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zoom RSS 映画評「静かなアメリカ人」

<<   作成日時 : 2009/11/17 15:41   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
ネタバレあり

米国人ジョセフ・L・マンキーウィッツが、発表直後に作者グレアム・グリーン(英国)の米国への入国を禁止する結果をもたらした同名小説を映画化したもの。原作を読んでいないので正確なことは言えないが、ひねくれた映画化らしい。

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1950年代初め仏領インドシナ、ベトナム人の女性ジョージア・モールと恋仲になっている英国の中年新聞記者マイケル・レッドグレーヴがアメリカの救援物質班員オーディー・マーフィーと知り合うが、彼女が彼と親しくなったのをやっかみ、離婚できないのに「できそう」と嘘をついた為に却って彼女を若者に走らせることになる。潜在的な意識から若いアメリカ人を亡き者にしようというインドシナ共産軍の企てに参画してしまい、妻が離婚に賛同したにも拘らず勿論彼女を気持ちを取り戻すことはできない。

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フランスを援助するアメリカを批判的に扱った為アメリカがグリーンの入国を禁止した原因となった小説なのに、神も何も信じないイギリス人がつまらぬ嫉妬の為に無実かもしれないアメリカ人を殺すという180度逆の英国人を悪者にする内容に作り変えられている。
 原作が色々と変えられるのは当たり前のことだが、自国の悪口を言った英国人の小説を使って英国の悪口を言うとは何とも大人げない。

それでもお話に興趣があれば構わないが、実際には面白くなったり面白くなくなったりの繰り返しである。

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その原因は、主人公である傍観者たる英国人を通してベトナムにおけるアメリカの暗躍を批判するという目的があったものを、アメリカ青年の行動を敢えてぼかすことで、主人公を傍観者から批判――それもメロドラマ的なレベルでの批判――の対象にし、暗躍するアメリカ青年をテロ活動を疑われる無辜の犠牲者にした変更にあると推測される。変えるべきところを変えずに主題を変えればどうしても無理が出て来る。その無理を除いて残るのは米国青年の純情に負けた英国中年紳士の卑劣さのみ。これでは、格調は高いが、メロドラマと言われても仕方がない。
 しかし、アメリカの暗躍が顕在化したベトナム戦争を経た今だからこそ、本作が表に出さなかった世界の警察を自認するアメリカ人の考え方が作品に沈潜しているのを感じ取れるのも確かである。

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THE QUIET AMERICAN「静かなアメリカ人」〜「愛の落日」
「静かなアメリカ人」 THE QUIET AMERICAN 1958年/アメリカ/120分 監督: ジョセフ・L・マンキウィッツ 脚本: ジョセフ・L・マンキウィッツ 撮影: ロバート・クラスカー 音楽: マリオ・ナシンベーネ 出演: オーディ・マーフィ/マイケル・レッドグレーヴ/谷洋子/クロード・ドーファン/ジョルジア・モール/ブルース・キャボット イギリスの作家グレアム・グリーンの小説「The Quiet American(邦題:おとなしいアメリカ人)」の映画化。 ... ...続きを見る
寄り道カフェ
2009/11/24 13:25
「静かなアメリカ人」
さすがにグレアム・グリーンの原作だけあるというべきか。人間を描こうとしているドラマ。 ...続きを見る
或る日の出来事
2009/12/16 23:17

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございました。
この作品は今回初めての鑑賞。その前に2度目の、原作に忠実に映画化したという『愛の落日」という、こちらはまたもろメロドラマ風の邦題をつけられて、邦題つけた人は、原作テーマなど読み取らずに絵だけみてつけたような…。
一度きりの鑑賞なのですが、映画の感想はとなると、言いたい事は判るんだけど、フレイザーのベトナムでの動きが今ひとつ弱くって、というかこういう画策は無きにしも非ずで、そこだけが浮き上がって、かえってベトナム女性をめぐるブレイザーとケインの三角関係がめだって、錚々たる製作陣の割にはこじんまりまとまった、なんだ〜って印象。すっごいメロドラマでありながら、それでいて国家絡みの企業の陰謀を描いたジョン・ル・カレの原作、フェルナンド・メイレレス監督の「ナイロビの蜂」はあそこまで描ききっているのはやっぱり凄いなって思う。企業の陰謀は重々知っているけれど、その怖さやエゴが生々しく描かれていたし…。
とまぁ、こんな「愛の落日」の印象だったから、初映画化作品のこっちの方が、国家に置き換えてみたら…って思わせるセリフが随所にあって、やっぱり面白かったわ。
シュエット
2009/11/25 11:11
確かにアメリカ青年の描写が曖昧だけど、正論ぶつアメリカ青年と、アメリカ意味たちの自由を守るとかなんとかって大義名分掲げてベトナムや中東へのお節介しにいった姿と重なって面白かったわ。イギリスとかフランスとかのかつての大国とその属国、そして自由と独立の大義名分でしゃしゃり出るアメリカ。この三者の構図がセリフなんかでまざまざと描かれているわって思うと、こっちの方が面白かったわ。グリーンの入国拒否なんか考えると、58年という時代では、世論も反戦の意識とはほど遠く、アメリカ国民はまだまだ無邪気で素直にアメリカの正義を信じていた時なんじゃないかな?。『ディアハンター」なんかでも従軍する彼らは高揚していたはず。
だからこういう描き方になったのかな?って贔屓目。
もっと描けるべきはずの『愛の落日」に比べたら、私はこっちが面白いわ。
シュエット
2009/11/25 11:11
シュエットさん、こんばんは。

「愛の落日」は観ていないので何とも言えませんが、過去の作品から判断してフィリップ・ノイスは甘いところがあるので、甘さのある作品になっているかもしれませんね。

>アメリカ国民はまだまだ無邪気
だったでしょうね。
だからこそ、作者を入国禁止にした当時国がその原作を買い、なおかつ、アメリカ人の正体を曖昧にしたことにより、製作の狙いが「英国への復讐」と理解されても仕方がないところがあって、額面通りに受け取って良いのかという疑問が出てくるんですね。

いずれにしても、今観るとその曖昧なところがちょっと意味深長に感じられるところもあるわけで、僕は割り引いて☆★を付けました。
いつか原作を読んでもっと正確に検討してみたいな。

>「ナイロビの蜂」
そうでしたねえ。
ル・カレの世界はああした男女の関係と社会構造とを上手く絡み合せているようですが、あの作品はうまく映像化していましたね。
オカピー
2009/11/25 22:39
こんばんは。
「静かな」アメリカ人というのは、原作では皮肉があったのですね。
映画を見る限りでは、アメリカ批判には気づかないかもしれません。あ、恋敵が偶然アメリカ人だったんだ、とか。
やっぱりアメリカ映画ですね。
戦争の英雄オーディ・マーフィを演技者に持ってきたこと、深読みすれば何かあったりして?
ボー
URL
2009/12/16 23:34
ボーさん、こんばんは。

>「静かな」
大いなる皮肉です。つまり、暗躍を指すわけですね。

>アメリカ批判
映画ではアメリカ批判どころかイギリス批判になっていますよ(笑)。完全にイギリス人のジャーナリストが悪者で、勧善懲悪で終わっていますから。

>オーディ・マーフィ
深読みできますね。僕の尊敬する双葉十三郎氏も「彼はアメリカそのもののように感じられ、ちょっと面白い」と仰っています。
オカピー
2009/12/17 00:40

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