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zoom RSS 映画評「ショックプルーフ」

<<   作成日時 : 2009/11/03 13:41   >>

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☆☆(4点/10点満点中)
1949年アメリカ映画 監督ダグラス・サーク
ネタバレあり

いつ頃からか50年代のメロドラマ監督ダグラス・サークが持ち上げられ、「エデンより彼方に」というオマージュ作品まで作られた。僕はさほど評価していないが、映像感覚に認めたい部分はある。本作で言えばヒロインが被る帽子や飛行機の便名リストといった小道具で前後のシーンを繋いだり、パンやディゾルブ、フェードといった手法を駆使して展開をなめらかな感じにしているのは(当時としては平均レベルかもしれないが)悪くない。

が、以下に概略するお話はお粗末すぎる。と言うより人物像の構築が手抜きでお話になっていない感じがする。

殺人を犯したパトリシア・ナイトが仮釈放されて保護観察官コーネル・ワイルドのお世話になる。
 保護観察の期間は2年で、その間は圏内から出ることは勿論、付き合う人間も限定され、結婚も認められない。彼女には5年越しの恋人ジョン・バラグリーがいて何とか西海岸へ彼女を逃そうとするが、彼女の根が善良であると信じるワイルドはそれを阻止して自分の盲目の母親の面倒を見させるうちに彼女を愛するようになり、バラグリーの親切が計算ずくであることに気付いた彼女もその愛情に応える。
 規則を破って結婚した彼はパトリシアがバラグリーを射殺したと知り、米国南部を逃避行の旅に出るが、新聞報道の為に袋小路に追い込まれてしまう。

というお話で、仮釈放中の規則をモチーフにしたアイデアは悪くないが、主人公の監察官としての心構えがなっていない。愛する女性の為とは言え2年程度の年月を待てないとは何事ぞ(笑)。もっと切羽詰まった状況を用意しなければ映画としてのリアリティーを欠く。
 ヒロインにしても、出所を待ってくれた恩人(と信ずべき男)とは言え、監察官に注意されたそばから勝手な行動を取るのは、主人公を人間的に魅了する女性としては些か慎みがなさすぎて説得力がない。もう少し我慢する描写を入れてバラグリーに強制されるような印象を持たせられれば不自然な感じがなくなっただろう。

作者を弁護すれば、81分という上映時間では納得できる性格描写はなかなか難しいという事実がある。

しかし、一番がっかりさせられるのはデウス・エクス・マキナの典型と言うべき幕切れ。二人が万策尽きて自首すると、死んだと思われたバラグリーが怪我で済んでいて(真相通り)「事故だった」と告白、彼女の逃走も「監察官随行」ということになってお咎めなし。罰則に値する結婚も突き止められることはないのだから、些か調子が良すぎて馬鹿らしくなる。逃走中のうらぶれたムードは良いのだが。

という次第で、フィルム・ノワールというにもセミ・ドキュメンタリーというにもハードボイルドさに欠け、サーク得意のメロドラマの良い部分も余り出ていない。

初めて観るパトリシア・ナイトはなかなかのファム・ファタールぶりで収穫。「めまい」のキム・ノヴァクよろしく金髪と黒髪の二仕様が楽しめる。

髪染めのCMみたい。

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「ショックプルーフ」
週末にまとめて見た劇場未公開・初放送のフィルム・ノワール3本のなかでは、いちばん好き。 女優にスター性があって、映画の中での存在感が... ...続きを見る
或る日の出来事
2009/11/04 23:39

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この作品だけは、なぜか録画し忘れていて悔しがったけど、でも4点なので、まぁいいかって納得。これがP様評価が7点くらいだったら地団駄踏んでたでしょうね。作品紹介のかぎりではなかなかに面白そうだと思ったんですけどねぇ。
シュエット
2009/11/04 11:29
シュエットさん、こんばんは。

フィルムノワールとの紹介ですが、実際にはメロドラマ。
女性のタイプはフィルムノワールなのに、作者の心意気がハードボイルドではなくメロドラマなので、作者が何を作りたかったのかなと不満が残ったわけですね。
人物の性格設計も何だか変な感じがしました。僕の機嫌が悪かったのかもしれませんが(笑)。
オカピー
2009/11/04 20:22
批判にショックを受けないように、ご忠告どおり、ショックプルーフ(耐衝撃)仕様で参上しました。(笑)
パトリシア・ナイト嬢については、OKみたいですね!(やった!)
たしかに、メロドラマ臭が強くなっていました。
ラストを弁護すれば、映画会社が勝手に変えた、ということらしく。。。
いまどきだったら、監督が「完全版」を作り直したりして?
ストーリーは構成が甘いですが(ここに書かれていることとか、自分の家で雇っちゃうとか…)、私はあまり気にならなかったというか、それ以上に雰囲気が好きだったんですね。
ボー
URL
2009/11/04 23:54
ボーさん、こんばんは。

いやあ、ボーさんが良い感触らしかったので、ちょっと書きにくかったのですが、頑張りました。(笑)

>パトリシア・ナイト嬢
雰囲気がありました。
今回のフィルムノワール未公開映画の中では、一番のファム・ファタールでしたね。というか、他の二作はその類の女性が出ていなかったというのが正解。

>ラスト
当時ハリウッドで編集権を持っていた監督は一握りだったらしく、勿論ダグラス・サークは職業監督に過ぎなかったわけですから、どうにもならなかったのでしょうね。

>雰囲気
なかなか良かった。
だからなおのこと、人物の性格が観客に納得できるように脚本が書かれていたなら、良いメロドラマになったのではないかと思いますですね。
オカピー
2009/11/05 14:35

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