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zoom RSS 映画評「砂の器」

<<   作成日時 : 2010/01/06 13:16   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1974年日本映画 監督・野村芳太郎
ネタバレあり

松本清張の代表的ミステリーを橋本忍と山田洋次が共同で脚色、清張映画でおなじみの野村芳太郎が映像化した大作である。初めて観て以来30年以上も再鑑賞して来ず、実はDVDでも買おうかと思った矢先の、神様仏様WOWOW様である(意味不明ですが、適当に解釈してください)。

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東京蒲田駅操車場で60代の男の殴殺死体が発見され、ベテランの丹波哲郎と若い森田健作両刑事が、遺留品から老人が犯人と推測される若い男と近くのバーに寄ったことを掴み、店で「カメダ云々」という“東北弁”でのやりとりがあったという証言を得る。

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面白いのはこの“東北弁”で話された単語を巡る一連の推理と、犯人が返り血を浴びたはずの白いシャツをどう処分したのか、死んだ老人が何故二日続けて映画館に通ったのかという謎解きだが、白いシャツに関しては偶然に頼りすぎるところがあって不満。また幾つかの謎解き過程が原作に比べて簡略化されているものの、二人の地道な捜査はミステリー映画ファンならまず満足できる面白さと言うべし。

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簡略したのには狙いがあって、原作では僅かに触れられるだけの少年とハンセン氏病の父親がお遍路をする場面を、丹波刑事の想像と回想形式により、少年の成人した姿である作曲家(加藤剛)による演奏会とカットバックしながら延々とおよそ40分間に渡って展開させるのである。21世紀の今日見ると多少大仰に感じないでもないのだが、石川県から島根県まで海沿いを旅する情景の美しさには圧倒される。

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それに加え、加藤剛が作ったことになっている、実際には菅野光亮が作曲した交響詩「宿命」が物語の構成要素であると同時にお遍路の背景音楽としてダイナミックに情感を盛り上げ、父と子の断ち切りがたい“宿命”を観客に強く印象付けていく。映画芸術の粋を集めて構成されたこの40分は日本映画の金字塔と言って間違いない。好みから言えば、僕は原作に由来する推理の面白さの方を評価したいのですけどね。

島田陽子、山口果林、緒形拳、佐分利信、加藤嘉、渥美清、等共演陣も多彩。

東北弁とズーズー弁は違うっちゅう話。

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
「紙ふぶき」「ニュース映像の映画館」
ねっ?・・・偶然・・でしょう〜〜?(笑)

やはり
山田さんと橋本さんのホンの勝利でしょうね。
名脚本家二人の目のつけどころが、日本人の
感性にピタッと呼応したんでしょうね〜。
これ原作がけっこう入り組んでますからね。
でも読み応えありましたね。^^

作家が、これでもかって書き込んだところを
いかにわかりやすくビジュアル的に大衆を
感動させるか・・・それはきっとスリリングな
脚本家としての腕の見せ所であり映画的プラン
だったと思いますよ〜〜〜(^ ^)
vivajiji
URL
2010/01/06 15:00
見ごたえありました 時代を感じさせますが
その重厚さがまたいい味です
お遍路のシーンはよかったです
最近ドラマで中居君主演で放映されましたが 
当たり前ながら作られた時代の違いもそのまま出ていましたね
カズ
2010/01/06 20:11
こんばんは(^-^*)/。私もこの映画は大好きです。石川県で仕事をする機会があり、この映画に出て来る地域を訪れようとしましたら、架空の住所だったのにはがっかりしました(>_<)。DVDを借りると、予告編が入っていて「石川県〇〇市で撮影開始」とか出るんですよ(^O^)。日本の四季表現も素晴らしかったですね。
アウトバックダブルアール
2010/01/06 22:08
vivajijiさん、こんばんは。

>紙ふぶき
きっかけが弱いですよね。
刑事がたまたまコラムで見つける・・・これが犯人と結びつくのはさすがに。

>日本人の感性
良くも悪しくも。
原作に近いバランスでも違った意味で傑作になったのではないかと思いますが、わが国にはテーマ性・メッセージ性を求める評論家や映画ファンが多いですから、それではダメなんでしょうね。

>ビジュアル的に大衆を感動させるか
映画ですから、文学的な部分でいくら感動させても力不足と言われかねないわけで、常連の撮影監督川又昴のカメラが素晴らしく、脚本の卓越した意図を見事に実現していましたね。
オカピー
2010/01/07 01:06
カズさん、こんばんは。

>重厚さ
今の日本の映画は重厚な作品はまずないです。
「北の零年」なんて大作らしく作ろうと努力していますが、空回りしている感じでした。

>中居君
終盤だけ少し観ました。
ふーむ、TVドラマはビデオ撮影という時点が余り観る気が起らないんですよ。
尤も最近は映画もHD撮影が殆どで、フィルムに定着させて初めて若干ニュアンスが出てくるわけですが。

普段バラエティに出ている人が大真面目な映画やTVドラマに出ると人情としてやはりマイナス面は否めませんかね。
オカピー
2010/01/07 01:36
アウトバックダブルアールさん、初めまして。

>石川県
友達が石川にいますので、北陸が良く出てくる清張さんの映画を観ていると懐かしくなります。

>架空の地名
日本ではどうしても固有名詞は本当のものをなかなか使えないという精神性があるようですね。
しかし、撮影した場所に行くのも楽しいでしょう。^^

>四季表現
お遍路は長い旅だったんですね。
フォトジェニックな撮影に陶然としました。
オカピー
2010/01/07 01:44
本作は数年前にデジタル・リマスター版上映で劇場で再鑑賞する機会がありました。「山猫」もリマスター版で観たけど、デジタルリマスター版って冒頭はどうしても映像の明るさとかくっきりさに違和感を持ってしまい、作品そのものが軽くなってしまうような印象をもってしまう。観始めるとそんなのも吹っ飛んで映像に見入ってしまうんですけどね。
これは「ゼロの焦点」もあわせ原作も地図、時刻表、訛り、風土といった要素も面白く夢中になって読んだ記憶があります。ローカル線の駅、寒々とした日本海沿岸、戦後日本の高度経済成長に隠れた陰の部分を強烈に感じさせる作品でもあるでしょうね。それから今では喪われつつある里山がみせる美しい景色。
>映画芸術の粋を集めて構成されたこの40分は日本映画の金字塔と言って間違いない
彼は今父親と会っているんだ。音楽の中でしか父親と会えないんだ。そう言った丹波哲郎扮する刑事の胸に去来する思い。「宿命」という曲に托した英男少年が断ち切ろうとした父から自分へと受け継がれた血。それでも経ちがたい宿命ともいうべき絆。「部落」「在日」という言葉とともに「癩」という言葉もまた日本人の意識の中にどれほどの重さだったのか。
数年前に舞台を現代に置き換えてTVドラマ化されたけれど、まことにお寒い限りでした。「ゼロの焦点」もリメイクされて映画公開されているけれど、松本清張作品に流れるこの時代感覚を抜きにしては作品がはなつ強烈な個性は描き得ないでしょうね。時代とそこに生きる人間の本質を生々しく描いているからこそ時代を超える作品として原作も素晴らしいし、映画もまた素晴らしいんでしょうね。
今回WOWOWで鑑賞していく松本清張作品の感想は、こうやってP様んとこへのコメントで十分だわって気がするわ(笑) どっかでまとめて記事にしたらまたTBもってきますね。
シュエット
2010/01/07 11:39
追記。蛇足ながら。
森田健作ってここでもやっぱり「これが青春だ!」(こんなTVドラマのタイトルでしたよね?…P様と世代が違う?)ばりに下手な演技を熱血ぶりでフォローして演じてましたね。おかしくって。こんなのをみていると、最近の若手俳優のオーバーな、いさかさ感情露出傾向の演技って下手の裏返しなんだなって再認識。
シュエット
2010/01/07 11:43
おしゃられること 同感です 秀作でも出演者 撮影方法で
軽くはなりますね 
日本海側の海岸線は 独特のきれいさ 厳しさ 寂しさを・・・
静かです 某国の工作員が日本人を拉致できるのもわかります
たまたま「水戸黄門」を見ていましたら どっかで見た景色に??
よく釣りに行く京都の丹後半島の間人(たいざ) の海岸をご老公
歩いていました 
カズ
2010/01/07 21:39
シュエットさん、こんにちは。

>デジタル・リマスター
今回のハイビジョン放送はノイズが殆どないところを見ると、そのバージョンだったのでしょうね。
若干黄色が強く出ていましたが(画像は少し修正)、美しい映像でした。

>「ゼロの焦点」
映像作家もそうですが、松本清張氏も「ゼロの焦点」のパンパンをハンセン病患者に置き換えスケールアップして作り直したのが「砂の器」なんでしょうね。
到着点と出発点という違いこそあれ、石川県が絡んでくるのも・・・

>断ちがたい宿命
これはいずれUPする「鬼畜」とも共通しますね。
こちらも福井・石川が最終の舞台。

清張氏の作品は人間の本質を描こうとしていますが、その時代に見ないと解らない若しくはピンと来ない部分もあり、現在リメイクするのは実は非常に冒険なんですね。
「砂の器」ではハンセン病は勿論、原作が書かれた時代のハンセン病に対する認識も織り込んで描かないとならず、背景となる時代を変えようが変えまいが、リメイクは非常に難しいものになる。余程の才能が必要となるでしょう。
却って時代劇の方が大胆に翻案できるから良いような気ます。
最初の映画化で十分と思えるのは、その時代の映画には時代の気分がよく織り込まれているからですね。

>森田健作
いや、僕らの世代ですが、タイトルは「俺は男だ!」です。^^
彼は地と演技が全く変わらないですよね。
知事になっても基本的に小林君のまま。(爆)
「疑惑」にも出ていたなあ。野村監督、案外お気に入りだったのかも。
オカピー
2010/01/08 15:16
カズさん、こんにちは。

友達が石川にいますので、福井の千里浜や東尋坊に行ったことがあります。
確かに寂しく厳しいですね。
清張ものには石川・福井が良く出てきますが、その経験のおかげで感覚が掴みやすいです。

>「水戸黄門」
東野英治郎版でしょうか?
里見浩太朗のバージョンは、余りロケを敢行しないんですよ。
カメラマンだけが行って後で合成したり・・・甚だ興ざめします。
オカピー
2010/01/08 15:26
最近なので 里見浩太郎版です 間人の立岩 後が浜海水浴場の浜です
ここは以前からロケ地として有名です
大きな岩と砂浜ですぐにわかる景色です
東尋坊といえば 友人が記念に撮った写真に幽霊が 海の上を
飛んでる写真が 青白い不気味な顔の・・・・

テレビ版で気になったシーンは お遍路のたびのシーンは
親子連れのお遍路と山で出会って その後お遍路に・・・
想像するにあの親子 服などを奪われているのでしょうね
残酷なシーンのような
カズ
2010/01/08 21:30
カズさん、こんにちは。

>里見浩太郎版
では、評判が悪いので、ロケを敢行したようですね。^^
結構なことです。
何年か前のシーズンで、天橋立が出てきた時に合成だったのにがっかりしたので、よく憶えているんですよ。

>東尋坊
怖いですねえ。
大槻教授なら「あんなもん、光でも入ったんじゃないの」と言うでしょうが。

>テレビ版
は、この映画版が原作になっていると考えた方が良いかもですね。
清張の小説には3行くらいしか旅の模様はないですから。
オカピー
2010/01/09 14:38

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