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zoom RSS 映画評「櫻の園−さくらのその−」

<<   作成日時 : 2011/01/13 18:24   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・中原俊
ネタバレあり

中原俊が吉田秋生の同名コミックを元に1990年に作った「櫻の園」は日本映画史に残る作品で、僕が日本映画ベスト20を選ぶとしたら是非入れたいと思う傑作である。本作はリメイクと紹介されることがあるが、女子高生がチェーホフの「桜の園」を演ろうとする以外に共通性は少ない。

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長年バイオリンをやって来た高校3年生福田沙紀が燃え尽き症候群のような形でバイオリンを止めて、母と姉がかつて通った櫻華学園(90年作原作の舞台)へ転入させて貰う。
 幽霊が出るという噂がある為に出入り禁止になっている館に入って担任教師・菊川怜が在校中に脚色した「桜の園」の台本を発見、俄然興味を持って読み始め、仲良くなった同級生たちに聞かせたところ仲間内で演ろうではないかということになるが、顧問を頼みに行った菊川教師は何故か「不可」とにべもない。用務員・大杉漣によると、十年ほど前にあった不祥事の為に演劇部は廃部になり、それ以来誰も「桜の園」を演ずることはできなくなったのだ。
 やがて学外で演じようとしたこともばれて厳しく咎められた福田嬢は諦めの境地になるものの、「桜の園」を演ずることに初めて生きがいを見出した優等生・寺島咲から何とか実現できないかと持ちかけられたことに発奮、仲間を集めて練習を再開、これを観ていた菊川教師も力を貸す気になり、遂には頑迷な教頭・富司純子を説得して校内開催に漕ぎつける。

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上演までの数時間に女子高生の心理を見事に浮かび上がらせカット割りの呼吸に感心させられた90年作に比べると、「スウィングガールズ」の演劇版みたいな通俗的扱いになっているし、中原監督らしい感覚の良さも余り拝めない。

しかし、世間で言われる程ひどいものだろうか? 

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お話の方では、孤独が好きそうなヒロインがリーダーシップを取って演劇をやろうとするのが不可解という疑問が少なからぬ鑑賞者から提示されているが、基本的にこの映画は彼女の性格や心情について殆ど何も説明していないので実際には孤独が好きかどうかさえよく解らない。転校前後はかなりひねくれている時期だから何とも言えないのである。前の学校での描写があればこの辺りははっきりしたはずだ。
 全体の構成から言って、押し付けられた練習が嫌になってバイオリンを止めた彼女が自主的に何かをやることの楽しさに気づくお話ではないかと、僕は考える。爽やかな印象が多少残る所以。

この作品で一番不可解なのは、学校側が10年前の不祥事を引きずって伝統のある「桜の園」を厳しく禁じることである。伝統を言うのであれば「桜の園」を演ずる伝統の方が長くかつ建設的であって、それを禁じることを新たな伝統にすることに何の意味があるのだろうか。そこが曖昧すぎるので、その悪しき因習を少女たちが突き破っても、残念ながら感銘を覚えるところまでには至らない。

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女子高生たちに扮する少女たちの演技は可もなく不可もない程度、この手の群像劇風青春ドラマにおいては特段問題とするに及ばない。しかし、菊川怜女史は相変わらず進歩がなく、彼女が生徒に演技指導する場面では、生徒に教わった方が良いのではないかと思わせ、苦笑いが洩れましたぞ。

漢字が読めないのを心配してサブタイトルを付けましたかな?

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櫻の園 ‐さくらのその‐/福田沙紀、寺島咲
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297「櫻の園 さくらのその」(日本)
時が過ぎていく  高校3年生の結城桃はバイオリニストになる夢を諦めて、母と姉の母校である名門私立女子高、櫻花学園へ編入する。そこは規律と伝統を重んじる学校であった。  そんな学校とそりが合わず、うんざりする桃は、ある日取り壊し予定で、生徒の出入りが禁止されている旧校舎に忍び込み、そこでチェーホフ原作の「桜の園」の脚本を見つける。かつて演劇部に所属し、現在桃たちの担任である坂野佳代が書いたものであるらしいこの脚本を読み、上演したくなった桃は、仲間たちを集め行動を起こす。  しかし、それ... ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
考えてみれば、演劇部でもない素人が劇をやろうというのですから、映画が素人っぽくても当然!?(笑)
私は、それなりに楽しく見ていました。
ボー
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2011/04/28 06:20
ボーさん、おはようございます。

こういう作品では演技なんか多少ぎこちなくても良いんです。僕も十分及第点と思います。しかし、前作の映画としての呼吸が余りにも素晴らしかったので、どうしても比較してしまうのですよ。
オカピー
2011/04/28 07:28

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