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zoom RSS 映画評「死刑台のエレベーター」(2010年日本版)

<<   作成日時 : 2011/09/16 10:22   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・緒方明
ネタバレあり

最近同じ題名で全く関連性のない作品が多いのでこれもと思ったが、映画史上名高いルイ・マル「死刑台のエレベーター」(1957年)の正真正銘のリメイクである。クレジットでもきちんと謳っている。監督はやや意外な感のある緒方明。

大手複合企業会長・津川雅彦の若い妻・吉瀬美智子は、グループに所属する医師・阿部寛と不倫関係にあり、医師が自分の事務室の一階上にある会長室に忍び込み会長を拳銃自殺に見せかけて射殺、知らん顔をしてビルから出る完全犯罪を計画する。条件を満たすには、5時半に退室する直前の僅か15分で全てを成し遂げる必要がある。が、彼が階上に上る為に使ったロープを回収する為に一旦ビルを出た後戻り、回収してエレベーターで階下に降りようとした時全電源が落とされた為にエレベーターが止まってしまう。

という序盤の基幹は全くオリジナルに同じ。二人の運命の歯車がおかしくなる第一弾である。
 allcinemaの事情通によりますと、一つのレバーで全電源が落ちるビルは今時ないそうである。現実に即するに越したことはないが、あのレバーは全電源を切る行為の象徴であるわけで、恐らくこれは大きな問題ではない。ただ、文明の利器の発達により昔なら成立したお話が成立しないことが多いのは確かである。本作のような映画で重要な携帯電話については、置き忘れ・電池切れ・電波障害などの設定をわざとらしく加えなければならない。
 エレベーターに通報装置がないのが変というのはご尤も。しかるに、僕はこの事実についてよく確認していないものの、あっても通報できないジレンマにあったと思われる。従って、その指摘は無粋ではありませんか。
 それより会長の自殺偽装の方が問題。通常この類の自殺は頭に銃口を向けるものである。

さて、似たようではあるが少々違うのが彼の車を盗むのがただのチンピラではなく暴力的な警官・玉山鉄二と恋人・北川景子ということで、盗む理由をもっと必然的なものにしている(これが実は設定として大失敗なのだが)。一般人が容易に拳銃を持てない日本という事情を加味した設定でもある。その彼女がカメラ好きで阿部の車に残されていたカメラで写真を撮り写真館にフィルムを預けたことから運命が第2弾のいたずらをする。しかし、今時カメラ好きの美容師という設定は強引。

オリジナルの弱点であるロープの扱いは改善されていて、阿部は窓掃除の服装をして日中にピルを上っているのを見られても一応怪しくないことにされている(実際にはこれでも説得力はさほどない)し、オリジナルでは回収前だったのが回収した後にエレベーターが止まる。回収できなかったロープがいつの間にか落ちてしまうオリジナルはいかにも無理をしていた。ただショットの繋ぎがまずく、阿部が道路からロープに眼をやるショットと車で戻ってくるショットの間に玉山を捉える長めのショットを挟んだので初めて観た人には意味が解りにくくなっている。ミステリー的に改善されているところもあるのに、こういう映画文法的に疑問の残る部分が何カ所かあるのが惜しい。

ロープの件など改善されている部分がある反面、オリジナルが簡潔な手法で心理的な圧迫感を生み出していたのに対し、計画を狂わす若者二人を早めに出しすぎ、警察の描写を増やした為理屈っぽくなっているのはオリジナルを堪能したファンとして散文的すぎて大いに物足りない。

サスペンスとしては全く弱いが、設定の非現代性を別にすれば、アンチ・リアリズム派の僕には、ミステリーとしてはまあまあ楽しめる。採点はオリジナルと比較しないのを前提としております。

そう言えば、階下など凄く立派なのに、会長の部屋に通ずる廊下は妙に老化していたねえ。

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