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zoom RSS 映画評「縞模様のパジャマの少年」

<<   作成日時 : 2010/11/06 16:29   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 11 / コメント 6

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年イギリス=アメリカ映画 監督マーク・ハーマン
ネタバレあり

アイルランドの小説家ジョン・ボインの同名小説をイギリスのマーク・ハーマンが映画化した戦時ドラマである。

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第二次大戦たけなわの頃、ドイツ将校の父親デーヴィッド・シューリスがユダヤ人収容所の所長に出世した為にベルリンから地方に越した為に遊び相手となる友人もなく退屈し切っていた8歳の息子エイサ・バターフィールドが農場と思い込んだ収容所に興味を覚えて接近、鉄条網の向うにぽつねんと座っている同い年の少年ジャック・スキャンロンと親しくなるが、やがてユダヤ少年の父親が忽然といなくなる(皆様、理由はお解りですよね)。
 友情の為に父親捜しの協力を買って出たエイサ少年は鉄条網の下の土を掘り縞模様の服と帽子を来て敷地内に入り、予想通りのというか予想もつかないというか衝撃的な幕切れを迎える。

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少年の純粋無垢が引き起こす悲劇というのが一般的な物語の解釈であろうが、この少年の父親たる所長が痛恨の表情を見せる終幕を見ると、それ以上にある種の寓意性を感じさせられてしまう。
 僕が感じるのは、作者が意図したか否かはともかく、ユダヤ人が受けなければならなかった悲劇はドイツ少年が巻き込まれていく運命の歯車のずれと同じくらいちょっとした歯車のずれ――歴史のダイナミズムという名の、或いは時代の陥穽か――であって、この時代横暴を極めたアーリア系と称するドイツ人が逆の立場にならなかったかと誰が言えようかという寓意である。
 その心を分析すれば、“分別”を持ったが故に自己・自民族の保守・保身に凝り固まり他人や他の民族のことを考えられない人間の性とも言うべき愚かさに行きつく。かくして人類なる存在にゾッとしないではいられなくなる幕切れと言っても良いだろう。

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所長の表情は教えなかったことの悔悟をも表している。彼にしても収容所で行われていることが子供には教えられない、罪悪に等しいことと知っているはずである。それを考えれば、彼や若い将校の厳しい態度は寧ろその葛藤の顕れではあるまいか?

映画本体について言えば、マーク・ハーマンの進行ぶりはイギリスの監督らしく折り目正しく見やすい。また、ドイツ少年役のエイサ・バターフィールド君の大きな瞳は正に無垢そのもので大変印象的。キャスティングのお手柄と言うべし。

日本も現在色々とややこしい問題に巻き込まれていますね。ああ面倒臭い。

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縞模様のパジャマの少年
公式サイト。原題:THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS。マーク・ハーマン監督、エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン、デヴィッド・シューリス、アンバー・ビーティー、ヴェラ・ファーミガ、ルパ−ト・フレンド。ナチスのエリート将校(デヴィッド・シューリス)の息... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
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縞模様のパジャマの少年/エイサ・バターフィールド
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カノンな日々
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mini review 10440「縞模様のパジャマの少年」★★★★★★☆☆☆☆
ナチス将校を父親に持つドイツ人少年と強制収容所内のユダヤ人少年との友情と哀しい運命を描いた心揺さぶる人間ドラマ。ジョン・ボイン原作の世界的ベストセラーを、『ブラス!』『リトル・ヴォイス』のマーク・ハ... ...続きを見る
サーカスな日々
2010/11/06 21:25
縞模様のパジャマの少年
ジョン・ボインの同名小説の映画化。ホロコーストをとある少年の目線で描いた作品です。監督はマーク・ハーマン。製作に「ハリーポッター」シリーズのデヴィッド・ハイマンも名を連ねています。主人公ブルーのを演じるのは弱冠12歳のエイサ・ハターフィールド。共演にこれまた「ハリーポッター」シリーズのリーマス役でお馴染みのデヴィッド・シューリスが。無邪気な子供同士の友情と戦争の現実が交錯する時…。 ...続きを見る
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縞模様のパジャマの少年
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2010/11/07 16:35
縞模様のパジャマの少年
The Boy in the Striped Pyjamas (2008年) 監督:マーク・ハーマン 出演:エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン、デヴィッド・シューリス、ヴェラ・ファーミガ 第二次世界大戦の最中、捕虜収容所所長の幼い息子と収監されているユダヤ人少年との交流を描くドラマ。 軍人の父親を英雄視していた少年は、戦争の犠牲者達との接触を通して、不穏な空気を察するが、大人たちの悪意がそんな気配も吹き飛ばしてしまう。 無邪気なドイツ人少年が、同い年のユダヤ人が虐げられる様を見... ...続きを見る
Movies 1-800
2010/11/08 01:12
「縞模様のパジャマの少年」
THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS 2008年/イギリス・アメリカ/95分/PG-12監督: マーク・ハーマン 原作: ジョン・ボイン『縞模様のパジャマの少年』(岩波書店刊) 脚本: マーク・ハーマン 出演: エイサ・バターフィールド(ブルーノ)/ジャック・スキャンロン(シュムエル)/ アンバー・ビーティー(グレーテル)/デヴィッド・シューリス(父)/ヴェラ・ファーミガ (母)/ ルパート・フレンド(コトラー中尉) 2010年。2001年、21世紀に... ...続きを見る
寄り道カフェ
2010/11/08 08:57
『縞模様のパジャマの少年』
□作品オフィシャルサイト 「縞模様のパジャマの少年」□監督・脚本 マーク・ハーマン □原作 ジョン・ボイン □キャスト エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン、アンバー・ビーティー、デヴィッド・シューリス、ヴェラ・ファーミガ、、ルパート・フレンド、デヴィッド・ヘイマン■鑑賞日 8月15日(土)■劇場 恵比寿ガーデンシネマ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> かなり下馬評の高かったこの映画。 予告編であまりにも期待を膨らませた方々も多かったに違いない。 ブロガ... ...続きを見る
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『縞模様のパジャマの少年』
(原題:The Boy in the Stripped Pyjamas) ...続きを見る
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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
おっしゃるとおりですね。
ここでは民族の差異ではなく、どんな民族でもある歴史過程にたちあえば、そしてある条件が整えば、一挙にイデオロギの側に吸収されちゃう危険さを孕んでいるということがモチーフかなと思わせられます。
kimion20002000
URL
2010/11/06 21:27
劇場で観ました。こういう映画はいろいろ考えさせられるところがあって、観終わった後は沈んだ気持ちになりました。
子役はよかったですね。
ドラゴン
2010/11/06 22:35
kimion20002000さん、こんにちは。

ご賛同有難うございます。
最後の一幕を見ていたら何だかそうした感想が湧き上がってきました。

>イデオロギー
パレスチナ問題を観るとどっちもどっちという気にもなりますし。
オカピー
2010/11/07 11:15
ドラゴンさん、こんにちは。

差別の問題や反戦は最初に考えさせられますが、本作の場合はそこに留まらずそのベースとなっている人間の愚かな性にまで思いが至るように設計されているように思います。
その為の触媒が悪い意味での“分別”を知る前の子供なんでしょうね。
オカピー
2010/11/07 11:25
P様おはようございます。
>マーク・ハーマンの進行ぶりはイギリスの監督らしく折り目正しく見やすい。
子供たちがみてもよく分かる話の展開。21世紀に産声をあげた子供たちは主人公の少年たちとたちと同年齢になっている。この映画を観て、時代背景となっているこの時代のこと、なにがあったのか自分の目と頭で探っていく感性が、この映画を見て沸き起こってくれることを願います。
>ドイツ少年役のエイサ・バターフィールド君の大きな瞳は正に無垢そのもので大変印象的。
透き通るような大きなブルーアイ。この映画にとても強い印象と説得力を与えてるとしたら彼のこの瞳でしょうね。
>ちょっとした歯車のずれ――歴史のダイナミズムという名の、或いは時代の陥穽か
本当にそうですね。価値観も国家イデオロギーによって次の瞬間には180度に転換する。「もしもあの時…」歴史を振り返ってよく言われる言葉。
冒頭で字幕でかかれた言葉「子供時代とは分別を知る前の…」この言葉が21世紀の日本の子供たちの感性にどれだけ強くあるだろうか? そんなことも考えてしまった映画でした。
シュエット
2010/11/08 09:17
シュエットさん、こんばんは。

最近の映画としては珍しいくらいきちんと展開している一方で、説明過多になっているわけではなく、過不足のない作品という印象でしたね。

少年は真実を知った上で収容所の外に出てくると思っていたものですから、あの幕切れにはびっくりしましたが、所長の表情に皮肉な印象より「これがゲルマン民族全体に行き渡らないと誰が言えようか」という歴史的視点に思いが行ってしまいました。些か視点が飛び過ぎたような気もしましたが、シュエットさんの賛同を得られて光栄です。^^

>エイサ君
この作品の寓話性を見事に成立させたのは彼の起用でしょうね。

>子供
何だかトルストイが言いそうな言葉ですが、最近の子供は“分別”を得るのは僕らの時代よりずっと早そうですね。ある意味永久に得ないか(笑)
オカピー
2010/11/08 22:49

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