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zoom RSS 映画評「ずっとあなたを愛してる」

<<   作成日時 : 2011/06/22 10:58   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2008年フランス映画 監督フィリップ・クローデル
ネタバレあり

洋の東西を問わず現代文学には疎いから全く知らなかったが、本作を初監督したフィリップ・クローデルは名の知れたフランスの小説家だそうである。脚本は勿論本人ながら、原作に相当する小説の類はない模様。

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言訳もせずに6歳の息子を殺した罪で服役していた女性クリスティン・スコット・トーマスが15年の刑期を終えて出所、妹エルザ・ジルベルスタインの家に居候することになる。妹には夫セルジュ・アザナヴィシウス、養女二人、口の利けない義父がいて、どうも夫は歓迎していないらしいし、元微生物研究者でパソコンも自由に使える彼女の所謂社会復帰も容易には進まない。
 が、子供たちが親しく接してきたり、認知症になった英国人の母と再会したり、男性とのアヴァンチュールを楽しむなどして一般社会に慣れ始めた頃、難病の子供を憐れんで安楽死させた事実を告げるメモが偶然妹の目に触れ、そのことから彼女の閉ざされた心は開かれていく。

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あたかもミステリーのように彼女が自分の息子を手にかけた理由は終盤になって漸く明らかにされるわけだが、ヒロインの表情を見れば凡そそんなところだろうと察することができるから、それを気にして観る必要はなく、気にしていたら恐らくは本作を正しく評価すること出来ない(実際には、裁判中に法医学的に何らかの証明なりが為されるだろうとは思うが、僕はその辺の専門家ではないので敢えて無視する。いずれにせよ医者が安楽死させても殺人は殺人で、刑が多少短くなる程度だ)。
 本作が目指したのは、どんな理由であろうと息子に手を掛けた女性が目の前に幾重にも重なっているカーテンを様々な人々との接触により一枚ずつ開き、時にはまた閉じ、それを繰り返すうちに遂に明るい外が見えて来る様子を実に丹念に描くことである。彼女自身が告白することができるようになるまでの過程を描くことである。ヒロイン自身が言うように「どんな釈明も口実」であり、厚く連なったカーテンを開けていくのは本人でも他人でもなく、本人と他者との関係性のみなのである。ここに僕は映像でのみ可能な強い表現を感じ、主題ばかり先走った“文学的な”映画とは一線を画す、(やや大袈裟な表現になるが)本当の映画文学と思わせるものがある。

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クリスティンとエルザの二人も出色の好演。

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2009年英国アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作品。また今年のゴールデングローブ賞でも最優秀外国語映画賞にノミネートするとともに、主演のクリスティン・スコット・トーマスはも主演女優賞にノミネートされている。監督はフランスの人気小説家フィリップ・クローデルが初挑戦。とある理由から自分の息子を殺したことで15年の服役を終えた主人公が再生していく様子を描いたヒューマンドラマだ。 ...続きを見る
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ずっとあなたを愛してる◆IL Y A LONGTEMPS QUE JE T\&#039;AIME
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
>それを繰り返すうちに遂に明るい外が見えて
来る様子を実に丹念に描くことである。

その通りですね。
わざわざドラマティックに
あ〜だのこ〜だのほじくり見せず、
丹念に語る手法が好みでした。
演技陣の巧みさももちろんですし。

"喪中"の字がいつしか取れましたね。
天国のお母さまのためにも
いつものプロフェッサーでいて下さい。
vivajiji
URL
2011/06/22 15:08
vivajijiさん、コメント有難うございます。

先日四十九日が名実ともに過ぎた頃に何気なく喪中を取りました。トップページを観ると嫌でも入って来るその字自体にうんざりすることも多いですし。
集中力はまだまだという気がしますけど、以前よりは大分改善しました^^

今はどこの国の映画も馬鹿の一つ憶えのように回想シーンから始まりますが、昔の映画は回想そのものを上手く使った映画が多かったですが、今はゴマカシの為に使っている作品が多いですね。4分の3くらいの映画は普通の時系列にしたら何と言うことのないという感じがします。

>演技陣
素晴らしかったですねえ。
「伯母さんの方が英語なまりが強いね」と養女が言う台詞には笑ってしまいましたが。
オカピー
2011/06/22 18:02

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