プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「シリアの花嫁」

<<   作成日時 : 2010/04/08 13:47   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 4 / コメント 2

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2004年イスラエル=ドイツ=フランス映画 監督エラン・リクリス
ネタバレあり

ノー・マンズ・ランド」花嫁版である。

1967年以来イスラエルに占領されているゴラン高原のマジュダルシャムス村、25歳の娘モナ(クララ・フーリ)は半年掛けた許可がやっと下りて今日結婚するというのに浮かない顔をしている。相手が逢ったこともない男だからではなく、“境界”を超えてシリア側に入ったら(占領が解かれない限り)二度とこちらに戻って来られないからである。
 一途なシリア派である為に投獄されたことのある父親も姉アマル(ヒアム・アッバス)の奔走で辛うじて軍事境界線に接近することが許され、これで目出度く結婚できると思いきや、イスラエルが出国印を押したことにシリアの役人が反発、その間に入る国連の女子職員も右往左往するだけで力になれない。花嫁は国連車が入って来てゲートが開けられた時にシリア側へと歩み出す。

花嫁とその家族が形式的に作られた国境(軍事境界線)に翻弄される様子を戯画的に捉えた風刺作で、国連職員が無策のまま何往復もする様子に微苦笑が洩れるものの、主人公が同じように中立地帯に取り残されてしまう「ノー・マンズ・ランド」ほど強く諧謔を狙ったものではない模様。結果的にお役人仕事に義憤を感じてしまうのだが。

国境のシリア役人(軍人)が言うように「シリア人が国内を移動するだけ」だから彼女はシリアに入っても命に関わるような問題は起きないだろうが、法律的にどうなるのか解らない。
 いずれにしても彼女が自分の意思で歩き出したということが肝要であり、本作の女性映画としての側面がよく出た幕切れになっている。それは夫の束縛を振り切って大学へ入るというアマルの強い決意にも現れている。

また、妹娘の結婚騒動の中でロシア女性と結婚した為に父親と不和になった長男ハテム(エヤド・セーティ)と和解が進むのも微笑ましく、かく人間が寛容になれば全ての境界を越えることができるという作者の思いが感じられる。

心にしみる秀作と言うべし。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『シリアの花嫁』(@「シネマのすき間」)
-----ここだけの話。 実を言うと、この映画 カタログハウスの「シネマのすき間」でフォーンにお話しするの スゴく迷ったんだって。 そう、 『シリアの花嫁』は イスラエルの監督がゴラン高原に住むシリアの女性を描いた映画。 昨年、これを観た直後にイスラエルのガザ地区への侵攻が始まって、 いくらフィクションとはいえ、 これを取り上げるのは不適切な気がしたらしい。 ニャるほど、観ればわかるけど、 これは、一種の重喜劇のスタイルをとっていながら、 奥に抱える問題はあまりにも重い。 今日のお話は、どう語っ... ...続きを見る
ラムの大通り
2010/04/08 23:39
シリアの花嫁◇The Surian Bride
 もう二度と帰れない。               それでも私はこの境界を越える。 3月27日、上映最終日に京都シネマへ・・・・。ようやく鑑賞できました。「キャラメル」同様、この作品も中東のお話。地図を見ると、レバノンのベイルートは本当に近いです。  ←ゴラン高原の場所はシリアとイスラエルの国境に位置する。クリックすると大きくなります。 物語 イスラエル占領下のゴラン高原、マジュダルシャムス村。今日は村の娘モナが、親戚にあたるシリアの人気俳優タレルに嫁いで行く日。モナは純白のドレスを手に... ...続きを見る
銅版画制作の日々
2010/04/09 20:30
「シリアの花嫁」
「扉をたたく人」で偶然知った女優ヒアム・アッバスさんの主演作ということで見てみたが、彼女自身はもちろん、映画も素晴らしかった。いま&... ...続きを見る
或る日の出来事
2010/04/11 19:53
境界線を越える〜『シリアの花嫁』
 THE SYRIAN BRIDE ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2010/04/12 11:37

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
主演のヒアム・アッバスさん目当てで見たのですが、感動しました。
さりげない父子の和解シーンは思わず嗚咽。(見たときの気分にもよると思うのですけど。)
ラストも、すばらしかったです。
なんて、何のヒネリもない素直なコメントでした。
ボー
URL
2010/04/11 20:01
ボーさん、こんばんは。

>和解シーン
僕も、じーんとしてしまいました。
泣かせるに人を殺す必要はないですよねえ。

>何のヒネリもない素直なコメント
コメントをするのもなかなか難しいもので、
場合によっては記事より考え込んでしまうことすらあります。
オカピー
2010/04/12 01:13

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「シリアの花嫁」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる