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zoom RSS 映画評「シリアスマン」

<<   作成日時 : 2012/01/07 17:28   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
ネタバレあり

ジョエルとイーサンのコーエン兄弟の発表する作品は面白いが、日本の観客の中には隔靴掻痒の感を抱く人も少なくないのではないか。僕もその一人である。

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東欧伝説らしいプロローグの後、ジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」Somebody to Loveがかかり、それがユダヤ語の授業中に生徒アーロン・ウルフが聴いているラジオの音と判る、という流れは非常に呼吸が良い。
 「真実が嘘と判った時、楽しみが全て失われた時、誰か愛する人が必要ではないですか?」という有名な歌詞から始まる曲で、これがどうも本作の通奏低音になっているようである。しかもこの音楽が流行っているということは1967年のお話であると洋楽ファンにはピンと来る。

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主人公はこの少年の父親である物理学教授マイケル・スタールバーグで、自分の永久在職の決定と息子の成人儀式の心配をしているある日、奨学金を失う成績を貰った韓国系の学生が密かに賄賂を置いて行ったのが不幸の始まり、真面目な彼は成績はそのままに返そうとするが、その父親から文句を言われるわ、隣の家からは境界線について文句を付けられるわ、妻サリ・リニックからは離婚をして長年の友人と再婚したいと切りだされて家を追い出されるわ、その友人が事故死したらその葬儀代まで持たされ、息子が買ったレコード代金の催促がうるさく、永久在職と息子の儀式が無事終わった後結局賄賂に手を付けて成績を改竄して借金に当てる。これで万々歳かと思ったら医者から不気味な電話がかかって来たところで、エンド・マーク。

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という例によって不条理でアイロニカルなお話で、ユダヤ人コミュニティーを舞台にして自分の民族をこれまでかとばかりに自虐的に扱っているが、同じ自虐ならウッディー・アレンのそれの方が直球的でピンと来る。

この兄弟は進行のリズムが独自でそこに映画的な面白さが生れているわけだが、ユダヤ民族について詳しくないとお話の核の部分までは到底理解できない印象は残る。その代わりラビの立場などユダヤの風俗について勉強になるところもあるので、程々興味深いと言っておきましょう。ラビも60年代の名曲中の名曲「あなただけを」の歌詞にちょっと“思想”を感じたらしい。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コーエン兄弟の作品は好嫌が激しく分かれますよね。
描き方が独特ですから。
カルト的という意味では、オームよりキリスト教やユダヤ教、イスラム教のほうが、よほどか激しいですよね。
2000年間、宗教戦争を続けているようなものですから。
八百万の神々という自然神と生きている日本人には理解しがたい世界です。
ある意味。アホッとちゃうか?ですね。
ねこのひげ
2012/01/08 07:47
ねこのひげさん、こんにちは。

コーエン兄弟では「ファーゴ」が一番お気に入りかな。

キリスト教、ユダヤ教、イスラム教というのは、もともと同じ地帯から始まったもので、旧約聖書はいずれにとっても聖典ですから、一種の近親憎悪ですね。

日本人は、本来別の民族らしい縄文人と弥生人は仲良くなるわ、神仏を一緒に信仰してしまうわ、これまた独自の柔軟な考えを持っている民族だと思います。そのまま進んでくれれば、太平洋戦争もなかっただろうになあ。
オカピー
2012/01/08 22:25

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