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zoom RSS 映画評「3時10分、決断のとき」

<<   作成日時 : 2010/10/05 16:24   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ジェームズ・マンゴールド
ネタバレあり

デルマー・デーヴィス監督の「決断の3時10分」(1957年)を「“アイデンティティ”」「ウォーク・ザ・ライン」としっかりした作品作りで印象を残しているジェームズ・マンゴールドがリメイクした西部劇。

借金を抱えた牧場経営者ダン・エヴァンス(クリスチャン・ベール)が借金を返す為に200ドルの対価を目当てに、酒場で女店主といちゃついているところを逮捕された悪名高き強盗団のボス、ベン・ウェイド(ラッセル・クロー)を護衛する任務を引き受ける。

というお話の骨格はオリジナルと全く同じだが、先週の「サブウェイ123 激突」と同じく登場人物の人物像を中心にディテイルは結構変えられている。

一番違うのはオリジナルではウェイドとエヴァンスの心理対決の図式だったのが今回はそれより途中でウェイドが逃亡を図ったり、彼を仇と付け狙う一派と一戦交えたり、アクションが数倍の量に増えていることである。アクション描写は、移動撮影が多くこれでもう少しカメラが揺れなければ十二分に満足できる、というレベル。
 主人公が護衛に拘る理由も一度引き受けた任務を全うしなければならないという義務感から、家族に誇れる自分を見せたかったという極めて個人的な事情に変っている。頗る現代的、いや、9・11以降のアメリカ的と言うべきだろうか。

その変更に合せて長男ウィリアム(ローガン・ラーマン)が護送に色々と絡み、父親の英雄的行為の目撃者となる、という展開は理にかなっている。エヴァンスがウェイドではなくその部下たちに殺されてしまうことでさらにその効果は上がるわけだが、劇的効果はともかく息子に尊敬されて生き続けるという幕切れのほうが後味は良かったと思う。

疑問を呈する人が割合多いウェイドの行為は悪党が善人に変ったという意味ではなく、エヴァンスの行動に惚れ込み友情めいた行動で返したということである。実際の人間は灰色であることが多いし、そもそもウェイドにしてもアメ・コミに出て来るような完全な悪党ではなく、元来内に有していた善の部分が顕在化したと解釈するのが一番落ち着きが良い。
 彼がエヴァンスを偽善者と呼ぶ箇所があるが、悪党を気取っているが故に内に有する善を認めたがらなかったのではないかと推測することができると思う。つまり偽善と言っていたこと自体が本作では彼が善なる部分を持っていた証左であり、終盤や幕切れの行動の布石になっているような気がするのである。

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2012/04/30 14:03

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
昨年「艱難」をくぐり抜けたばかりの
プロフェッサーが57年のオリジナル作で
拙宅へおいで下さっていらっしゃる記事を
HNに入れて参りました。

半世紀前の西部劇を今どきの
「豊かな」俳優で新たな解釈も入れての
本作でしたね。悪くはないのですが
そもそもかつての西部劇にあったところの
男の背中に背負ってる何かの
違いが物語がすすむ間に
ちらほらちらほら見え隠れしましてね〜。
コアな西部劇ファンでは全く
ございません当方ですが
オリジナルとは違ってもう一度観たいと
いう気がどうも起きない映画ではございました〜
vivajiji
URL
2010/10/06 15:54
vivajijiさん、こんばんは。

>男の背中に背負ってる何か
オリジナルでも、父親は子供に良いところを見せようという思惑はあったわけですが、それが護送を続ける絶対的条件ではなかったです、確か。
リメイクでは「良いところ」というのをもっと複雑にし、それ一本に絞った作劇が、いかにも9・11で家族を失うアメリカ人が多数出た後に作られた映画らしいですよね。

何故ボスが牧場主を守る側に回るかという背景説明は本作の方が解りやすく作られているような気がします。
昨今再鑑賞したくなる映画はなかなかないです。非常に抽象的な言い方をさせて貰えば、映画的な映画が極端に減っているんですね。
オカピー
2010/10/07 00:17
本作公開前に、偶然にもオリジナルの方の「決断の3時10分」を観る機会があり、リメイクの方は結局劇場鑑賞はスルーしました。先日、WOWOW放映で見たのですが、観ている途中でどっちもでいいやって中断しました。P様は先の方は6点で本作7点の評価なんですね。でも私はオリジナル版の方が、シンプルで感動も覚えたわ。それに較べると、途中で観るのやめたから後半は良かったのかもしれないけど、どうもあれこれ修飾語が多過ぎて…9.11以降のアメリカ的という視点でみたら、また違った捉え方も出来たのでしょうが、そういう意味づけもしたくないなぁって思うし…。
雨が振らない、金がない、なんとしてもここで頑張りたい。不甲斐ない男が覚悟を決めてにわか賞金稼ぎになって、捨て身で立ち向かう…そんなオリジナルの方が分かりやすくって、だからラストの雨のシーンが印象的だったわ。
西部劇ファンでもないけど、西部劇って、その単純明快なシンプルさ無骨さがいいんダナァって思う。感情表現もストレートでシャイで、複雑な思いは言葉にできなくって、その分、覚悟を決めたら言葉にできなかった分だけ根性座るって、そんな明快さが良さじゃないかなって思うのですが。そんなこんなでオリジナルが良かったわぁって思うシュエットです。オリジナル版の記事こちらにTBさせていただきますね。
シュエット
2010/10/07 09:14
追記
TBは最近見た映画の数本の一つでざっくりとしか書いてませんが。
リメイク観ていて、キャスティング、クリスチャン・ベイルとラッセル・クロウ入れ替わった方が味が出たんじゃないかな、面白くなったんではって思いましたが…。
シュエット
2010/10/07 09:20
何度もゴメン。一番初めのコメントくっつけてくださいね。
息子に見せるというより、自分自身が自分にプライドを持てる自分になるという設定(と捉えているのですが)のオリジナルと、P様の記事から、リメイクは息子が父親の行為を観る、息子に誇れる父親という設定のようで、このあたりが製作された時代の違いなんでしょうかしら。でも、まずは西部に生きる男の誇りに焦点絞ったシンプルなリメイクが好きだなぁ。
シュエット
2010/10/07 09:31
シュエットさん、こんばんは。

>6点、7点
リメイクの方が良いのは西部劇が作られない時代にそれなりにしっかり作られたという意味を込めています。
方や、オリジナルが作られたのは西部劇がごろごろ作られた時代であり、その時代に観たらばという仮定で付けたようなところがあります。
ということで、全く無条件で観たなら、オリジナルの方が面白いですね。幕切れのフォードの行動が唐突過ぎる感は否めませんが。
それを是正しようしたのがリメイクなのでしょう。しかし、それはそれで説明的になりすぎているのが気にはなりましたね。

>9・11以降のアメリカ的
これは強く感じました。
あの事件以降アメリカ映画はとにかく家族を描こうとしましたが、やや遅れて作られた本作は典型的な親子の描き方で、恐らく西部劇以外のジャンルではわざとらしくて不可能だったのでしょう。
オカピー
2010/10/08 01:50

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