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zoom RSS 映画評「戦場からの脱出」

<<   作成日時 : 2010/01/23 12:15   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ヴェルナー・ヘルツォーク
ネタバレあり

「アギーレ・神の怒り」「フィツカラルド」で鮮烈な日本デビューを飾ったヴェルナー・ヘルツォークは1990年代不調だったらしいが、近年再び精力的に作り始めているようだ。オムニバス映画「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」に収められた短編ドキュメンタリー以来今世紀僕が観る2本目のヘルツォーク作品は日本劇場未公開の脱走劇である。

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お話はベトナム戦争が北爆により始まる直前の1965年早々、米空軍レンジャー部隊の中尉クリスチャン・ベールが飛行中にラオスのジャングルに墜落、ベトコンの息のかかった農民たちに捉えられ、掘立小屋の収容所に放り込まれ監禁される。そこには先に民間パイロットなど5人の先客がいる。昼間の監視は厳しいが、夜は隙が多い。
 主人公は「こんなところは我慢ならぬ」と軍人らしく知恵を働かし隙を見て奪った釘を利用して手錠を開ける鍵を作り、農民たちの持ち場を確認して作戦を練り、夜には囲いの木をそれと解らないように外しておき、仲間を脱走に誘うがなかなか賛同を得られない。

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というのが前半のお話で、全体の構成の中では緩急の“緩”の部分に当たるわけで、計画立案場面は面白く観られるであろうが、仲間の描写や彼らを誘ってもなかなか応じてくれない様子を繰り返し描く部分は多少退屈感を募らせるかもしれない。しかし、それは作者の計算で、観客が覚えるじりじり感により主人公が心中に湧き上がっているはずのじりじりとした感情がそれを直接描かずとも観客に移入され、その反動で、いざ計画を実行して周囲を気を配りながら逃避行を続ける“急”の部分においてスリルが見た目以上に強く感じられるはずなのである。

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二手に分れて看守たちを攻撃する計画の早々で最初脱走を渋っていたジェレミー・デーヴィスが計画を守らなかった為に主人公ともう一人のスティーヴ・ザーンがピンチに陥る場面も脱獄がすんなり合意に至らない経過を描く前段との整合性があって無理がない。

ジャングルでの逃走だけに敵に見つけられるスリルだけでなくサバイバルものとしての見どころもあり、ウジ虫を食べたり血吸いヒルやらヘビなどと格闘する場面では恐らくヘルツォークに本物を強要されたであろうベールに同情したくなるくらい。

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ジャングルで初志を貫徹する男の執念を描くという点では僕の観た旧作群と共通する内容で、断ち切るような強いタッチで描き上げさすがにパワーに溢れるが、途轍もないスケールの「フィツカラルド」ほど描写に粘りを感じることができないのは脱走劇という性格上やむを得ないであろう。
 ハリウッド調の軽妙な幕切れにもCIA批判が漂い、ただのアメリカ万歳ではないところが興味深い。

リアリズム基調で派手さはないが、日本未公開が勿体ない力作。

地獄のヘルツォーク。

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戦場からの脱出
Rescue Dawn (2006年) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演:クリスチャン・ベイル、スティーブ・ザーン、ジェレミー・デイヴィス ベトナム戦争初期、撃墜され、敵の捕虜となった米空軍兵士の過酷な収容所生活と決死の脱出行を実話に基づいて描いたドラマ。 70〜90年代にベトナム戦争の映画は数多く作られたのに、実話ベースの本作がこれまで作られなかったのは不思議に思う。 牛に引きずられたり、汚水につかされたり、虫を食わされたりの収容所生活や、裸足でジャングルを駈けずり回り、濁流に呑まれ、ヒ... ...続きを見る
Movies 1-800
2010/01/29 21:41
戦場からの脱出
ベトナム戦争が激化する以前に、ベトナムに派兵された男の物語。 実在の人物であるディーター・デングラーの実話に基づいた映画、戦場からの脱出。 日本では劇場公開されてなくて、クリスチャン・ベール主演って事しかわからなかった。 ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
この作品は、たしか大統領候補だったジョン・マケインの体験をもとにした映画ですよね。
公開するのを待っていて、いつの間にか立ち消えになってしまい、ねこのひげの記憶からも消えてましたが・・・
マケインが、大統領になったら公開してやろうと狙っていて、あてがはずれたのかもしれませんね。
ねこのひげ
2010/01/23 19:45
ねこのひげさん、こんばんは。

そうだったかもしれないです。
1年強しか経っていないのに、結構忘れてしまうもんですね。

>大統領になったら
手ぐすね引いて待っていたとまでは言わないまでも、なっていたら公開されていたかもしれませんね。
オカピー
2010/01/24 00:53

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