プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

help RSS 映画評「ブタがいた教室」

<<   作成日時 : 2009/12/09 14:05   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 5 / コメント 2

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・前田哲
ネタバレあり

甘利はるななど「コドモのコドモ」と共通する子役たちがチラホラする学園ドラマ。実際にあったお話をベースにしているだけに「コドモのコドモ」より問題作かもしれない。

ある小学校で6年を担当する若手教師(妻夫木聡)が子供たちに「ブタを育てて最後に食べることにします」という妙な提案をし、校長(原田美枝子)の承諾を得た上で校庭で飼うことにするが、当然のように愛着の湧く生徒も多く出てきて、26人の生徒の意見が「下級生に引き継いで育てて貰う」と「食べる→食肉センターへ送る」派とで綺麗に二分された為に最終的には教師が判断を下すことになる。

語弊があるが映画としては退屈しないで観られる。子供たちの討議も実に充実して、意見の近い生徒には拍手を送りたくなる。当初は観念的な意見も段々奥が深くなって立派なものになっていく。

しかし、映画では、まして小学校を舞台にするならなおさら、後味が大事である。本作の後味は良いかと言えば、僕は決して良くないと思う。この教師の目的は恐らく食料になって行く生命の尊厳を知り、食べ物を大事にする気持ちを養っていこうということであり、その点で「いのちの食べかた」を思い起こさせる。あのドキュメンタリーも作品としては立派だったが、見た目が殺伐としている為に後味が悪かった。

本作の後味の悪さは、最終的に生徒にこうした苦悩やジレンマが生じるというのを解っていた上で(教師は「名前は付けないほうが良い」と事前に言っている)行われたこのプログラムは生徒に対して過酷すぎるという考えから生まれるものである。子供たちが名前を付けた時点で先生が連れてきた子ブタは事実上のペットになって差別化が行われ、一般名詞「ブタ」とはかけ離れた存在になる。

小学生ではこの辺りに深い認識があるはずもなく、「食べない」派は生命自然消滅論を唱え、「食べる」派は責任論をうち立てる。しかし、ペットにした以上、最後まで面倒を見る=食べる=責任を果たすといった理屈は乱暴。そもそもブタだから食べなければならないという理屈はない。実際的に考えれば、生徒が名前を付けた段階で教師は企画をキャンセルすべきだったろう。生命の尊厳と食料の大事さとは本来別次元のものと思われる。
 結果的に真剣な良い議論が出来て子供たちが成長した(かもしれない)ことと、このプログラムが良かったか否かもまた別問題である。

後味はともかく、子供たちの演技は立派で、特に討論での迫真ぶりから、生徒に扮した子役が生の声を出しているにちがいないと推測しながら観ていた。案の定、本作に関する記事などを読むと、子役たちには真っ白な脚本が渡されたと書かれている。が、それを完全には信用することはできない。恐らく13人は「食べる」賛成側、13人は反対側という程度の割り当てをした上でその立場になって考えさせ意見させた結果ではないだろうか。
 僕は即興演出については概ね否定的だが、本作のような本格的討論場面では効果があると解ったことは収獲。

「陽のあたる教室」のほうが良いです。

テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『ブタがいた教室』
□作品オフィシャルサイト 「ブタがいた教室」□監督 前田哲 □脚本 小林弘利 □キャスト 妻夫木 聡、大杉 漣、田畑智子、池田成志、原田美枝子、ピエール瀧、戸田菜穂、伊藤奈月、大和田結衣■鑑賞日 11月1日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>   命の長さは誰が決めるの? ある大阪の小学校の新任教師が、生徒たちに1年間みんなで育てたブタを食べるかどうかで議論しながら、子供たちが自身が自主的に結論をどう出すのかを追っていく。 何度も何度もディスカッショ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2009/12/09 17:17
mini review 09365「ブタがいた教室」★★★★★★★☆☆☆
ドキュメンタリーとしてテレビ放映され話題を呼んだ、大阪の小学校の新任教師による実践教育を基に映画化した感動作。1年間大切に育ててきたブタを食べるかどうかで大論争を巻き起こす子どもたちの、うそ偽りのない表情にカメラが肉迫する。『涙そうそう』の妻夫木聡が教師役に初挑戦し、子どもたちと素晴らしいコラボレーションをみせる。大切な命をどうするかという結論を自らの力で出そうとする生徒たちの姿勢が、痛いほどダイレクトに伝わり心打たれる。[もっと詳しく] ...続きを見る
サーカスな日々
2009/12/09 18:56
ブタがいた教室/妻夫木聡
この映画は絶対観たいと思ってたんですよね。もう10年くらい前になるのかな?この映画のもとになった出来事、大阪の小学校であるクラスで行われた「豚を飼育して食べる」という実践教育の様子を取材したドキュメンタリーを私はとても強い関心を持って見続けていました。 ...続きを見る
カノンな日々
2009/12/09 21:50
ブタがいた教室
“いのち”の長さは 誰が決めるの? 製作年度 2008年 上映時間 109分 原作 黒田恭史 『豚のPちゃんと32人の小学生』(ミネルヴァ書房刊) 監督 前田哲 音楽 吉岡聖治 出演 妻夫木聡/大杉漣/田畑智子/池田成志/ピエール瀧/大沢逸美/戸田菜穂/原田美枝子 ...続きを見る
to Heart
2009/12/09 22:24
ブタがいた教室(映画館)
本当に食べるの? ...続きを見る
ひるめし。
2009/12/13 21:02

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
僕はこのモデルとなった新人教師の指南役にあたる女性教師に批判的です。
この新人教師は、なかなか自分なりに考えているようだし、映画としての妻夫木君は、なかなかいい表情をしていたと思います。
kimion20002000
URL
2009/12/09 19:00
kimion20002000さん、こんばんは。

>女性教師
読ませて戴きましたが、彼女の指導はどうかと思いました。
動物の捌き方を知ってどうなるものでもないでしょうに。
それとの比較ではしっかりした考えのようには思いますね。

しかし、個人的には提案された時点で僕なら承知しないでしょう。
僕なんか蝿さえ殺せない人間ですから、一度でも世話をしたブタを殺したり、食べるといった発想すらできませんねえ。TT
オカピー
2009/12/10 01:12

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「ブタがいた教室」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]