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zoom RSS 映画評「シャネル&ストラヴィンスキー」

<<   作成日時 : 2010/10/15 16:39   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2009年フランス映画 監督ヤン・クーネン
ネタバレあり

今年になって観る三本目のココ・シャネルの伝記映画だが、面白いかつまらないかを別にして、本作が一番高級な“芸術”映画である。最初に観た「ココ・シャネル」が一番メロドラマ(大衆映画)で解り易い。

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どちらかと言えば、ロシア・ソ連の作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(マッツ・ミケルセン)が主人公で、「火の鳥」と並んで有名な「春の祭典」がパリで前衛的過ぎて大半の観客から囂々たる非難を浴びて挫折する1913年から始まる。観客の中に新進帽子デザイナーのココ・シャネル(アナ・ムラグリス)がいた。
 7年後既に富と名声を手に入れていたココはロシア革命から亡命したパリで困窮する彼に援助の手を差し伸べ、家族ごと豪邸に招き入れる。下絵を書く前に生地に触れるデザイナーと楽譜を書く前にピアノの鍵盤に触れる音楽家は互いに共通点を見出して惹かれ合い、病弱な妻エカチェリーナ(エレーナ・モロゾヴァ)を尻目に深い関係になって行くが、直感的に二人の密通に気付いた妻は子供に気を使って家を出ていく。
 かくして互いへの情熱に刺激されてココは有名な香水【シャネルの5番】を作り出し、ストラヴィンスキーは「春の祭典」再演という道を切り開いて行く。

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僕が先年CDを購入した「春の祭典」は今でも聴きやすい音楽ではないものの、パリ公演の大騒動は恐らくバレエの方が原因だろう。いずれにせよ、クラシック・ファンには当時の様子が再現され興味深いにちがいない。

出来映えの方は「ドーベルマン」以来の日本公開となるヤン・クーネンは舐めるようにカメラを駆使してレ・ザネ・フォル(狂乱の時代)らしいムード醸成に努めて悪くない出来である一方、時々一人合点になる傾向がある。例えば、「春の祭典」再演の最中に老年の二人がカットバックで挿入されるのは二人が未来を想像した心象と理解したが、気取りすぎて殆ど意味不明。入浴のショットを繰り返するのも心象風景のつもりらしいが、狙いが不鮮明。

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そこで作者たちの腹積もりを探れば、そもそもストラヴィンスキーとシャネルが恋愛関係にあったとは思われず、そこを逆手に取って想像力をたくましくして自由奔放に心理ドラマ風に仕立てようとしたに違いない。それはともかく、解りにくければ芸術映画になると思って創ったとは言わないまでも、終盤についてはもう少し観客に親切であってしかるべし。

また、ストラヴィンスキーのファースト・ネームをイゴールとしている人が多いが、イーゴリがロシア語の発音に近い。ロシア語は僕の専門分野だから間違いありません。

シャネルの3番(め)でした。

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シャネルさん
「ココ・アヴァン・シャネル」 「ココ・シャネル」 「シャネル&ストラヴィンスキー」  ...続きを見る
Akira's VOICE
2010/10/15 16:50
シャネル&ストラヴィンスキー/アナ・ムグラリス
昨年『ココ・シャネル』『ココ・アヴァン・シャネル』とココ・シャネルの生誕125年記念した映画が公開されましたが、この映画が残る最後の作品。第62回カンヌ国際映画祭でもクロージング作品になったそうですね。シャネル社の協力もありカール・ラガーフェルドが特別にデザイ... ...続きを見る
カノンな日々
2010/10/15 21:27
シャネル&ストラヴィンスキー
シャネル50周年記念作品としては『ココ・シャネル』、『ココ・アヴァン・シャネル』についで3作品目。『ドーベルマン』のヤン・クーネン監督が、シャネルとストラヴィンスキーの恋愛劇を軸に香水「N°5」の誕生秘話や「春の祭典」再演にかける想いを綴った作品だ。主演は『そして、デブノーの森へ』のアナ・ムグラリスと、『誰がため』のマッツ・ミケルセン。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2010/10/16 00:47
シャネル&ストラヴィンスキー
COCO CHANEL &amp;amp; IGOR STRAVINSKY 遅まきながら、鑑賞して来ました。ジャック・メスリーヌに続き、これもフランス映画でした。シャネルシリーズ... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2010/10/16 01:42
シャネル:〜「勇気。」
シャネルの言葉をトラックバックさせていただきました。 ...続きを見る
前向きになれる言葉
2010/10/17 07:41
10-35「シャネル&ストラヴィンスキー」(フランス)
密やかな背徳  1913年のパリ、シャンゼリゼ劇場。自作《春の祭典》の初演を迎えたストラヴィンスキーだったが、そのあまりにも革新的な音楽は観客に受入れられず、劇場はヤジと嘲笑で騒然となる。  そんな中ただ一人、ココ・シャネルだけは今までにない斬新なスタイルに共鳴し、心震わせていた。  それから7年後。シャネルは、デザイナーとして富と名声を手にしながら、最愛の男アーサー“ボーイ”カペルを事故で亡くし、悲しみに暮れていた。  そんな時、家族と共にパリで苦しい亡命生活を送っていたストラヴ... ...続きを見る
CINECHANが観た映画について
2010/10/24 14:47
■映画『シャネル&ストラヴィンスキー』
今も世界中の女性を魅了してやまないデザイナー、ココ・シャネルの情事を描いた映画『シャネル&ストラヴィンスキー』。 クリエイターの孤独を共有できる男としてシャネルに選ばれたのは、音楽家のイゴール・ストラヴィンスキーです。 ...続きを見る
Viva La Vida! <ライターC...
2010/12/26 21:15

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
TBできない作品はコメントを…というお言葉に図々しく、本作は観てもいないんですけどコメントを(笑)
シャネル絡みのレビューが続いていて、全く映画先進国はネタが切れて干上がり状態で、やたらめったら3D映像へ。大衆化ということではあくまでも娯楽作品としてあるんでしょうけど、映画に大いに刺激され影響受けて、娯楽といいながらもどっかで第七藝術という気負いをもって育ったアナログ世代には、新世代映画として区別していかないといけなくなったのかしらね。書籍のデジタル化も本格始動をしだし、活字文化が廃っていく危機感をもちながらも、デジタル化の波は止められない流れなんでしょうね。人間の語学能力の何かが喪失され、それに代わるべき何かで人々は新しい文化を生み出していくんでしょうかしらね。人間の生理的営みそれ自体はさほどの進化もしていないにも関わらず。
話がそれて。
この映画、主演のマッツ・ミケルセンがどうも苦手で。脇役としては素晴らしい役者だと思うんだけど…。それに映画の内容もどうもこじつけっぽくって。クラッシック音楽をくっつけて、芸術性を謳い文句にするってのも昨今的で。
芸術家同士の魂が切り裂くほどの、そこに男と女の恋愛感情もグチャグチャに練りこまれて、といったブニュエルあたりで鍛えられた世代には、気取りもこじつけっぽくってユルユルのような印象の映画みたいで、劇場鑑賞スルーしましたわ。昨年は映画館にいけないことが多くってWOWOWでと思っても、さてとなると、まぁいいかと録画もスルーしてしまう。
シュエット
2010/10/20 10:09
愚痴コメントだけど続きます。
先日「プライドと偏見」をCSで見ました。スクリーンでは間延びして私も娘も欠伸が出たんだけど、大きいとはいえテレビ画面サイズで見ると映像密度が引き締まり、なかなかに面白く鑑賞できました。テレビ画面以上スクリーンサイズ未満といったところでしたが、最近作はたいがいは映像密度がテレビ画面サイズが程よいと感じること頻り。役者もテーマもこじんまりしてきたんでしょうね。
愚痴コメントになっちゃった。
シュエット
2010/10/20 10:09
シュエットさん、こんばんは。

>全く映画先進国はネタが切れて干上がり状態
シリーズもリメイクと考えれば、アメリカ映画は30%くらいはリメイクではないかな。
比較的なマシなフランスでもリメイクが増えてきましたし。
やむを得ないところがあるにしても、CGや3Dは明らかにリメイクを増進しましたね。

>3D
これには海賊盤対策という面もあるのですが、すると日本では吹き替え版が増えるという悪しき風潮が定着してしまう訳で、困りますね。
原作とは違う言語で映画化すると怒る人がいる割に、日本語吹き替え版の存在に文句を言う人が少ないのは何故でしょう?

>書籍のデジタル化
まあ読むことには変わりはないから認められるところですが、それより著作権を発売後50年若しくは著者の死までという風に改正しないと余り有料になり、有難味がない。現在のように死後75年(日本は今のところ50年)では大半の著作が腐ってしまう。

>「プライドと偏見」
僕は面白く観たほうですが、それもTV故かな?^^
映画館にも滅多に行かなくなったので、想像するしかないですけど、
僕も昔は浴びるように観たので、仰ることは解るような気がします。
それでも、「プライドと偏見」を作ったジョー・ライトは才能があると思いますよ。
オカピー
2010/10/21 00:30
>ジョー・ライトは才能があると思いますよ。
次作の「つぐない」で彼の才能を認識しました!…です。
「プライドと偏見」は先にBBCテレビドラマの「高慢と偏見」を見てましたからね。作品そのものよりも、主役の二人をどうしても較べてしまってねぇ。
シュエット
2010/10/21 09:29
シュエットさん、こんばんは。

「つぐない」はお見事でしたね。
「プライドと偏見」で観られた映像感覚の良さが見事に開花したような作品でした。

>BBCテレビドラマ
英国のTVドラマは日本の映画よりも良い作品が多いかもですね。^^
オカピー
2010/10/22 00:12

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