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zoom RSS 映画評「人生に乾杯!」

<<   作成日時 : 2010/12/08 15:18   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年ハンガリー映画 監督ガーボル・ロホニ
ネタバレあり

久しぶりに観るハンガリー映画はなかなかの秀作。

81歳の老人エミル(エミル・ケレシュ)はおよそ50年連れ添ってきた妻ヘディ(テリ・フェルディ)が強制執行に訪れた役人に大事なダイヤモンドのイヤリングを手放すに至って年金福祉の現状に腹を立て、旧ソ連製の愛車チャイカを駆り出して強盗行脚を始める。夫に呼ばれたヘディは特徴のある車から正体を見破った警察に協力する気で現場に赴くが、そこで気が変わって夫と共に逃走の道行と相成る。
 銀行に押し込もうとしたら誰もいなかったり、キューバ革命に参加した旧友に匿って貰ったりした後、逃走しようとして負傷させた女刑事(ユディット・ジェル)を人質にして更なる逃避行を続けるものの、次第に追い詰められていく。

監督者ガーボル・ロホニはなかなかの映画愛好家とみた。まずベースになっているのがボニーとクライド「俺たちに明日はない」で、その老人版の趣だが、同時にドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」を相当意識している。さらに猛スピードの車が衝突爆破する場面は「バニシング・ポイント」といった具合。

いずれにしても、老人の強盗という素材なのでコミカルに処理されおとぼけムードで進行するのがヨロシイ。見落とされがちなのはスライド・ギターの音楽で、「パリ、テキサス」におけるライ・クーダーに酷似しているようにロード・ムービーによる家族再生劇を目指すという作者の宣言になっているように思う。

本作の面白さの大部分は老夫婦を夫婦刑事(夫はゾルタン・シュミエド)が追うという展開が構成しているわけだが、再生劇の部分は老夫婦より主に二人を追う離婚検討中の刑事夫婦の担当で、老夫婦を含めて夫婦の絆を深め強めるのはやはり子供なのだという結論を打ち出していく。

他方、モチーフはハンガリーにおいて高齢者が直面している貧窮の現状で、そこにはソ連製の大型車チャイカや拳銃トカレフが活躍する展開からも解るように、共産主義だった旧体制を幾分か懐かしむ気分さえ出ている。50年前の車(それは老人の寓意でもある)が新しい車や若い人間も登れない物凄い坂道を上って行く辺りは痛快である。

プロローグで老夫婦の結婚前のエピソードを中途半端に打ち切るのもお手柄で、そこで青年エミルはヘディから見逃してくれる賄賂としてダイヤのイヤリングを渡される。そして現代に至り、役人が訪れる場面で一瞬にして彼がその後彼女にイヤリングを返して二人は結ばれたことが理解できる辺りが心憎いのである。終盤ほんの僅かその場面がフラッシュバック的に挿入されるのは蛇足みたいなもんだが、こちらの直感通りと確認できる意味合いがある為明らかな無駄とは言えない。エミルが大事にしていた本も或いは彼女の家にあったものではあるまいか?

庶民の僕らにはどこか反権力への憧れがあるよね。

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人生に乾杯!/エミル・ケレシュ
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カノンな日々
2010/12/08 16:59
人生に乾杯!
公式サイト。ガーボル・ロホニ監督、エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド。原題:Konyecはハンガリー語で「―を超えて」とかいう意味らし ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2010/12/08 17:04
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&nbsp; □作品オフィシャルサイト 「人生に乾杯!」□監督 ガーボル・ロホニ&nbsp;□キャスト エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド ■鑑賞日 7月26日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> 淡々と進んでいくこの物語には、派手なアクションや高度なCGや特殊SFXもなく、そうかと言ってバカ高いギャラを興収に関係なく持ち逃げする有名な役者もいない。 だけど無駄な飾りを一切切り落とした、それでにいて生... ...続きを見る
京の昼寝―♪
2010/12/08 17:22
人生に乾杯!
これが初体験のハンガリー映画。ということは当然話していたのはハンガリー語?監督は本作が長編デビュー作となるガーボル・ロホニ。主演はエミル・ケレシュ。共演にテリ・フェルディ。といっても殆どが主人公の老夫婦と若い刑事のカップルの話なのでこの他に目だって登場するのは2人ぐらいだったり。ハンガリーといえば元共産主義国でF1の開催国だということ位しか知りませんが、ちょっとコミカルなノリが気になった作品です。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2010/12/08 17:33
mini review 10481「人生に乾杯!」★★★★★★☆☆☆☆
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2010/12/09 01:52
人生に乾杯!原題:KONYEC
エミル夫婦の反撃は高齢者の希望に繋がった!! 8月7日、京都シネマにて鑑賞。ハンガリー映画って初めてだ。ハンガリーと言えば、ブ... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2010/12/09 21:30
人生に乾杯!
2007年 ハンガリー 108分 監督:ガーボル・ロホニ 出演:エミル・ケレシュ テリ・フェルディ ユーディト・シェル ゾルターン・シュミエド いくつになっても、幸せへの道は続いているはず…。高齢者には何かと非情で住みにくい世の中の不公正な仕組みに怒りを覚え、ひょんなことから強盗を働くことになった81歳の老主人公と、そんな夫の突然の変貌に戸惑いを覚えつつも、彼と手に手を取り合って逃避行の旅に出た70歳の妻。自分たちのささやかな幸せと正義のため、遂に思い切った行動にう... ...続きを見る
RE940の自作DVDラベル
2010/12/15 21:42

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
なかなか面白そうですな。
「バニシング・ポイント」が出てくる辺りで、やるせない結末かと思いきや、そうでもないらしいので、予定リストにアップしようと思いました。
十瑠
URL
2010/12/08 15:58
こんにちは。
ドイツ映画のほうは見ていませんでした。
チャイカで坂道を登るシーンでは、「頑張れ!」って思わずこちらも力が入ってしまいましたよ(笑)

kimion20002000
URL
2010/12/08 22:56
十瑠さん、こんばんは。

面白いですよ。
7点でも9点の後味の悪い映画よりはずっと素敵です。

>結末
そうですね。^^

>予定リスト
そうなさってください。^^
オカピー
2010/12/09 00:19
kimion20002000さん、こんばんは。

>ドイツ映画
僕も今年見たばかりの旧作なんです。
あちらは男二人ですが、官憲に追われながら海を見たことのない相棒の為に海を見に行くのですよ。「海を見たことがない」というのがキー・ワード。
あの映画自体が古い映画へのオマージュに満ちたものでした。

>チャイカ
あれよあれよと登ってしまいましたね。もう少しヒヤヒヤさせても良かったかも。^^
オカピー
2010/12/09 00:21
これは劇場鑑賞スルーしたけど、観とけば良かった!って後悔の映画。(最近、国内で大ヒットって言う老人映画が多かったもんだから…もある)
イヤリングにまつわる二人の思い出にホロリ。生き抜いた二人の証なんですね。ラストシーンもうんうんと肯ける。
私はブーブーと文句を言いたい「テルマ&ルイーズ」のラストシーンを思い出したわ。自己解放だかなんだか知らないけど、テルマとルイーズの二人に較べて、どうよ、この老夫婦のこのあっぱれな人生の締めくくり方は! 彼らの人生に乾杯!
シュエット
2011/03/10 11:31
シュエットさん、こちらにもコメント有難うございます。

先進国では高齢化社会が進んでいるものですから、どうしても老人が生きがいを見つけるといった内容の作品が増えてきますよね。実際の人口比を考えたらまだまだ少ないけど、老人が映画を余り観ないことを反映しているのでしょう。

本作は切り口が面白かった。
このくらいの年代の人は、ある意味温室的だったとも言える共産主義時代が懐かしいのかもしれないと思いました。
☆☆☆☆でも良かったんですけどね。

>「テルマ&ルイーズ」
嫌ってますなあ(笑)
ラストはともかく途中は楽しめましたよ。^^
オカピー
2011/03/11 00:05

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