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<<   作成日時 : 2008/07/27 16:57   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督トッド・フィールド
ネタバレあり

「イン・ザ・ベッドルーム」で本業が俳優とも思えない抑制した素晴らしい演出を披露したトッド・フィールドの新作だが、語り口が益々巧みになり、またまた驚いた。俳優を廃業して監督に専念しても良いだけの実力を既に身に付けている。原作はトム・ペロッタの小説で、彼自身がフィールドと共に共同脚色。

ボストン郊外、幼児性愛犯罪の前歴のあるジャッキー・アール・ヘイリーが出所した為子供の多いこの地区では大騒ぎになり、彼に嫌がらせをすることで、無実の少年を射殺した過去の失敗の帳尻を合わせようとする元警官ノア・エメリックが絡んで大きな傍流をなす。

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翻って本流。
 夫グレッグ・エデルマンとの間に設けた3歳の娘と公園デビューしたばかりの主婦ケイト・ウィンスレットはどうも他の3人の主婦とはそりが合わず、主婦らが“プロム・キング”と噂する若い父親パトリック・ウィルスンに近づくチャンスに恵まれ互いに好感を得た時、彼女らを驚かす為に示し合わせてキスをする。
 言わば“演出”であるが、これが契機になって彼女に閉塞した現状から脱出したいという自我の芽が頭をもたげ始める。

つまり、本作の中でも紹介されるフローベール「ボヴァリー夫人」を意図的にオーヴァーラップさせる展開なので、予想通り、夫の珍妙な自慰場面に幻滅した彼女が3回目の司法試験を前に委縮しているウィルスンと新しい世界に飛び出そうとする経緯は似たような展開であるものの、現代のボヴァリー夫人は自殺などはしない。ここからが上手い。

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ヒロインが愛人のやって来るのを娘と待っているところへ老母を失ったヘイリーが泣きながら通りかかる。最初は怖がるものの余りの嘆きように慰めようと接近する。その間に娘が消える。慌てて探し回り路上に娘を発見した彼女はそのまま車に乗せて帰宅する。一連のショックが彼女を現実に引き戻すのである。
 傍流が本流にしっかりと交わるタイミングが絶妙。そうして作者は「過去は変えられない。しかし、現実から逃避せずとも未来を変えることはできますよ」と述べ幕を下ろす。

さて、「リトル・チルドレン」というタイトルで、かつ幼児性愛者が出てくるのは読者若しくは観客をミスリードする作者のなかなか巧みに計算した作戦であって、実はこの“子供たち”はヘイリーを筆頭に本作に出てくる神妙な顔つきの大人たちを指す。
 ヒロインも“プロム・キング”も、ヘイリーに嫌がらせをし続ける元警官も、生意気なことを言っても「ベビーシートは嫌」と駄々をこねる3歳児とまるで変わらず、色々な事件を通し葛藤の末に成長するであろうと希望を託すのである。

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細かな点では多少の疑問がある。ケイト“ボヴァリー夫人”ウィンスレットの行動はよく理解できるが、美貌で有能な妻ジェニファー・コネリーに特に何の問題もないウィルスン青年の行動は疑問符が付く。少なくとも僕には理解できない。その彼が待ち合わせの途中でスケートボードに挑戦するのもタイミング的にご都合主義的と言わざるを得ない。

本作のテーマとは直接関係ないが、前科のある人間の扱いは実に難しい。人の心は結局は読めないからである。

「リトル・チルドレン」と言えば、ビリー・J・クレイマー&ダコタス。分るかな。分んねえだろうなあ。

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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
こっちはTB持参でお邪魔です。
のっけにベルの暑さにばてた写真が登場しております。
こういうテーマって、まさに自由主義、個人主義が尊重されてきた戦後社会の映画といえるでしょうね。私自身も含めて…。
ウィルスンみたいに自立できてない大人も多いでしょう。親に代わって妻のジェニファー・コネリが彼を保護管理している構図。妻は愛情からなんだけど、それが彼を管理している。彼も鬱屈しているけれど反論できない。そんなフラストレーションをケイトとの恋愛で自分を誤魔化して、逃げている。スケボーのシーンも私は受け止められたけど…。
戦争を知らない世代の弱さと甘えをまざまざと見せつけられ、作品的にも感傷的にはならず見応えありました。
ただ、さっさと席をたつ人も多く、どれだけこの映画のテーマを真摯に受け止められているのかなって思いもしました。
>ビリー・J・クレイマー&ダコタス
分かんねえけど、「リトル・チルドレン」っていうタイトルの曲あるんですか?(あほな質問してる?)
シュエット
2008/07/27 18:58
>特に何の問題もないウィルスン青年・・
そうですか〜?プロフェッサー。^^
彼は大いに問題あり〜〜ですよ。

>少なくとも僕には理解できない。
うわ〜〜〜、困った〜(爆!)
男と女の間には〜〜深くて暗い川があ〜る♪^^

>タイミング的にご都合主義的と言わざるを得ない。
そうかしら〜ん?
スケボーやってる子供と大して変んないって
ことを表していると思いましたが。
陥穽ってこんな日常のどんなところにも
ポッカリ、口を開けてますよ、って
作り手は言いたいんじゃないのかな〜。

>ビリー・J・クレイマー&ダコタス

「リトル・チルドレン」♪は記憶にありませんが
B・エプスタインと関連あったグループでしょ?
「火の玉ロック Great Ball Of Fire」♪を
カバーしてらした?
あの曲はジェリー・リー・ルイスのほうが
先だったかしら。
viva jiji
URL
2008/07/27 21:06
シュエットさん、こんばんは。

朝から晩まで雷とにらめっこの(つまりパソコンが使えない)為余り推敲できずに「えいやっ」でやっつけた不都合が多い記事になりました。

>妻のジェニファー・コネリが彼を保護管理
まあそういうことなんでしょうけど、言わば、過保護な親からの束縛から逃げようとしている図か。いずれにしても、我がままの域を出ない。確かに題名にはふさわしい坊ちゃんですね。

>スケボーのシーン
彼がケイトと無関係なら別に文句なし。
しかし、駆け落ちする瞬間に怪我をする可能性があることに挑戦するということは、彼の心理を無視した場合、ご都合主義的。わざわざあのタイミングでする必要はないと思います。しかも、ケイト自身は既に引き返しているから、劇の構成としては【屋上屋を重ねる】展開となっています。
双葉塾の生徒としてはこれはかなり不満です。

彼の心理を推察すれば、つまり、あそこでスケボーに気を取られるようでは、本気で駆け落ちする気はなかったということになりますね。
オカピー
2008/07/28 00:59
続きます(どうでも良い内容です)。

>「リトル・チルドレン」っていうタイトルの曲
姐さんも記憶にないというからそんな有名でもないでしょ。
ダコタスは、マージービート即ちビートルズ初期世代の英国の軽量級バンドです。
オカピー
2008/07/28 01:03
viva jijiさん、こんばんは〜。

今日は一日中雷でしたあ。パソコン碌に使えんかった。TT
7月中旬から毎日雷。この辺り雷の通り道だから。
すると、衛星放送も映らんの。TT
うち、夏は木が邪魔をして地上派も映らんし。TT

>彼は大いに問題あり〜〜ですよ。
姐さんも解っているかもしれませんが、「妻に問題がない青年」という意味です。
この兄さんの図書館にも入れずにスケボー少年たちを見るの図を見れは、甘ったれたあんちゃんであることがよく解りまする。

>>タイミング的にご都合主義的と言わざるを得ない。
>そうかしら〜ん?
訴えたいことはともかく、構成的に駄目です。
シュエットさんへのコメントでこれについて多少詳細に語っているのでご参照くらさ〜い。
或いは、強引な解釈ですが、「駆け落ちが本気でなかった」という意味なら理解できなくもないところ。ただ、その場合は表現の仕方として問題。
オカピー
2008/07/28 01:21
つまらんことですが、続くのであります。^^;

>>ダコタス
>エプスタイン

そう、彼がビートルズの二匹目のドジョウを狙ってとりあえずは成功したグループ。
デビュー曲はレノン=マッカートニーの"Do You Want to know a secret"だったはず。

>あの曲はジェリー・リー・ルイスのほうが
先だったかしら。

ルイスがオリジナルです。
オカピー
2008/07/28 01:23
参照に参りました(笑)
別に反論ではないんですよ。感想最優先のシュエットの意見として聞き流してやってくださいな。
>本気で駆け落ちする気はなかったということになりますね。
そうなんですよ! 本気なもんですか!この男にそれほどの度胸とか思い切りがあったら、とっくに司法試験に合格してますよ。(と、私は思う)
彼はそうやって成り行きで今まで生きてきたんですよ。ちょっとばかし頭が良かっただけにね。ある意味ずっと自分から逃げてた。今回の駆け落ちもそんな状況からの逃亡ですよ。いっつも受身でいきてきた軟弱なまさに原題の若者を象徴してるみたい。構成上は、私も強引だなって思ったけど、物語の展開にそれほど支障はないと思う。むしろここではウィルスン自身のる問題を浮かび上がらせることが目的だったと思う。そういう点ではここで彼って人間が読み取れたけど…とシュエットは思いました(笑)
シュエット
2008/07/28 20:18
今から大事なのに!…続き。
でも映画の見方って本当にどこに視点をおいてるかで微妙に(と思う)違いますものね。「ボルベール」みたいに確かに物語の構成とか展開は素晴らしいと思っても、私みたいに感想優先人間は作品と噛みあわないとどうにも受け止めきれませんものね。P様のレビュー読んで、そういう視点があるなってフィードバックすることも度々です。これからもよろしく!(フォローできてます?笑)
シュエット
2008/07/28 20:19
シュエットさん、こんばんは!

自称“双葉塾の生徒”ですから一番効率の良いドラマ展開というのを考えるんです。
シュエットさんの分析は100点満点。
「本気でなかった」説がどうも有力ということで着地点が見つかったようです(笑)。

僕みたいな視点で映画を見て書いている人は、20のブログに一つあるかないかですから、少しでも参考になることがあれば幸いです。
逆に登場人物の分析などについてはシュエットさんは僕より数段優れていますから、参考にさせてもらっていますよ。

こちらからもよろしく。
オカピー
2008/07/28 23:28
こんばんは。
>観客をミスリードする作者のなかなか巧みに計算した作戦
私も見事にミスリードされました。
変な人達の人間模様を描いた一種の風刺コメディかと思っていたら、現実社会を反映した正当なメッセージを含んだ映画でした。
hash
URL
2008/07/29 00:54
hashさん、こんにちは。

>正当なメッセージ
最近日本ではモンスターペアレンツなるものが跋扈し、通り魔事件が連続していますが、彼らはアメリカ流民主主義の強引な導入が生んだ一種の怪物ではないかと思っていたら、本場アメリカでもこういう軟弱な人々がいるのを見ると、宗教的背景は余り関係ないのかなという気にもなってきます。
尤もアメリカは欧米の中では不信心者が多い国でしょうが。
オカピー
2008/07/29 13:38

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