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zoom RSS 映画評「手錠のまゝの脱獄」

<<   作成日時 : 2011/01/30 16:47   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 9

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督スタンリー・クレイマー
ネタバレあり

アメリカ南部にまだまだ露骨な人種差別のあった時代に作られた社会派サスペンスの秀作。

囚人護送車が事故を起こし、その隙に白人トニー・カーティスと黒人シドニー・ポワティエが手錠に繋がれたまま逃亡、犬を使って追いかけて来る官憲をいかにまくかサスペンスに次ぐサスペンスで手に汗を握らせる。例えば、激流を渡り、落ち込んだ大きな穴から這い上がり、泥棒に入って捕まえられた白人グループのリンチから逃れる。

次々と繰り出されるサスペンスは作者が主張したいことを表現する為のお膳立てで、手錠で繋がれている為二人で息を合せないと何事も首尾良く行かないというのが面白い。

かくして生れた友情により二人は、夫に逃げられた為カーティスに色目を使って辺鄙な湿原地帯から抜け出そうとする子持ちの主婦カーラ・ウィリアムズの協力で自由になっても、相手を見放すことができなくなる。友情が“見えない手錠”になっているのだ。

行動を共にするうちに憎み合う二人の間に友情が生まれるお話のリファレンスとして定評のある(?)作品だが、二人が白人と黒人であるという設定には勿論人種差別問題への強い意識がある。社会の底辺に生きているという共感が人種間のわだかまりを超えて行くという展開により、逆説的に人種差別を揶揄するのである。
 最近は友情や人種差別を描くのに“友情”や“差別”という言葉で説明する為その途端につまらなくなってしまう作品が多いが、本作は勿論そんな野暮はせず、誠に気分良く見られる。全編を貫く犯人側と官憲側のカットバックの呼吸もなかなか良い。

製作者に留まるに気が収まらず監督もするようになったスタンリー・クレイマーの監督作品群の中で「ニュールンベルク裁判」や「渚にて」と並ぶ名編と言うべし。

“見えない手錠”なら嵌めても良いでしょう。

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
数年前にDVDを買いました。
好きな作品です。
「お熱いのがお好き」や「グレートレース」等
やたらにやけた色男役と思われていたカーティス、
クリスティーネ・カウフマンを略奪するが如くの
さまはコンチクショーと思いましたが(笑)
彼はなかなかの演技派だと本作を観ても納得。
それにしても何としても再見したいのが
彼主演の「絞殺魔」(68年)でございます!
BSあたりでかけてくれませんでしょうかしら。
閑話休題。
先日「地上最大のショウ」を再見しました。
私の中ではトニー・カーティスもご出演とばかり
思っていましたらコーネル・ワイルドでしたね。
「空中ブランコ」と大いに勘違い。(^ ^)
でも似てません?ワイルドとカーティス^^
vivajiji
URL
2011/01/30 17:19
「日曜洋画劇場」が初見の思い出の一作ですねぇ。
再見リストのAランクでもあります。
「ニュールンベルク裁判」も「渚にて」もBSを録画してますが、これはまだですね。

列車に飛び乗ろうとして、一人は乗れたけど、もう一人がどうしても乗れない。二人の手錠は既に取れているのに、列車に乗っていた一人が飛び降りて、結局二人とも捕まってしまう。
そんなラストでしたっけ?

ところで、姐さんに情報を。
ツタヤで「100人の映画通が選んだ本当に面白い映画」という旧作DVDのレンタルをやってるんですが、そこに「絞殺魔」が入っておりますよ。
十瑠
URL
2011/01/30 22:47
プロフェッサー、おはようございます。
十瑠さんの「絞殺魔」情報をいただきましたので
この場所をお借りしてコメントをば。(ぺこり)

十瑠さんへ。
おはようございます。
早速の情報感謝感謝です!(嬉)
近所のツタヤはブッつぶれましたが
ごく最近街のど真ん中に大型ツタヤが誕生。
本日ドヌーヴの新作観る前にぜひ訪ねてみます。
ああ、忙しくなりそうですわ今日も。
これからお風呂も入んなきゃ、ゴミ出しも、
あらら、あんなに雪こんもり積もっちゃって。
プロフェッサー、朝からごめんなさいね
オジャマいたしました〜
(「絞殺魔」どうか借りられていませんように!)^^
vivajiji
URL
2011/01/31 07:49
vivajijiさん、こんばんは。

>DVD
ご購入されましたか!
当方は中学1年の時に放映された時に見逃して、その後10年以上も経ったペーペー社会人の時にやっと観た記憶がありますね。
久しぶりに観ましたが、なかなか面白かった。娯楽的なお話の中に訴えるべきものを訴える。商業映画はこうでなくちゃ。昨今の映画はなっとらん(笑)。

>カーティス
ちゃんとお芝居もできるようでしたね^^
再鑑賞したいと仰る「絞殺魔」でも、
30年くらい前にTVで観ただけではっきりとは覚えていないんですが、
コメディーづいていた中でびっくりの好演だったような。
ご覧になれると良いですね。

>コーネル・ワイルド
ムード的に似ていると思います。
カーティスの方がラテン系というか、濃い感じがします。
しかし、主役でない場合は仰るように混乱するかもしれませんね^^
オカピー
2011/01/31 17:09
十瑠さん、こんばんは。

>「日曜洋画劇場」が初見
多分それが僕が中一の時に見逃した放映でしょう。
こちとらは四半世紀くらい前に始まったばかりのBSで観たような記憶がありますが、どうでしたかな^^;

>列車に飛び乗ろうとして・・・
その通りです。さすがの記憶力ですね。
カーティスが乗れなくてポワティエが飛び降りる。見えない手錠が働いたんです。
その前に、騙されて底なし沼のある地帯を紹介されたポワティエを追ってカーティスが追うという友情話があり、互いの友情が確認されるという仕組みです。
“友情”とか“友達”といった言葉は一言もないから、却ってじーんとしてしまいますね。
“見えない手錠”という言葉すら要らなかったくらい。僕は観ていて“見えない手錠があるんだな”と思いましたもの。
オカピー
2011/01/31 17:21
シドニー・ポワティエの作品は、ホモ・ソーシャル(ホモ・セクシャクルではなく)が主題のものが多いですよね。
そういった意味で「さらば友よ」「ボルサリーノ」「仁義」など、我がドロンの作風と似た題材が多いので、好きですね。ハリー・ベラフォンテと共演した西部劇(題名を忘れてしまいました)も印象に残っています。
基本的にフィルム・ノワールに成りうる作風が多くて、男の規範意識に差別意識が払拭されてしまうというものが多いような気がします。
ところで「絞殺魔」って、トニー・カーティスのサイコものですよね。
分割画面の試行作品だったような記憶です。数十年前にTV放映で観た記憶がありますよ。
では、また。
トム(Tom5k)
URL
2011/02/21 01:20
トムさん、こんばんは。

>ホモ・ソーシャル
「夜の大捜査線」シリーズもそうですかね。

>ハリー・ベラフォンテ
「ブラック・ライダー」みたいですね。映画ファンになりたての頃「スクリーン」に紹介されていた記憶は鮮明に残っていますが、多分見ていません。

>男の規範意識に差別意識が払拭されてしまう
本作や「夜の大捜査線」なんか典型ですね。

>「絞殺魔」
「考察魔」なら良いんですけどね(笑)
>分割画面
言われてみればそんな気がするなあ。
昨日UPした「猿ロック」が分割画面を多用してましたが、その時代の映画をよく見ている僕らの世代には逆にクラシックな感じ。「華麗なる賭け」と「大統領最後の日」が印象深いです。
>数十年前
僕の記憶では、1979年か80年にTV初登場です。
オカピー
2011/02/21 23:14
二人の間に生まれていく友情の描き方がとってつけたものでなく、だから最後のシーンも心情的に素直に受け止められる。これは今観ても上手いナァって思う。やっぱりごちゃごちゃ説明してないんですよね。白人だから黒人だからということにも敢えて必要以上に喋らせていないんですよね。みりゃ分かる。それが映画なんですよね。
シュエット
2011/03/04 16:10
シュエットさん、こんばんは。

昔だって説明的な映画は少なからずありましたが、今はそれなりに良いと見なされる作品も説明的で、観ているうちに白けてくるものが少ないですね。
観客に考えなさせすぎですよ、今の映画は。
オカピー
2011/03/06 22:39

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