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zoom RSS 映画評「狼よ落日を斬れ」

<<   作成日時 : 2012/04/14 13:56   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1974年松竹 監督・三隅研次
ネタバレあり

珍しくも松竹の時代劇大作だが、それ以上にご贔屓・三隅研次の最後の映画なので観ないわけにはいかない。彼はTVで時代劇を撮り続けたもののそれも翌年まで。54歳で夭逝したのである。思うに、4:3のTV画面では大映の監督の中でも構図意識の強い彼の審美眼を完全に満足する映像は撮れていなかったであろう。

さて、本作は、11年前大映時代に撮った「新撰組始末記」よりずっと本格的な幕末=維新もので、原作は池波正太郎の「その男」。時代劇をほぼ専業としていた三隅監督が劇場用時代劇の時代の終わったのを確認して逝ったような感慨さえ覚えさせる。

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慶応年間、主人公の剣士・杉虎之助(高橋英樹)は御家人の実家を出奔して以来剣術などを教わった幕府の密偵・池本茂兵衛(田村高廣)を父のように仰いでいるが、京都でのさばっていた薩摩の藩士に殺された為復讐の機会を伺いつつ、師の生前の言い付けを守り江戸に戻り隠密の娘でもある礼子(松坂慶子)と夫婦になって静かに暮していたものの、彼女が薩摩藩士三名に殺された為遂に発見した彼らを鮮やかに倒す。

上映時間的には既に三分の二以上過ぎているこの辺りまでが前半という扱いのようで、ここまで切れ味が売りの三隅監督としては些か鈍重な印象を伴うのはやはりちょっとした群像劇のようにもなっているからなのだが、しかし、この復讐の場面には驚きました。首が飛ぶのは時代劇ではたまに観られるものの、体が頭から鼠径部にかけて真っ二つになるのを見るのは初めて、近年の恐怖映画も顔負けでごわす。但し、ロングショットなのでそういうのが苦手な人もそれほど心配に及ばず。

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さて物語の続き、明治6年、床屋になっていた虎之助は西郷隆盛の腹心として出世した中村半次郎後の桐野利明(緒形拳)と旧交を温めるが、やがて彼が師を殺した張本人と知り薩摩で雌伏していた彼を襲撃するが、すぐに血の気が収まる。復讐の空しさを諭した師の言葉を真に理解、即ち、そこには個人ではどうにもならぬ歴史のダイナミズムがあり、どの人間もそこで操られているに過ぎないという境地に達するのである。

その渦に巻き込まれる人物として、主人公の親友となり明治二年柄本武揚の参謀として函館で戦死する幕府の見回り組・伊庭八郎(近藤正臣)や、新鮮組のお馴染み・沖田総司(西郷輝彦)ら実在の人物が登場し、主題即ち主人公の覚えた心境を浮き彫りにする。

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因みに杉虎之助は吉田松陰の幼名だが、勿論別人。

僕の趣味としては、三隅監督には眠狂四郎のようなもっと個人的なお話の方が合っているような気がするが、中盤までやや鈍重と思えた展開も狙いが見えてくると面白く感じられるから不思議。結果的には維新ものでも上等な部類に入るのではないかという印象さえ抱かせる。

大映時代ほど鮮やかさを強く感じさせないものの、左右の人物や物体の配置により縦方向を意識させる構図は何気なく美しい。

今月に入って三本目の幕末絡み。全く偶然なんですが。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こういう映画を観て思うのは、最近の作品に違和感を覚えていたのは、パソコンによる編集作業にあるのでは?と思うんです。
アナログだと自然に溶けるようにフェイドアウトするものが、デジタルだとブッツ!という感覚にとらわれるところがあります。
侍映画も高橋さんあたりで終わりであるな〜と、時代劇映画を作るとしたら、SF仕立てにするしかないのかな〜?と感じたしだいであります。
ねこのひげ
2012/04/15 05:47
ねこのひげさん、こんにちは。

>パソコンによる編集作業
僕もそう思いますね。
最近は大元がデジタルだからパソコンによる編集にとってはうってつけなのでしょうが、デジタルはアナログと違って非連続的・階段的ですから、そういうぶつ切り的な印象を伴うのが寧ろ当然という気さえします。

>高橋さん
60年代は日活アクションでチンピラ役が多かった彼ですが、60年代末の日活の衰退とともに本格的な時代劇俳優になっていくのですねぇ。

>SF仕立て
そうなったら僕は観ないなあ^^;
普通の時代劇があるから、そういう変化球も生きるわけですからね。
新作映画を(WOWOW中心とは言え)常時観るスタイルも後何年続くかというところまで来ています。相当面白いと言えるハリウッド作品は何十本に一本くらいしかありませんから。日本のメジャー作品はTV界に席捲されて程度が低いし、欧州映画も香り高き作品が減ってきましたしねえ。
オカピー
2012/04/15 17:38

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