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zoom RSS 映画評「瞳の奥の秘密」

<<   作成日時 : 2011/10/10 11:00   >>

ナイス ブログ気持玉 3 / トラックバック 15 / コメント 10

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年アルゼンチン=スペイン映画 監督フアン・ホセ・カンパネラ
ネタバレあり

スペインとの合作とは言え、先月の「アルゼンチンタンゴ」に続いてまたアルゼンチン映画だが、シリーズとリメイクと類似作品でお茶を濁しているハリウッド映画に見習って貰いたいような洒落た作品である。

定年で裁判所を退職したリカルド・ダリンが、25年前に関わった美人教師殺人事件を素材にした一種の恋愛小説を書こうと思い立ち、久しぶりに上司で今は女性検事となっているソレダ・ビジャミルを訪れる。
 1974年若い女性教師が殺される事件が起きる。ダリンらはパーティーの写真でいつも被害者を見ている男ハビエル・コディーノが犯人である可能性が高いと注目する一方、ダリンは悲嘆にくれながらも駅で犯人探しを続ける夫パブロ・ラゴに強い印象を覚える。
 コディーノはソレダの陽動作戦に嵌って自白して逮捕されるが、終身刑で服役中かと思いきや政府の転覆(ペロン大統領の死去、ビデラ将軍のクーデター)による恩赦で釈放されて新政府に都合のよい人間として雇われていることが判明すると同時に、こちらが軍事政権に不都合な人間として命を狙われていることを知り、首都から離れて暮らすことになる。

というのが事実に則り彼が小説に書いてきた内容というわけで、現在と過去の交通整理がきちんとは行なわれずぎこちないところもある(これは小説だから全てが客観的事実ではない、と読むこともできる。すると却って興味は増す)が、お話への興味を失くすほどではない。寧ろ、近年の作品としては上等の部類と言いたいくらい。

やがてお話が現在の一本に絞られ、ダリンは25年ぶりに被害者の夫ラゴを訪れ、“言わぬが花”の秘密を知るが、彼の愛情の深さに感銘したダリンは遂に愛を告白する為にソレダの許に駆けつける。

被害者の夫が妻の為に取った行動に勇気を貰って、主人公が相手に感じ取られながらも秘めていることになっている愛を告白するまでの一種の恋愛ドラマを、愛の要素が沈潜するサスペンスとの内容に絡めながら進行させたのが洒落っ気の所以で、特に、壊れてAが打てないタイプライターで打った"temor"(怖い)に手で"a"を加えると"te amor"(愛している)になる言葉遊びで上手く締めてくれるのがゴキゲン。

フアン・ホセ・カンパネラなる人物は脚本まで共同で書いて、なかなかやります。

そして、またアメリカがリメイクを作る(かも)。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
瞳の奥に恋をして
「食べて,祈って,恋をして」 「瞳の奥の秘密」  ...続きを見る
Akira's VOICE
2011/10/10 11:02
瞳の奥の秘密
第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアルゼンチン映画。25年前の未解決事件をモチーフに小説に書き始めた主人公が、当時に置き忘れた事件の真相に迫ると同時に、とある女性への愛を思い出す。主演はリカルド・ダリン、共演にソレダ・ビジャミル。監督はフアン・ホセ・カンパネラ。意外な事実に直面するラストに驚かされる。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2011/10/10 11:49
情熱の行方〜『瞳の奥の秘密』
 EL SECRETO DE SUS OJOS ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2011/10/10 16:09
瞳の奥の秘密
公式サイト。原題:EL SECRETO DE SUS OJOS、英題:THE SECRET IN THEIR EYES。フアン・ホセ・カンパネラ監督のスペイン・アルゼンチン合作映画。今年の米アカデミー外国映画賞受賞作品。リカルド ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2011/10/10 16:53
瞳の奥の秘密
ブエノスアイレスを震撼させた殺人事件から25年── 未解決の謎を小説にする男に、封印された愛が甦る。 原題 EL SECRETO DE SUS OJOS/THE SECRET IN THEIR EYES 製作年度 2009年 製作国・地域 スペイン/アルゼンチン 上映時間 129分 原作 エドゥアルド・サチェリ 脚本... ...続きを見る
to Heart
2011/10/10 18:09
瞳の奥の秘密/リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル
本国アルゼンチンでは大ヒットを記録し第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。70年代の軍事政権下のアルゼンチン社会を背景に過去の記憶に支配され苦悩する男の姿を描 ... ...続きを見る
カノンな日々
2011/10/10 18:34
「瞳の奥の秘密」
何十年か越しのラブストーリーだったのだね、この話。 ...続きを見る
或る日の出来事
2011/10/10 20:29
『瞳の奥の秘密』
(原題:El secreto de sus ojos) ...続きを見る
ラムの大通り
2011/10/10 22:28
mini review 11520「瞳の奥の秘密」★★★★★★★★☆☆
長年勤めた刑事裁判所を退職した男が、25年前の未解決殺人事件をモチーフに小説を書き出すものの、過去の思い出に支配され苦悩するサスペンス・ドラマ。アルゼンチンを代表する名監督ファン・J・カンパネラが1970年代の祖国の姿を背景に、過去と現在を巧みに交差させ、一... ...続きを見る
サーカスな日々
2011/10/11 02:17
瞳の奥の秘密(2009)
 EL SECRETO DE SUS OJOS 9月25日から、京都でも公開開始されました。数々の賞に輝いた「瞳の奥の秘密」を先日鑑賞して参りました。本国アルゼンチンで封切られた本作は歴史的な大ヒットを記録。34週にわたってロングラン上映されたらしいです。もちろん本国の... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2011/10/11 18:18
「華麗なる詐欺師たち」
海外ドラマチャンネルのAXNミステリーで放映されていた作品。 アルゼンチン映画。 ...続きを見る
寄り道カフェ
2011/11/15 16:53
「瞳の奥の秘密」
EL SECRETO DE SUS OJOS 2009年/スペイン・アルゼンチン/129分/ PG12 監督: フアン・ホセ・カンパネラ 原作: エドゥアルド・サチェリ 脚本: エドゥアルド・サチェリ/フアン・ホセ・カンパネラ 撮影: フェリックス・モンティ 音楽: フェデリコ・フシド 出演: リカルド・ダリン/ソレダ・ビジャミル/パブロ・ラゴ/ハビエル・ゴディーノ/カルラ・ケベド/ギレルモ・フランセーヤ 日本で公開される南米アルゼンチン映画はまだまだ少ないけれど、政... ...続きを見る
寄り道カフェ
2011/11/15 16:54
『瞳の奥の秘密』'09・西・亜
あらすじ刑事裁判所を引退したベンハミンは、忘れ難いある事件を題材に小説を書き始める・・・。感想ブラジル映画は、何本か観た事あるけどアルゼンチンの映画観るの、初めてかもな... ...続きを見る
虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...
2011/11/26 22:18
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虎団Jr. 虎ックバック専用機
2011/11/26 22:18
映画評「シークレット・アイズ」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2015年アメリカ=イギリス=スペイン=南ア合作映画 監督ビリー・レイ ネタバレあり ...続きを見る
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。タイトルなので一応お気づきで無いとなんなので…
『瞳の中の秘密』となっていますが『瞳の奥の秘密』ですよね。
もし何か意味があっての事でしたら大変失礼しました。^^;
KLY
2011/10/10 18:42
KLYさん、こんにちは。

単純な間違いです。
体調不良で、注意力散漫のようです。
ご指摘有難うございました<(_ _)>
オカピー
2011/10/10 20:38
こんにちは。
洒落ていましたねぇ。
映画を見終わったあと、余韻に浸れました。
役者もみんなよかったなぁ。
kimion20002000
URL
2011/10/11 02:20
リメイクとかやめて欲しいですね。
全員が結果を知っている八百長試合を見せられているようで・・・・
映画は、どんなに技術が進んでも、手作り感というものが、大事なような気がします。
『スターウォーズ』など、監督自らが、あっち直しこっち直ししているようですし、『猿の惑星』もまた作られました。
最初の衝撃というか感動が傷つくからやめて欲しいです。(−−〆)
ねこのひげ
2011/10/11 04:49
kimion20002000さん、こんにちは。

体調に触るような映画だと嫌だなあと思いつつ見始めましたが、全くそんなこともなく楽しめました。殺人が絡むのは仕方がないですねえ^^;

アルゼンチンの役者なんて全く知りませんが、良かったですねえ。南米では映画を作っているのはブラジルとアルゼンチンくらいで、特にアルゼンチンはそれほど数は作られていないでしょうに「オフィシャル・ストーリー」とか立派な作品を作りますね。
オカピー
2011/10/11 17:13
ねこのひげさん、こんにちは。

何年か前に僕はある人に「2020年頃には“映画”はなくなっているのでは」と申したことがあるのですが、ハリウッド映画の何割かは僕にはもう“映画”ではなくなっています。
コンピューターで絵を作り、コンピューターで編集では緊張感も薄いです。フィルムで撮り、手作業で編集した時代の、緊張感をもって作られた映画がやはり本物ですよ。
アクションも実際の人間がやっていますから、観客に緊張感が伝わって来る。

最近は美しい風景も実写かどうか考える始末で、実写だったら撮影監督を誉めたいけど、CGが絡んでいるのではないかと素直に誉めることもできない。
CGの技術自体を否定する気はありませんけど、作者がどうも怠慢になっている気がする。
それとは少し違う話ですが、そもそもNGを笑いにすること自体が昔は考えられなかったですね。
恐かったぞ〜、黒澤明は(笑)。

>『スター・ウォーズ』
確か第3作は大きな改変があったようで、今観られるのは僕らがリアルタイムで見たのとは違うようですね。

>『猿の惑星』
僕は最初の一本だけで良いと思っているのにその後4本も作られ、21世紀つまらないリメイクが作られ、また“新作”ですか。
全く芸がないったたありゃしない。
オカピー
2011/10/11 17:25
舞い戻ってきたら、とたんにあちこちお邪魔して住みませんネェ。
マイペースで流してくださいよ〜。
劇場鑑賞して、先日再鑑賞しました。さらにさらに二人の胸の奥の言葉が伝わってくる。主人公の秘めた思い。殺人事件の犯人探しと被害者の夫、そしてアルゼンチンの階級社会。死刑制度。これらを織り込みながら主軸はぶれていない。上手いですよねぇ。この監督の作品で日本未公開の「華麗なる詐欺師たち」を先日CSで観ました。こちらもなかなかに上手い。面白かった。ソダーバーグとジョージ・クルーニーがほれ込んでハリウッド・リメイクしたそうだけど、リメイク版は以前、これもCSで観たことあるけど、ほとんど覚えてないから面白くなかったんでしょう。欧米先進諸国は社会が熟れすぎて鈍感になってきていて、なに作ればいいのかさえ見えないのじゃないかな?
シュエット
2011/11/15 16:50
TBした「華麗なる詐欺師たち」はアルゼンチンの違う監督でした。失礼。
でもつくりが上手い。
主人公の一人はリカルド・ダリン。彼はなかなかに芸達者。
シュエット
2011/11/15 17:00
ゴメンついでに。
先日、台湾に旅行したとき機内で読もうと買った池波正太郎さんのエッセイ集で、最近のテレビドラマはやっつけ仕事が多いことについて書かれたものがありました。
…そんな中でNHKの「事件記者」などはやはり見応えがあると。それは俳優にしても、脚本にしても、演出にしても一つのドラマに(年期>をいれているのと同じことになるからだろう。
演出家の多くはカメラワークとか、前衛的な音響効果とか、そんなものにおぼれてしまって、そんなことにうき身をやつすことが<新しい>のだと思っているようだ……
39年に書かれたというのも驚きで、最近の映画がまさにそうだなぁって思いながら読んでいました。
池波正太郎も映画好き、とりわけフランス映画好き、ジャン・ギャバンが大好きな方だったんですね。
お邪魔しました(ペコリ)
シュエット
2011/11/15 17:17
シュエットさん、改めてこんにちは。

町山智浩氏風に言うと、特にハリウッドは製品しか生めなくなっている。今の人はそれでも満足でも何十年も昔から観ている人はそんな誤魔化しの作品は通じない。

それは池波正太郎さんが仰ることに通じると思います。僕はまだ彼の映画に関する文章をまともに読んだことがないのですが、一部だけ読んでも映画が好きだったことが解りました。カメラワークは観客に効果的に解りやすくためにあるのであって、自分の満足の為にあるのではありませんよ。だから凡庸であって良いわけはありませんが、そこを理解していない作者・評者が多いのでは?
オカピー
2011/11/16 17:00

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