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zoom RSS 映画評「天城越え」

<<   作成日時 : 2010/01/02 16:24   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1983年日本映画 監督・三村晴彦
ネタバレあり

今月(2009年12月)三本目の松本清張は再鑑賞作品。たった26年前(笑)の作品なので、今でも活躍している役者が多く、その若さに感慨ひとしお。一言で言えば、「伊豆の踊子」のミステリー版である。

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老刑事(渡瀬恒彦)が静岡の小さな印刷業者に印刷を依頼に来るのが発端で、かつて彼が担当した「天城山殺人事件」の調書を印刷するのが目的(但し口実)だが、調書を見た主人(平幹二朗)は驚き、40年前14歳の少年(伊藤洋一)だった頃遭遇した事件を回想する。
 少年は家出を試みて天城越えをするうち若い娼婦(田中裕子)と知り合うが、その直後土工が殺され、彼の証言で娼婦が犯人として挙げられたのである。

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真犯人が少年であることは余程うっかりしていない限りフラッシュバックにより序盤の内に解るはずで、とことん犯人に詰め寄って行く本格推理若しくは倒叙ものの醍醐味は薄い、いや、寧ろ意図的に薄められている。少年が殺人を犯すまでの心理の流れを後半部分でじっくり描く為である。

天衣無縫な娼婦に捧げられた純情を汚す者への怒り。激しい雨の降る中連行される娼婦を見送る少年と見送られる彼女の心の交流...。芽生えたばかりの性欲と少年らしいロマンティシズムが発露し交錯する場面が丹念に積み重ねられ甘酸っぱい情感が醸成されていく。

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一方、主人公が刑事から無罪になりながら獄死したと聞かされたショックで発作を起こす場面は重い。罪の意識の重さである。また、足のサイズによる思い込みにより初動捜査でミスを犯した刑事の悔悟もまた重苦しく、二人の40年間の思いがぶつかり合う終盤の長い場面には胸が締め付けられるような思いがする。天城峠に残された苦いノスタルジーと感傷を粉々に砕くバイクの騒音で幕を閉じる。

三村晴彦の監督デビュー作。演出は丁寧で重厚、新人離れした印象を受けたが、4本ほど作った後何故かTV映画ばかり任され、90年代以降劇場用映画を作ることなく昨年逝去した。

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配役陣では、演技力で妖艶さを醸し出す田中裕子が圧巻。

♪隠しきれない 移り香が〜

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
2010年☆
あけましておめでとうございます!
美麗画像はないんですね?(笑)
十瑠さんのとこもお休みみたいね。^^

ダジャレの和田勉(笑)演出TV版も
年前に観ました。(大谷直子・佐藤慶・
鶴見信吾で)
やはりダントツ田中裕子勝ちでしょう!(^ ^)
彼女は不思議な「艶っぽさ」がたまりません。
本作では特にそれが顕著ですね〜。

三村晴彦さん、湿り気のある画面作る
人でしたが〜・・・お亡くなりに〜(合掌)

清張さんの短編映画化の中でも
「張り込み」と本作は素晴らしいと
私は思いますが。
vivajiji
URL
2010/01/02 18:18
 新年明けまして、おめでとうございます。
去年は体調を崩されて心配いたしましたが、もう回復されているようで、安心しております。のんびりと更新していってくださいね。

 当方はなかなか更新できない日々が続いていますが、なんとかエイゼンシュテインの残りの一本『ストライキ』や黒澤監督関連を記事にしていきたいと思っています。

 今年もよろしくお願いいたします。ではまた!
用心棒
2010/01/03 01:29
vivajijiさん、明けましておめでとうございます。

>美麗画像
いや、時間がないだけで、もう少しお待ちください。
チョー忙しいの。^^;
場合によってはスキップ。その時はご容赦あれ!

>TV版
最近NHKで再放映されていたような。

>不思議な「艶っぽさ」
田中裕子の演技力ですね。
そういうタイプの女優ではないのに、白粉の匂いを感じさせるような演技をしますよね。仰るように本作なんか絶品です。

>「張り込み」
大昔に観ましたが、忘れちゃったなあ。ごめんなさい。
そのうちまた観ますよ。
年末年始は清張づけになっちゃっています。
オカピー
2010/01/03 01:53
用心棒さん、新年明けましておめでとうございます。

>体調
頭は使っても大丈夫な病気なので、ぼつぼつやっております。
家の事情で今年は多少鑑賞本数が減るのではないかと思いますが、ブログは問題なく続けられます。

>エイゼンシュテイン
ふーむ、当方、ブログではまだ扱っていませんよ。
ちゃんと書きたいけれど、余りに古典なのでちょっと億劫になっちゃう。(笑)

>黒澤監督関連記事
よろしゅう頼んます。<(_ _)>

こちらこそ宜しくお願い致します。
オカピー
2010/01/03 18:22
プロフェッサー、明けましておめでとうございます。

この作品、懐かしいですね。
何度か鑑賞した作品ですが、かなり前ですので詳細は・・・。

ただ、どっぷりとその世界に入り込んだのと、足のサイズ、思いこみからその可能性というか、真実を見つけ出した展開は強く印象にあります。

再見したい1本です。

それでは、最近は映画記事が少ない私ですが、本年もどうかよろしくお願い板hします。
イエローストーン
2010/01/05 10:07
イエローストーンさん、明けましておめでとうございます。

僕は公開時に観て以来久しぶりでした。

>足のサイズ
一種の倒叙もので、僕らは足のサイズについての秘密は解っていますから、あの氷小屋(?)でミスを犯す一幕は印象的です。
少年犯罪ですし、時効もあるので、刑事事件ととしては意味がないのに刑事は印刷所まで足を運ぶわけですね。ふーむ、面白い(福山雅治の真似のつもり)。

>映画記事
たまに遊びに来て戴ければ結構ですよ。

こちらこそ本年も宜しくお願い致します。
オカピー
2010/01/05 23:15
5日から仕事始めで、ようように通常モードを取戻しつつあるシュエットです。
だもんで、早々とご挨拶を頂きながら、私めの新年の挨拶が遅くなりまして(フニャっ!)
松本清張作品もみんなが帰った3日の夜からじっくりゆっくり見れた次第。こういう重くて深みと厚みのある、映画らしい映画作品をみると、本当にゆっくりとした気分で、やっと正月休みって気がしました。
>芽生えたばかりの性欲と少年らしいロマンティシズムが発露し交錯する場面が丹念に積み重ねられ甘酸っぱい情感が醸成されていく。
いやぁ、上手いですよね。それと母の中の女。穢されることに対する大人の男たちへの憎しみ。いい仕事してますよね。
動機はなんだったんでしょうね? そんな質問にもあえて説明的な描写もなく、握り締めたお守りの中にあったマッチ箱。
やっぱり清張は「時代」そのものを、時代が背負っている感情みたいなものを強烈に作品で描いてますよね。そんなことを今回のwowow特集で松本清張作品を再鑑賞していて、改めて思いました。2.30年前は原作も映画も、ミステリー的な部分も面白くって夢中で読んだし観たけれど、それでもそれ以上に強烈に惹かれるものを感じたのは、強烈に描かれた時代感覚なんだろうなって改めて思いました。
それから田中裕子の素晴らしさに加え、本作の少年といい、「鬼畜」の少年といい、「砂の器」の少年といい、子役の少年たちもいい演技してますよね。じっと大人を見詰めるときの演技なんて、クローズアップに耐えてますものね。

シュエット
2010/01/07 10:52
Pさま 長くなりました。
>天城峠に残された苦いノスタルジーと感傷を粉々に砕くバイクの騒音で幕を閉じる。
再鑑賞してみると、このラストシーンがさらに印象的だった。公開された時には、この映画の醸し出す情緒を受け止める感覚が残っていた時代から、確実に時代も邦画も変わってったって、そんな現代という時代を象徴するようなシーン。
続いて他の清張作品もコメント入れさせていただきますね。

最後になりました。
今年も宜しくお願いいたします。
一つでも多くP様にTBとコメントを入れられますように!
私めにはTBオンリーで十分ですよ。今年もお気遣いなく、お願いいたします。
シュエット
2010/01/07 10:54
シュエットさん、こんばんは。

>動機
自分の経験からして、14歳くらいの男は性欲が芽生える一方で、女性とりわけ母親に対して依然神聖な思いを持っていて、その二つが拮抗する年齢です。
それから推測するに、恐らく土工への行為は母親に対する叔父さんへの行為の代償になっていたかも知れませんなあ。

>時代
それが問題でもありましてね。
時代を写し取るような精緻な描写がありますから、リメイクなどする時は脚本家はきちんとその辺を考えないといけませんよね。
背景となる時代を変える場合は、本筋との関係をきちんと測り直さなければいけないし、そのままの場合でも現在の観客に解るように作る必要があるはずで、現在公開中の「ゼロの焦点」はその辺りをどうやっているのか・・・僕が見るのは来年の春先くらいになりそうですけど。

>ラストシーン
実はフェリーニのローマ」のラストシーンがバイクの走行で、「このシーンの意味は何じゃろう」と友達と話し合ったことがありますが、あれもフェリーニの少年時代のお話がメインですから、やはり本作と同じ効果を狙ったものになりましょうか。
そうすると、脚色もした三村監督が「フェリーニのローマ」から拝借したのかもしれませんね。

こちらこそ今年も宜しくお願い致します。
オカピー
2010/01/08 01:20
再鑑賞してみて、今回はとりわけ大人の世界をじっとみつめる子供の視線が痛いなって、それがとても印象的な鑑賞でした。「天城越え」「鬼畜」「砂の器」の3本をそんな印象から感想を書いたのでTBしますね。
シュエット
2010/01/09 07:23
シュエットさん、こんばんは。

>大人の世界をじっとみつめる子供の視線
今の子供は心が汚れるのが早い(笑)ので、十歳くらいまでではないとお話にならないかも、などと昔の子供たちを観て思っちゃいましたなあ。

いずれにしても、清張の映像化作品を続けて観ると、舞台となる土地とか、主題やモチーフといったところで、相互に関連性が高いのを思い知らされましたよ。
続けて観る効果ですね。
オカピー
2010/01/09 18:33
こんなお喋りしにきてよかったかしら?
今日29日から公開のピーター・ジャクソン監督の「ラブリーボーン」。殺された14歳の少女の視点から両親や犯人の人生、そして自分自身の死をみつめるという映画、観にいくつもりなんだけど、14歳の少女役には「つぐない」で13歳のブライオニー役を演じたシアーシャ・ローナン。それで覆いだしたのだけれど、「つぐない」も13歳という多感な少女の、純で一途な思い、一途さゆえの残酷さが、その後の彼らの人生を狂わせたともいえる物語。13歳のブライオニーと「天城越え」の14歳の少年。多感な年齢のこの一途さが物語の始まり。二つの作品って重なるなぁ。
感受性の強い透明感のあるブライオニーをみせてくれたシアーシャ・ローナンが本作では14.5歳。彼女の成長もみれるのも楽しみ。
なかなかいい作品みたいです。
シュエット
2010/01/29 15:11
シュエットさん、こんばんは。

現在忙殺されている為にレスがすぐに出来ない場合がありますけど、ご遠慮なく遊びにいらして下さい。

>「ラブリーボーン」
いきなりびっくりしましたけど、思春期初めの主人公という共通点があるわけですね。
ピーター・ジャクソンは「ロード・オブ・ザ・リング」以降の安定した仕事ぶりを示している天才監督だし、シアーシャ・ローナンも「つぐない」でのセンシティヴな演技が印象的だっただけに、相当期待できそうですね。
まあ、僕は映画館では観ないのだろうけど。^^;
オカピー
2010/01/30 01:20

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