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zoom RSS 映画評「天然コケッコー」

<<   作成日時 : 2008/07/21 15:38   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・山下敦弘
ネタバレあり

リンダ・リンダ・リンダ」での演出になかなか好感を覚えた山下敦弘はブラック・コメディー「松ケ根乱射事件」で僕にとって俄然注目すべき監督となった。

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島根県の過疎地帯、ヒロインの中学2年生右田そよ(夏帆)の通う分校は小学生3名、中学生3名で構成されているが、そこへ地元出身の母親(大内まり)の離婚で東京から男子生徒・大沢広海(岡田将生)が転校してくる。少年はハンサムだが、東京育ちらしい白けた感じが強く、同学年のそよは嫌な感じを受ける。
 海水浴への途中線路に倒れた時に助けて貰ったり、山道で飛び降り自殺した女性にこっそり花を捧げたことを知るなどして少し好感を覚えるも、キスをせがむのが気に入らず一進一退状態。
 少年は田舎の暮らしに溶け込み、やがて高校へ進学する時期が訪れる。当初東京の高校への進学を希望した少年もそよの思いを知って同じ高校へ進路変更する。

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という田舎の中学生らしいほのぼのとした恋模様に、彼女の父親(佐藤浩市)と彼の母親との一筋ならぬ訳あり関係や若い郵便局員の岡惚れにそよが動揺する様子を織り込んで、地方の生活がスケッチ風に描写されていく。

スローライフ時代にマッチしているこの作品には幾つか素晴らしい点がある。間違っても田舎の暮らしではない(笑)。

一番印象に残るのが、少女が校舎を人間のようにいとおしむ様子である。共に進学を決めたお祝いにキスを何度も捧げた彼が呆れて教室から出ていく。「最後にえらいところ見せてしもうたね」と黒板に話し掛け彼女も出ていく。
 そして、カメラがゆっくり180度パンして捉えるのは、月も変わって窓枠にもたれる高校のセーラー服を着たそよ。現在このくらいの映像はお茶の子であろうが、僕はこの長回しに感嘆する代わりに、じーんと来てしまった。

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何故なら、現在小学生は2名。今の中学生が全員卒業する頃には分校は廃校になるのではないかと予想され、まるでその校舎が優しく語りかけてくれた彼女との別れを惜しんでいるかのように思えたからである。この作品のテーマはここ、つまり、「いつかなくなってしまうものへの惜別」にあると言っても良いのではないか。
 少年は彼女との別れを惜しんで同じ高校に進むことを決意するがその関係も永遠ではなく、青春もいつか消えるものである。来るべき別れに思いを馳せるような視線が感じられ、胸を熱くするのだ。

もう一つ優れているのは、縦と横のラインを強く意識した素晴らしいショットの数々で、今まで観た山下作品の中でも断然宜しい。撮影はここ数年見た邦画の中では最高峰に属する。

主演の二人は収穫。最下級生さっちゃん(宮澤砂耶)も実に可愛らしい。

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と、絶賛している割に★一つ分くらい少ない感じがするが、小品的持ち味の作品はこのくらいがふさわしい。

因みに、少年時代には学年当り6〜8人〆て40人ほどの小学生がいたわが部落も現在では全学年でたった2名。幸い分校ではないからわが母校は未だに健在ではあるが。

原作はくさもちふさこのコミック。

修学旅行より普段の登下校、水泳に海に向かう様子のほうが余程それらしい。

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トラックバック(9件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
天然コケッコー
天然コケッコーというタイトルは、先生オシッコーでもよかったような・・・ ...続きを見る
ネタバレ映画館
2008/07/21 16:09
『天然コケッコー』
----あれっ。この映画、 絶対にえいが好きそうだと思ったのに、 どうしたの? 「いやあ。もう聞いてよ。 今日はとても楽しみにして映画館に行ったのに、 始まって10分ぐらい経った頃、 そう、そよが早知子(宮澤砂耶)の下着を洗っているあたりから、 少し年配の女性集団が騒ぎながら出現。 『おばあちゃん、こっちこっち』とでかい声。 席についてからも『だから、あのトイレが…』『お昼に食べたあれが…』。 もう、ピクニック状態(涙)。 声はまったく聞き取れないし(涙)」 ----で、どうしたのニャ? 「心は... ...続きを見る
ラムの大通り
2008/07/21 22:51
mini review 08272「天然コケッコー」★★★★★★★☆☆☆
くらもちふさこ原作の同名人気少女漫画を、『リンダ リンダ リンダ』『松か根乱射事件』の俊英山下敦弘が映画化。脚本は『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あやが担当し、甘酸っぱい初恋や、友人や家族との何気ない日常を、のびやかに描き出す。みずみずしい魅力を発揮するヒロインに、映画初主演の夏帆がふんする。島根・浜田の四季の移り変わりや人々の心温まる交流に癒される。[もっと詳しく] ...続きを見る
サーカスな日々
2008/07/21 23:11
『天然コケッコー』'07・日
あらすじ山間の分校。小学校と中学校は同じ校舎の中にあり全校生徒はたったの6人!右田そよは唯一の中学二年生。初夏のある日、東京から転校生・大沢広海がやってきた。期待に胸を膨らませるそよだったが・・・。感想コンビニねぇ!美容院ねぇ!全校生徒は、小中合わせて... ...続きを見る
虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...
2008/07/22 08:24
天然コケッコー
「行って帰ります!」 ...続きを見る
シャーロットの涙
2008/07/22 09:52
天然コケッコー(映画館)
もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やぁ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう ...続きを見る
ひるめし。
2008/07/22 11:14
「天然コケッコー」
ああ、なんだか、ほのぼの幸せだったよ。 こんな、のんびりした空気の田舎…暮らしてみたいなあ。って、私の実家も、自然のなかなんだけど…... ...続きを見る
或る日の出来事
2008/10/02 22:41
完成! 「天然コケッコー」
&nbsp;&nbsp;今作を鑑賞して ...続きを見る
ポータブルDVDによる 車内鑑賞レビュー
2008/12/28 12:22
映画「天然コケッコー」
監督:山下敦弘(2年近く、撮ってませんね) 出演:夏帆 岡田将生 佐藤浩市 夏川結衣 大内まり 柳英里沙 藤村聖子 森下翔梧  出演:本間るい 宮澤砂耶(すんばらしい!)斉藤暁 廣末哲万(◎)黒田大輔  ...続きを見る
おそらく見聞録
2009/10/07 19:17

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
いつもコメントありがとうございます!
heavenSmileと申します。

突然ですが相互リンクしていただけないでしょうか?
映画ブログ
題名 Watch IT!
URL http://hasevenlime.seesaa.net/

独断と偏見による映画評論しております。
こちらのブログにはすでにリンク
しております。

よろしくお願いします。
heavenSmile
URL
2008/07/21 22:46
TBありがとう。
結構、可愛らしくミニな学校に行ってらっしゃったんですね。
この間、町村合併も含めて、学校の統廃合が一挙に進みましたよね。
この作品を見て、校舎が語りかけてくるような感傷を覚えた人も、多かったんじゃないかと思います。
kimion20002000
URL
2008/07/21 23:13
heavenSmileさん、こちらこそ有難うございます。

リンクの件、了解致しました。
明日(本日午後)設定致します。

今後とも宜しくお願い致します。
オカピー
2008/07/22 02:00
kimion20002000さん、こんばんは。

>ミニな学校
まあ上級生下級生を含めて全員知っていたりしますから、密着度がすごいですね。こういう田舎は。
僕は通っていませんが、兄親子が通った高校も統合されましたね。それでも僕らの時代ほど生徒の数がいないですよ。

>校舎が語りかけてくるような感傷
少なくとも僕はそれを最初に感じましたね。
僕には黒板に顔を付けるような真似はできませんけど(笑)。
センチメンタリストですから、こういう映画はぐっと来ます。
オカピー
2008/07/22 02:08
ストレートに懐かしいふうで好感のもてる作品でした。
この監督さんは「リンダ・リンダ・リンダ」「ユメ十夜」を見ていますが、こんなに、こんな「ほのぼの」映画とは、なぜか思っていませんでした。
ほんわかと心に残りますね。
ボー
URL
2008/10/02 23:03
ボーさん、こんばんは。

山下監督は、リアリズムの中にちょっととぼけた感覚が入っているのが特徴だと思います。
「ユメ十夜」は原作と殆ど関係ない世界を猛進して(笑)、訳が解らず苦笑しました。

田舎者ですから、あののんびりとした感覚が解っちゃうんだなあ(笑)。
いい映画見せて貰った、そんな後味がありましたね。
オカピー
2008/10/03 02:29
お邪魔します。

「いつかなくなってしまうものへの惜別」

う〜ん、全く同感です。この気持ちを思いながら今作を鑑賞致しました。
ボクも今作のレビューを書いておりますので、トラックバックをさせてくださいませ。よろしくお願い致します。
マーク・レスター
URL
2008/12/28 12:19
マーク・レスターさん、初めまして。

お名前はどこかのブログでよくお見かけしていたような気がします。
マーク・レスターさんと仰るからには、その時代に少年時代でも送られたのでしょうか?
そうすると世代的には近い感じですね。

同感して戴き有難うございます。
廃校だけではなく、青春もまたいずれ消えるもの、という感傷というより感慨がにじみ出る素晴らしい作品でしたね。

これからそちらにお邪魔致します。
オカピー
2008/12/29 02:14
コメントありがとうございました。ボクのブログへのコメントによると、トラックバックがうまく反映できなかったとのことでしたので、オカピーさんのこのページのURLをボクのブログのコメント欄に貼らせて頂きました。
これで、この映画を核とした輪が少しでも広がってくれればよいなと思っております。

廃校だけではない ですね。 「諸行無常の..... (何とか)」とはまた違った 無常感 みたいなものが、感じられた ふくよかな 映画だと思いました。

ボクは中2の時、「小さな恋のメロディー」 のTV放映を見てとても大きな衝撃を受けたのです。この思いは他の思春期を迎えている人たちにも共有されたようで、その後、リバイバル上映をされたほどでした。

ですから。ボクは 第一世代ではなく、メロディー第2世代 とでも言うべき年代となっています。具体的に言うと 1963年生まれです。

「小さな恋のメロディー」 は今でもボクのベスト1ムービーとなっており、1年に1回は必ず見てしまう、別格の存在となっております。


ではでは、またお邪魔致します。良いお年をお迎えくださいませ。
マーク・レスター
URL
2008/12/29 10:22
マーク・レスターさん、こんばんは。

>URL
わざわざ有難うございました。

>映画を核とした輪
そう願いたいですね。
やはり良い映画は伝えていかないと。

>「小さな恋のメロディ」
やはり。
僕が映画ファンになりたての頃公開されました。
ふーん、「メロディ・フェア」なんて憶えたものです。
映画を観る前に雑誌「平凡」で、マンガ版を事前に読んでしまったので、そこまでのショックはなかったですが、僕も鮮烈な印象を持っていますよ。

>1963年生まれ
ふむふむ。
僕は年寄りぶることにしているので(笑)明言は避けますが、辛うじて小学校に一緒に通える年齢です。

再度になりますが、良いお年を。
オカピー
2008/12/30 03:36

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