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zoom RSS 映画評「ゼロの焦点」(2009年版)

<<   作成日時 : 2010/10/18 15:53   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・犬童一心
ネタバレあり

昨年太宰治と共に生誕100年ということで巷を賑やかした松本清張の同名小説の二度目の映画化で、恐らく八度目の映像化である。犬童一心が監督というのは異色と言えないこともない。

東京本社に栄転になった会社員・西島秀俊が出張所所長をしていた金沢に残務整理に出たまま帰らない為、結婚したばかりの妻・広末涼子が事情調査に出る会社の同僚に同行するが、在任中の住所も解らない。親しかったという取引先の煉瓦会社社長・鹿賀丈史と夫人・中谷美紀から何の情報も得られないうちに、やがて彼の兄・杉本哲太が毒殺されるという事件が起きる。
 その間に夫が戦後間もなく立川で巡査をしていたことがあり、その主な仕事がパンパンの取締であることが判明、煉瓦会社の受付嬢・木村多江がパンパン風の英語を使っていたのを思い出す。調査するうちに彼女の内縁の夫が西島のいなくなった日に自殺したことが判明、果たしてその男が自分の夫と同一人物であることを突き止め、全ての事件が一人の人間の犯行であると睨む。

というお話の骨子は最初の映画化(1961年)と同じでも、同作が段取りを踏んで謎解きを進めていったのに対し、本作はヒロインが夫失踪が崖からの墜落死であると掴むのと並行して中谷嬢と木村譲の修羅場を見せることで謎解き映画であることを話半ばで完全に放棄して、女性市長誕生に奔走する社長夫人が女性の明るい未来を開こうと戦後から昭和半ば現在まで生きてきたことを示すことで、女性がたくましくなって男性が目立たない平成時代との関連性を強引に打ち出す。

ミステリー好きにしてみれば残念な改変だが、さすがに戦後の場面を大幅に増量した効果は絶大で、必要のない殺人を繰り返す犯人が見せる人間の悲しい性(さが)に1961年版より遥かにしゅんとさせられる。
 その代わり改変で無理が出たところが色々あり、問題を指摘する人の多い受付嬢の行動より社長の行動が全く腑に落ちない。布石らしきものがないことはないものの、これは脚本の勇み足だろう。

ところで、「妻が結婚した夫の正体を全く知らない」という昭和半ばならではの設定がどういう風に映像化されているかと妙な期待を持っていたのだが、さすがに21世紀への舞台背景の移行は無理で、上記のような手段を用いるしかなかったようだ。
 実は、清張ミステリーには、時代性が強い為に、リメイクの数の割には21世紀での映像化に向いていないものが多い。結果として、本筋は原作通りの時代背景とし、平成の場面を無理矢理付け足すという手法が常套手段になっている。

色々と批判のあるらしい広末嬢について演技はともかく、現代的すぎる声が戴けない。

昭和は遠くなりにけり、ということじゃね。

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ゼロの焦点
公式サイト。松本清張原作、犬童一心監督、広末涼子、中谷美紀、木村多江、杉本哲太、崎本大海、野間口徹、黒田福美、本田博太郎、西島秀俊、鹿賀丈史。松本清張の名作とされながら、ディテイルはかなり杜撰というか、不自然だ。 ...続きを見る
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『ゼロの焦点』
&nbsp;□作品オフィシャルサイト 「ゼロの焦点」□監督・脚本 犬童一心 □原作 松本清張 □脚本 中園健司 □キャスト 広末涼子、中谷美紀、木村多江、西島秀俊、鹿賀丈史、杉本哲太、崎本大海、野間口徹、黒田福美、本田博太郎■鑑賞日 11月22日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> &nbsp;松本清張の作品の割にはと言っては失礼だが、あまりミステリーミステリーしていなくて、 むしろ事件に関わる人間の心の奥底に潜在する葛藤をあぶりだした形の作品... ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>清張ミステリーには、時代性が強い為に、リメイクの数の割には21世紀での映像化に向いていないものが多い。
強烈に時代を描いているのだけれど、映画化された作品を再鑑賞しても、決して古臭さを感じさせないし、時代の枠を超えて人間の業や哀しさが映像から迫ってくる。演じていた役者が時代の重さを体現するほどの存在感もありましたよね。
テレビドラマで「砂の器」を中居君主演で、舞台を現代に置き換えて作るという大それたドラマがあったけど、1回目の途中で観ていられなくって止めた。とにかく軽すぎる。ライ病に対する社会の偏見、差別が根底にあっての作品でもあるのに。時代を無視した映画って……(はぁタメ息)。
シュエット
2010/10/26 13:19
シュエットさん、こんばんは。

>強烈に時代を描いているのだけれど・・・決して古臭さを感じさせない
特殊な時代性(時代背景)を以って人間の普遍性を描いているからですね。
テーマそのものは決して古びない。しかし、時代そのものをきちんと説明できないとそれが浮かび上がってこない。
21世紀になってからの映像化を見ると、脚本家もそれが解っているので、基本を原作の時代にし無理に現在を追加してくるのですが、それがどうにもわざとらしく映ります。
まして、テーマをそのままに現在に舞台を移行するのは無理でしょう?
オカピー
2010/10/27 01:21
プロフェッサー、こんばんは。

仰るとおり、この手の作品は時代というものが大変重要です。
その時代だからこそおこりうる事件であり、描くべき作品、原作なのです。

そう、その時代に生きた人間の業なり、感情、行動があります。

私の好きな横溝作品なんか正ににそれです。
絶対に現代には置き換えられないし、通ずる点などを描こうとすると完全に駄作となる。
金田一作品の時によく記述したことですが、いかに原作を愛し、理解し、映像化するかです。つまり、その時代を描かないと人間自体が、その感情であったり、行動であったり、見えない力、業などが全く無意味になってしまい、作品がなりたたない。
そう、ミステリーにならないのです。

本作も、引き込みはよかったのですが、途中からはもう・・・・。
そして、広末のあの声はね・・・・。

作品の雰囲気というのかな、その世界観というか、時代というか、やはり原作をどれだけ理解してるかだと思うんですよね。

イエローストーン
2010/11/03 23:36
イエローストーンさん、こんばんは。

いや、全く付け足すことのないコメントです。
人間の本当の芯の部分は恐らく時代や民族を超えた普遍性があるのだろうと思います。しかし、もう少し表面に近い部分では時代と切り離して考えることはできない。
横溝作品や松本作品でも普遍的な部分ともう少し時代固有の部分が合わさって浮かび上がってくる人間性が面白いので、舞台を移行しないとしても現在での映像化は難しいものがありますね。
オカピー
2010/11/04 00:21

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