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zoom RSS 映画評「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」

<<   作成日時 : 2011/08/10 10:18   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・錦織良成
ネタバレあり

四か月前に母を突然失った僕はまだ家族を描いた映画を観るのが結構辛い。ドラマであれば家族を描くことが必然的に多く、何でもない場面で涙を流すことも少なくない。
 母が亡くなった四月に計ったように新装したNHK-BSが家族を描いた作品を毎週放映しているのが、僕に意地悪をしているとしか思えない。それはまあ冗談で、勿論家族を描いた作品には刺激ばかり追う作品には求められないものがある。少なくともパニック障害ですぐにびくつく癖が付いてしまった僕の脳を変に刺激することがなく有難い。

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本作はNHKには関係がないが、allcinemaのコメント欄にあった“毒にも薬にもならない”という表現は当らずとも遠からず、といった文字通り家族向けドラマの体裁で、映画ファンに大した感興を起こさせるとも思えないが、例えば「感染列島」など大袈裟で鼻白むだけの邦画の大作よりこちらをお薦めしたいくらい。

リストラを上手く推進したら取締役にすると言われた大手メーカー社員の中井貴一が、母親(奈良岡朋子)の急病で故郷の島根に一時的に戻り、鉄道ファンだった少年時代に集めた切符を見つける。折しもリストラで閉鎖した工場の工場長で同期の親友(遠藤憲一)が交通事故死をし、「やりたいことをやるだけ」という彼の言葉が蘇る。
 かくして彼は大手メーカー取締役の椅子を棒に振って49歳にして島根の一畑電車の運転士になろうと決意する。

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というお話で、これが独身男なら本人次第と言うことになるが、妻(高島礼子)との間に大学3年になる娘(本仮屋ユイカ)もいる彼の立場ではそうたやすくない。映画では彼の決意に真の葛藤は見えず、合格までの道のりもすんなり行きすぎて物足りないが、他にも描きたいことがあったようなので大目に見ましょう。

中年男の夢の実現を描いた本作ではあっても、基底にあるのは家族である。少なくとも、僕の現在の心境故に家族のことばかりが頭に残るのだ。メーカーにいた時の彼が社会人として時に冷徹に成らざるを得ないのも家族を養う為である。仕事人間は概して家族サーヴィスが足りないと妻子から非難されるが、資産家でない限り最大のサーヴィスはきちんとお金を稼ぐことと言いたい。また、自分の夢を実現するのも、半分は子供時代に集めた切符を大事に保管していた母親の為であろう。

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故郷に戻って好きな仕事に就けたことで彼本来の特質らしい人情味が蘇ったようで、地方の鉄道員らしく利用客に最大限の親切を施す。これが彼自身を救うことになる、という展開は定石的ながら大袈裟すぎず悪くない扱い。先日「『通夜の客』より わが愛」で述べたように都会では嘘っぽく見えることも地方では本当らしく映る場合があるのだ。都会の冷たさと地方の温かさの対照をそこはかとなく感じてしまうのも狙いの一つにちがいない。地方が温かいというのは幻想の部分もあるが、群馬生まれで東京で生活もしている僕の経験において比較すれば間違いなく地方は温かい。

監督は初めて観る錦織良成という人だが、実にオーソドックスなタッチ。

僕の場合は、メーカーを辞めて故郷に帰った時に人生が終った気がする。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
RAILWAYS 宍道湖の夕日
公式サイト。錦織良成監督、中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、三浦貴大、奈良岡朋子、甲本雅裕、遠藤憲一、橋爪功、佐野史郎、宮崎美子、笑福亭松之助。公式タイトル「RAILWAYS 49 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2011/08/10 10:41
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』
□作品オフィシャルサイト 「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」□監督・脚本 錦織良成 □脚本 ブラジリィー・アン・山田、小林弘利 □キャスト 中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、三浦貴大、奈良岡朋子、橋爪 功、佐野史郎、宮崎美子、笑福亭松之助■鑑... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2011/08/10 12:04
RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語/中井貴一
もしかしてROBOTの制作だから『ALWAYS 三丁目の夕日』を真似てこの題名になったのでしょうか?何となく気になってwikiediaで調べたら仮題は『BATADEN』だったそうです。監督された錦織良成 ... ...続きを見る
カノンな日々
2011/08/10 18:41
RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語
大人が夢見ても、いいんですね。 上映時間 130分 監督 錦織良成 脚本 錦織良成/ブラジリィー・アン・山田/小林弘利 音楽 吉村龍太 主題歌 松任谷由実『ダンスのように抱き寄せたい』 出演 中井貴一/高島礼子//本仮屋ユイカ/三浦貴大/ 奈良岡朋子/橋爪功/佐野史郎/宮崎... ...続きを見る
to Heart
2011/08/10 20:50
mini review 10505「RAILWAYS」★★★☆☆☆☆☆☆☆
仕事に追われ、家族を省みることのなかった50歳目前の男が、ふと人生を振り返り、幼いころの夢を追い求め始める感動ストーリー。監督は『白い船』などで知られる島根出身の錦織良成。主人公の男を『亡国のイージス』の中井貴一、その妻を「天地人」の高島礼子、娘を『ドロ... ...続きを見る
サーカスな日々
2011/08/11 08:34

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
実は私、中井貴一ファンでございまして。^^
ちょっと意外でしょ?彼のお父上には何にも
ピクリともしなかったんですけどね〜

主人公は結局努力家な上に恵まれており
人間として幸せな生き方を成した方と感心。
よくある仕事か家族かと詰め寄る大仰な
場面も少なく、日本の映画には珍しい
主人公は勿論、妻も娘も大人であり
特に都会でも地方でも生き続けた主人公は
淡々と見せていてその実とても強い人。
ただ単にしっかりしているのではなく
人格的に強い人だなぁ〜と思いました。
全く期待感なく観はじめたのですが
すこぶる心地良く観終わりました。
泣いたりわめいたりしない邦画を
久しぶりに観た気がします。
よい映画でした。
vivajiji
2011/08/10 11:28
vivajijiさん、こんばんは。

トムさんにも申しましたが、こちら午前0時に30度ありまして、異常気象なんてものじゃありません。シンガポールより熱いです。

>中井貴一ファン
全く意外でしたねえ(笑)
会社員役で味を出しますが、時に悪役を演じてもなかなか様になっているように思います。

>人格的に強い人だなぁ
イエス!
現在の僕と大して違わない年齢の主人公ですが、とても真似ができないと頭が下がりました。
僕は自分がここまで弱いと思っていなかったので、今年の自分の振る舞いに自己嫌悪に陥っています。
恥ずかしすぎて詳細はお話できませんが、周囲に迷惑をかけ通しです。
オカピー
2011/08/10 20:42
この路線は、18,9歳ごろ、友人2人と出雲から島根鳥取、岡山と旅行したときに乗ったので、とても懐かしく観ました。
あのころからすでに老朽化した電車と路線で、乗ると、ガタガタギシャッドゴンと縦横左右に揺れて「脱線するんじゃあないか!?」と3人で騒いだのが思い出されます。
映画はひさしぶりに日本映画を観た気分です。
NHKの紀行番組で石田ゆり子さんがイルカに乗るためにパラオにいったのですが、イルカに乗る前、椅子にきちんと座って待っていて「これでもテンションすごく高くなっているんです」「テンション高いんですよ・・・・だからテレビ向きじゃあないといったのに・・・」とボソボソと言ってましたが、芸人のわざとらしい大騒ぎより好感が持てましたね。
本来の日本人の姿を観ているようで・・・

騒々しいのはハリウッドに任せて、日本は静かな映画を作って欲しいですね。

瀬戸内寂聴さん曰く『いきぬく 死ぬまで生き抜くこと』
ねこのひげ
2011/08/11 06:47
こんにちは。
この鉄道は乗ったことがあります。
僕の点数が辛いのは、最近ご当地映画について、その功罪含め、いろいろ考えることがあるからなのでしょう。
kimion20002000
URL
2011/08/11 08:37
ねこのひげさん、こんにちは。

僕の友達に鉄ちゃんがいます。今度彼に一畑鉄道のことを訊いてみましょう。
群馬にも最大二両(三両?)編成の上信電鉄というのがあります。こういう電車は本当に揺れるんですよね^^;

>本来の日本人
石田ゆり子さん、清楚な感じが素敵です。
30年以上も前大学時代にクラスメートが「清楚という言葉が合う人がもういないんじゃない?」なんて話していたことを今思い出しましたが、今だってどっこいいますよねえ。

>瀬戸内寂聴さん
こういう方を見習って頑張って生きないと。
僕が今悩まされている不安など他人から観れば大したことないはずなんですが、なかなか割り切れません。
困ったものです。
オカピー
2011/08/11 11:30
kimion20002000さん、こんにちは。

>ご当地映画
色々そういう映画に当たると、そう思えてくるのも尤もです。
僕は多分ご当地映画というのはそんなに観ていないと思います。それと今の僕の心境がどうも家族に目が行くので、割合フィットしたしたのでしょう。
オカピー
2011/08/11 11:33

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