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zoom RSS 映画評「サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS」

<<   作成日時 : 2012/04/19 09:39   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2000年日本映画 監督・本広克行
ネタバレあり

12年前の製作だから一昔前の作品という扱いになるが、佐藤マコトの同名コミックを今ではすっかりお馴染みになったTV出身の本広克行が映像化したファンタジー。10年くらい前に地上波でTV放映があった時はオリジナル版の出来映えを伺うことができない大幅短縮版(多分40分前後のカット)故に観なかった。

先天性R型脳梁変成症という病気とも言えない架空の病気の持ち主が通称“サトラレ”と呼ばれる。彼らは自分の考えていることを周囲10mから数十mに渡って伝えてしまう一方的テレパシーの能力を持ち、かつIQが180以上という天才ばかり。
 その最後に発見されたのが主人公の臨床医・安藤政信で、少年時代に飛行機事故で両親を失った時にただ一人の生存者としてその能力を発見され、以後町から出されず祖母・八千草薫に育てられているという経緯の持ち主。どうしてそんなことになっているかと言えば、サトラレは能力的に国家的財産であり一方で本人に知られると精神が破綻する可能性などがある為莫大な費用を掛けて国により保護されている、というわけでござる。何と言っても傑作なのは、大学受験を一人でしなければならない場面。確かに彼の秀才を持ってすれば、周囲の人間に答えがばれてしまうのは必定ですな。

興味深い発想と言えないこともないが、いかにもTV局が絡んだ作品らしく前半は非常に軽いコメディー・タッチで進行する。何しろ考えていることが皆に筒抜けで、相当慌てん坊らしかったり女性に初心だったりするところが強調されているのである。

彼は研修中の女医・内山理奈に夢中だが、国家としてはややこしいことになるので警護担当に当たっている精神科医・鈴木京香を使って失恋を演出、さらに無人島で数日過ごさせることにする。ここがどうも中途半端で挨拶に困る感じになっているが、もう一人のサトラレ(松重豊)との遭遇を経て映画のムードを変える役目を負っているらしい。
 問題を起して送られたサトラレのいる島に二人を送る国家の神経(作者の発想)にも首を傾げるしかない。とにかく映画はこの後八千草の薫ばあちゃんに膵臓癌のあることが解り、サトラレ故に主治医や執刀医になれない主人公を巡る周囲の葛藤が中心となって大シリアス・ドラマに転調して、見事なお涙頂戴と相成るのである。

かくして「まるで韓国ロマンスだわい」と苦笑させられることになるが、しかし、実際は泣いた。映画の作り故に泣いたのではなく、「ばあちゃん、ごめん」という台詞が母が亡くなった一年前の今日(4月10日)以来僕が毎日のように言って来た言葉だからである。僕は孫に合せて「ばあちゃん」と言っているわけで孫と息子の違いがあるものの、当方も毎日一緒に過ごしていたのに結局母の症状を自分の都合に合わせて過小評価していたと罪悪感を抱き、この言葉を吐き続けているわけである。これが泣かずにいられようか。
 但し、映画の出来栄えとは関係ない涙ではあるし、表現がオーヴァーで鼻白み、うんざりさせられるところが多い。

祖母との接触など重要な場面で主人公の声が聞こえない箇所が幾つかあるが、本人が何にも考えていないから伝わらないだけなのかそれとも作者に何らかの意図があり音声にしなかったのか曖昧で、この匙加減でどうにでも都合よくお話を進められるので、安易な作劇と言われても仕方がない。考えが他人に伝わるという着想の、映像作品における難しさがそこにある。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
テレパシーの「サトル」というのはよくあるので「サトラレ」という逆パターンで、攻めたのでしょうが、どうにもSF好きなねこのひげでもモヤモヤする内容でした。
コミックも読んでみましたが・・・・ダメでした。
ねこのひげ
2012/04/20 06:05
ねこのひげさん、こんにちは。

この発想は一見面白いですが、ご都合主義になりやすいのが弱点。相手の考えを読むという、ごく一般的なテレパシーのほうが作劇的に無難ではありますね。
オカピー
2012/04/20 09:36
自分は大好きな映画です。
吉野@電気医療
URL
2012/10/04 22:46
吉野@電気医療さん

僕も嫌いではないですが、お話の構図や細部に問題があると思います。
オカピー
2012/10/05 20:16

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