監督と思い込んでいた中平康が助監督をしているところを見ると、川島監督とほぼ一緒に日活に移動したようだ。

先んずること40年の「結婚しない女」でした。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
家族の哀切というかあの時代の暗さを表現した映画でしょうか。
これも子供のころ、おぼろげにしか覚えてませんがテレビで観た覚えのある1本です。
観たら思い出すものですね。
あのころはよく邦画をテレビで流していて家族全員で観てましたね。
いまは、ひとりひとり、別の番組を見てますけど・・・

星野知子さん。正解です。ビックリしたので、よく覚えてます。
公共の画面で無視するか?とあきれました。
後では、すこし直ったようですが、女優がキャスターというのが気に入らなかったのでしょう。
ねこのひげ
2012/04/07 06:32
松井のことを書くのを忘れていたので・・・・(^^ゞ
中畑監督が、松井に会ったときに「日本に帰って、横浜にはいてよ〜」と言ったら「5年後ですね」と言いやがったよ〜と言ってましたよ。
本人は、大リーグに未練があるようですし、まだ十分通用するから、途中でどこかが使うかもしれませんね。
ねこのひげ
2012/04/07 06:40
ねこのひげさん、こんにちは。

山本有三と言うと小学生高学年から中学生くらいまでに向けて書かれたというイメージがありますが、本作の原作などは戦前において自己の幸福の為に家族を捨てる女性を描いた実に進歩的な小説ですし、しかも哲学的ですね。

>家族全員で
そういう感覚を取り戻そうという意味も込めて、NHKと山田洋次監督はこの企画を始めたのかもしれませんねえ。
今回選ばれた【家族編】50本のうち47本は既に観た作品で殆ど今回は再鑑賞しませんでしたが、全てブルーレイに保存しました^^ゞ
やはり家族を描いた映画を見るのは、辛くなることもある一方で、幸福感を味わえる可能性も高いです。折に触れて見直したいものであります。母を失うことになる昨年4月に始まったというのも何かの啓示だったのでしょうかねえ。

>星野知子さん
やはりそうでしたか。
そんなことがあったとはつゆ知らず。

>松井
横浜スタジアムか東京ドームを本拠地とするなら大分飛ばなくなった今のボールでも40本打てるでしょう。ただ、アメリカ野球になれてしまったので、逆に日本の投手に暫く苦労するでしょうけどね。
「途中で」というのは大リーグなら日常茶飯事的にありますから、どこかのDHが故障したらお呼びがかかる可能性大です。他力本願ですけどね^^;
オカピー
2012/04/07 18:06

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