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zoom RSS 映画評「ジェイン・オースティン 秘められた恋」

<<   作成日時 : 2010/09/03 18:47   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年イギリス映画 監督ジュリアン・ジャロルド
ネタバレあり

1980年代まで映画界においてブロンテ姉妹の後塵を拝していた感があったジェイン・オースティンは1990年代に入ってやにわに光が当てられ、今日のブームに至る。

本作は、確固とした伝記があるわけではなく残された手紙などからかなり創作を加えてストーリーが構成された彼女の伝記映画ということになるらしいが、彼女の小説群が外国文学では極めて珍しく私小説的性格が強い為に、下記に述べるように、面白くもあり余り面白くもないという矛盾する印象が残された。

結婚が愛の成就ではなく女性の生きるほぼ唯一の術(すべ)であった18世紀末、兄弟の多いジェイン(アン・ハサウェイ)が作家を目指して日々習作をものしている頃、法曹志望のアイルランド青年トム・ルフロイ(ジェームズ・マカヴォイ)が突然彼女の前に現われ、最初は高慢な態度に腹を立てるもののその裏にある知性に気付いて惹かれていく。青年にしても進歩的な彼女に魅了される。
 しかし、周囲が金持ちだが些かにぶそうなウィスリー氏(ローレンス・フォックス)との結婚を進めようとするので反発、青年の庇護者である伯父のバックアップも受けられない首尾に終った為に二人は駆け落ちする手はずを整えるが、ジェインは彼が家族唯一の働き手と知って諦め、やがて作家として成功するものの独身を通すことになる。

というお話がどの程度事実かどうか判然としないが、予想通り興味深いのは、彼女の経験が「高慢と偏見」などの著作に結び付いたことが一目で解ることである。界隈に現われた青年たちがたちまち娘を抱える一家の耳目を集め、結婚するにふさわしいかどうか探りを入れられる序盤は「高慢と偏見」と全く同じで、ルフロイ青年にダーシーの面影があるなど同作を彷彿とする部分が相当に多い。この時代の経験や人物関係を換骨奪胎して書かれたのが、特に「高慢と偏見」ということになりそうだ。
 一方、それは本作がそのヴァリエーションにしか思えない弱点にも繋がり、近年「プライドと偏見」などの映画版を観た後では全体として抜群に面白いと言えない一因となっている。

また、「キンキーブーツ」のジュリアン・ジャロルドがジャンプカットを多用しているのが気になった。こういうミュージッククリップもどきのモダンな処理は、全編を通して音楽等を含めてモダン性を構築するといった明確な狙いがあるならともかく、現状ではクラシックなムードを殺ぐ効果しかない。それ以外はじっくり作っているだけに惜しまれる。

最後に、allcinemaで発見したマカヴォイの発音がどうのこうのという意見について。主旨が不明につき何とも言えないものの、クイーンズ・イングリッシュについて述べているのなら、ルフロイ青年がアイルランド出身ということを忘れてはいまいか? 寧ろクイーンズ・イングリッシュでないほうが正解と思われる。マカヴォイはスコットランド出身なので、英国南部的見地から言えばアイルランド英語はさほど問題ではないはず。

ウィスリー氏が一番賢かったような気がしますぞ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
ジェイン・オースティン 秘められた恋/アン・ハサウェイ
ジェイン・オースティンの小説は一度も読んだことがないのですが、映画化されたものをいくつか観ていることもあってすっかりお馴染みの人って感覚です。こうなったら一冊くらい何か読んでみようかなという気持ちになってるんですが、この作品はジェイン・オースティンの伝記.... ...続きを見る
カノンな日々
2010/09/03 21:01
ジェイン・オースティン 秘められた恋
作品としては2007年のモノで、主演のアン・ハサウェイは翌年の『レイチェルの結婚』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。共演は『ウォンテッド』のジェームズ・マカヴォイ。共演に「ハリー・ポッター」シリーズでお馴染みのマギー・スミスや、ジェームズ・クロムウェルといったベテランが名を連ねる。監督は『キンキーブーツ』のジュリアン・ジャロルド。英国の女流作家ジェイン・オースティンとトムの叶わぬ恋を描いたラブロマンスだ。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2010/09/03 22:23
ジェイン・オ―スティン 秘められた恋(2007)
 原題:Becoming Jane原題を直訳すると、ジェイン・オースティンになるという意味です。つまり若き日のジェインの秘めた恋にだけ焦点を当てているだけでなく、聡明な女性ジェインが後にイギリス文学史上最高の小説家と評価されるまでの間のジェインについて描かれているわけであります。 京都シネマにて初日に鑑賞しました。2007年公開のイギリス映画で、日本では今年10月に公開となりました。1年以上も経っての公開なんですね。初共演なのかな?この2人。アン・ハサウェイとジェム―ズ・マカヴォイ。 ジョン... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2010/09/04 00:15
ジェイン・オースティン 秘められた恋
Becoming Jane (2007年) 監督:ジュリアン・ジャロルド 出演:アン・ハサウェイ、ジェームズ・マカヴォイ、ジュリー・ウォルターズ、ジェームズ・クロムウェル 19世紀の女性作家ジェイン・オースティンの若き日の恋を描いた伝記ドラマ。 前半は、何かと反目し合う2人が言葉を交わすうちに相手の良さを知り、恋に落ちるロマコメ調、後半は時代と家柄が邪魔をして、結ばれる運命にない2人の恋を描く悲劇調と対照的な展開となっていて、脚本が上手いと思う。 登場人物などJ・オースティンの代表作「高慢と偏... ...続きを見る
Movies 1-800
2010/09/04 21:42
mini review 10457「ジェイン・オースティン 秘められた恋」★★★★★★☆☆☆☆
「高慢と偏見」などで知られるイギリスの女流作家ジェイン・オースティンに迫る伝記ラブストーリー。監督は『キンキーブーツ』のジュリアン・ジャロルド。ジェインを『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ、その一世一代の恋の相手となる青年トムを『つぐない』のジェームズ・マカヴォイが演じている。自著の主人公たちをハッピーエンドへ導いてきた、ジェインの知られざる恋の物語が堪能できる。[もっと詳しく] ...続きを見る
サーカスな日々
2010/09/05 21:32
ジェイン・オースティン 秘められた恋
原題 BECOMING JANE 製作年度 2007年 上映時間 120分 製作国・地域 イギリス/アメリカ 脚本 サラ・ウィリアムズ/ケヴィン・フッド 監督 ジュリアン・ジャロルド 出演 アン・ハサウェイ/ジェームズ・マカヴォイ/ジュリー・ウォルターズ/ジェーム... ...続きを見る
to Heart
2010/09/11 01:10
09-326「ジェイン・オースティン 秘められた恋」(イギリス)
別れて暮らすことに意味は無い  1795年、イギリス。貧しい家に生まれた女性ジェイン・オースティンは20歳の結婚適齢期。両親は娘を裕福な家に嫁がせようと懸命だった。  ところが、独立心旺盛で当時の女性としては格段に進歩的な考えを持っていたジェインにとっては、財産や家柄ではなく愛こそが結婚の絶対条件だった。両親がせっかく段取りした地元の名士レディ・グレシャムの甥ウィスリー氏との結婚話にも首を縦に振ろうとしないジェイン。  そんな時、彼女は若いアイルランド人のトム・ルフロイと出会う。ロン... ...続きを見る
CINECHANの映画感想
2010/09/12 22:40

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
人間的には、母親の権威からなかなか抜け出せないウィスリーがいいでしょうね。でも、それと恋愛でときめく人間のパッションはまた別の話ですものね。
kimion20002000
URL
2010/09/05 21:48
kimion20002000さん、こんばんは。

ウィスリーは正に「巧言令色少なし仁」を逆で行くような人物で、最後に真の意味での知性を発揮しますが、賢いジェーンにして見抜くのに時機を得なかったんですね。惜しかったなあ。(笑)
オカピー
2010/09/05 23:49
小説と作家自身とを結びつけて…といった内容に、観る前から底が見えるようで劇場鑑賞はスルーした作品で、ジェイン・オースティンのファンでもない私にはあまり食指が動かなかった映画でした。それよりも「ジェイン・オースティンの読書会」という映画が、読書会メンバーそれぞれの人間模様が描かれた映画で、なかなかに爽やかで良かったなぁ。
オカピーさんもレビューあげてらしたかしら? 
シュエット
2010/09/10 15:49
シュエットさん、またまたこんばんは。

>底が見えるようで
ご明察の通りと思います。
作家によっては作品と実生活が全然違う人がいて、そういう作家ならまた面白い映画にもなったでしょうけどね。
そんな女流作家が本作にも出てきますが、今思うと作者が本作の立場を逆の形で表明したような気がしないでもないなあ。

>「ジェイン・オースティンの読書会」
昨年退院直後に集中力散漫の中で観て書いたもので相当手抜きですが。
http://okapi.at.webry.info/200908/article_9.html
オカピー
2010/09/10 23:30

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