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zoom RSS 映画評「さまよう刃」

<<   作成日時 : 2011/02/27 15:08   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・益子昌一
ネタバレあり

映画界・TV界で大人気、東野圭吾のミステリーの映画化。

妻を亡くした後唯一の身内である高校生の娘をレイプの末に殺された建築家・寺尾聰が何とか復讐しようと立ち上がるものの、警察からの情報は乏しい。そんなある日犯人を密告する電話が入って来て、建築家はアパートにこっそり入室し犯行を裏付けるビデオを確認した後、戻って来た犯人の少年一人をゆっくりと刺殺する。
 その際にもう一人の犯人たる少年が長野県菅平の廃業ペンションのどこかに潜伏中と聞き出し、菅平のペンションに泊ってそのペンション探しに奔走、いよいよ発見という段になって同地に警察の手配が回り目的を果たせない。
 しかし、殺人を犯した後も寺尾に同情的に成らざるを得ない刑事・竹之内豊が密かに掴んだ犯人の出現場所日時を寺尾に教え、お話は緊張のピークを迎える。

この物語の少年法をめぐる前提は現実と大分違っている。犯人グループは未成年ではあるが堂々と車を運転しているので18歳若しくは19歳であり、現在の日本にこの映画のように「死刑にならない」絶対的な法的根拠はない。最近では昨年石巻市で二人を殺した犯行当時18歳の少年に死刑判決が下っているし、実際に死刑になった18歳は少なからずいる。まして近年少年に対しても厳罰化が認められ、現実との間に若干齟齬感があるのである。
 物語の土台部分なのでかなり気になるが、テーマ若しくは命題を打ち出す為には多少の映画的嘘があってしかるべし(ただし、社会派として捉えるならもう少し精度が必要になる)。竹之内刑事の人情派ぶりもその中に入れて良いだろうと思う。

映画の作り方としては、犯人の人でなしぶりを明確に示すことで観客が殺人実行者である寺尾に躊躇なく感情移入できる配慮がなされ、その行動により死刑容認国の日本の法律でも裁けない未成年加害者に対する被害者感情を浮き彫りにし、少年法に疑問を呈する。人情派の僕は造作なく素直に義憤にかられてしまう。

ところが、本作の幕切れにはブレがあって、死刑と終身刑の中間を行くことが少年殺人犯罪者には一番過酷な罰であるという印象を与えるのは良しとしたものか? 信念を持って行動していたはずの主人公の立場は首尾一貫せず、妥協的な作劇ではあるまいか? 少なくとも、主人公が銃弾を抜いて現場に臨むより、躊躇して失敗する方が人間らしく却って深みのあるお話になる。

という次第で、作劇的には疑問が残るものの、純粋に映画的な部分に関して言えば、ムードは堂々たる本格派であり、近年の邦画としては上質の部類。採点はやや甘めです。

人権と平等の扱いは難しい。共産主義の失敗を見ればよく解る。

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