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help リーダーに追加 RSS 映画評「魂萌え!」

<<   作成日時 : 2008/04/28 15:50   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・阪本順治
ネタバレあり

平山秀幸監督の「OUT」で注目した作家・桐野夏生の同名小説を阪本順治が映画化したドラマ。女性の<顔>の変遷を巧みに描いた「顔」と共通するテーマの作品である。

定年で退社した3年後に夫・寺尾聡に死なれた59歳の専業主婦・風吹ジュンが、夫の携帯に愛人から電話が掛かって来て呆然とするが、意を決して愛人・三田佳子を招きいよいよ対峙。かなりの年配で一見大人しそうだが、強かさが顔を出す。ストッキング越しに見えるペディキュアを捉えたショットが効果的だ。
 終盤にももう一度対峙する場面ではもっと強烈に火花が散る。実は夫と経営していたうどん屋で「奥さんというだけで優位なのだ」と言う愛人に対し、妻は「勝ち負けではない」と反論する。日蔭の悲しさとは違う、日向には日向の苦労と悲しみがあるのだ。その後愛人は寝泊りの象徴である歯ブラシを投げ付け「知らないことは罪だ」と言う。歯ブラシもナイーブだが、彼女の足にはもはやペディキュアがない。前回は愛人にも物事を考える余裕がなかったのだ。なかなか書けない繊細な場面であり、台詞であります。

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しかし、本作の主眼は、夫の死去と愛人の出現により家を守る生活に陥穽を開けられた初老の主婦が、いかに安穏とした旧態依然の生活に決別していくかを描く事である。
 彼女にはアメリカで暮らしていたものの煮詰まって妻子と共に帰国、家に住みつこうとするぐうたらな息子・田中哲司がいる。恋人と同棲しながらちょくちょく顔を出す娘・常盤貴子がいる。趣味は映画で、昼間の映画放送を楽しみにしている。これが終盤への伏線になっている。

息子の見下ろした態度に遂に家を飛び出て泊まり始めたカプセルホテルで自分の奇談を語って金を恵んでもらう風変わりな老婦人・加藤治子と知り合い、彼女の話に触発されて積極的に前進する気になる。物は試しと、夫のうどん同好仲間の林隆三に誘われるまま同衾。
 この場面はヒロインが日本の平均的女性なので些か不自然に感じられてしまうが、林の平凡な主婦像を求めるような言葉に革新的変化を求めていた彼女は失望、今度は映写技師を目指して映写室に押し掛けるのである。

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この展開から量ると、夫は一概に責められない。心の片隅のどこかでおっとりした性格の彼女の眼を開かせることを期待した不倫行為ではなかったのか。さもなくば退職の日に無言の「ありがとう」を言うだろうか。終盤妻自身がそう思うようにして納得している節がある。そして彼女はその期待通りに彼女自身の人生を漕ぎ出すのだ。【萌える】とは【燃える】にあらで、【芽が出る】ことである。

これにアクセントとして三人の同級生(由紀さおり、今陽子、藤田弓子)との賑やかな情景を織り込み、種々雑多な挿話にペースを乱すことなく、今時珍しいほど起承転結をはっきり示して作っているので解り易い。テーマは新しくなくても見応え十分。

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やがてカプセルホテルの老婦人が死ぬと、その甥である支配人・豊川悦司はホテルから逃げ出し、偶然再会したヒロインから後日伯母の骨壷を渡される。その時ひまわりを乗せた台車が二人の横を通り過ぎる。夫の遺影を挟んで次の場面はポルノ映画の映写技師を卒業したヒロインが映し出す映画「ひまわり」。これも一種のマッチ・カットかと思って観ていたが、別れをフィーチャーした映画「ひまわり」を遺影に続けたのは、やはり夫への決別を意味するか。その正否はともかく、なかなか洒落た演出で、映画鑑賞の醍醐味はこうした部分にある。

風吹ジュンは中年になって演技に開眼した感があるが、本作はその中でも絶品。弱さも強さもコミカルさも悲しみもとまどいも自在に演じている。TVドラマは観ないので若い時の演技はさほど記憶にないものの、とにかく歌は下手だった。そのせいか、本作のコーラスは他の三人に任せ参加しない。三田佳子も好演。

その昔アンケートと言われて1万円を取られた経験あり。あの老婦人の展開は正にそれだったな。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
魂萌え!
原作は桐野夏生の同名小説。 「肉体は衰えるけれど魂はますます燃え盛るものだ」という 夫の定年、夫の死、老年の性愛、自立せず親にまといつく子供たち、、 目をそらしたくても何時の日か必ずやってくる、その時。 ちょっとドキドキしながらの観賞でしたが、良かったです。 ...続きを見る
to Heart
2008/04/28 17:33
魂萌え! 桐野夏生
あ、お先に言っておきますが 私、デ・シーカの「ひまわり」で “泣かない人種”ですから・・・・。 ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2008/04/28 18:02
魂萌え!
いいか、よく聞け!不倫騒動と借金地獄によってこのカプセルホテルは一気呵成に沈んでいくんだ! ...続きを見る
ネタバレ映画館
2008/04/29 09:21

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
TB、ありがとうございました!
大好きな作品です。
ドンくさい中年女から輝きを取り戻した女性への変化がブラボーの
風吹ジュンが可愛かったですね〜。
傷つき、途方にくれ、戦い、、自分を見つけて行く。
護りに入らないところが素敵でした。元気が貰える作品でしたね♪
kira
URL
2008/04/28 17:42
>【萌える】とは【燃える】にあらで、
【芽が出る】ことである。

そうなんです。
「若草の萌えるころ」〜なんですからねぇ♪^^
昨今の流行言葉はチュー太郎を象さん化させて^^
なにかにつけてボーボー燃える、すっかり
燃える的仕様にして〜。

>眼を開かせることを期待した
不倫行為ではなかったのか。

うふふ〜ん。
そう、きますか〜?(--)^^
「女房は家具みたいなもんだ」
という台詞もありましたね。
あの“ありがとう”は、さほど
面白みもないが“無くても困る”
家具のような妻(ヒロイン)の
縁の下的日々の助力に感謝した言葉だと
私は解釈しましたが。

>とにかく歌は下手だった。

彼女の歌を思い出して爆笑中!(拍手!)
ヘタさにかけてはあの「赤い風船」の
浅田美代ちゃんとしのぎを削るでしょう^^;

現代は、妻よりも愛人が人生を謳歌している
風潮も見られますね。
恋も愛も、人間関係も、軽い、軽い・・・
桐生夏生氏は、うまいとこ書きますわ。
でも、
本作に関しては阪本さんの勝利ね!(拍手!)
viva jiji
URL
2008/04/28 19:23
(誤)桐生→<正>桐野

でございました。訂正いたします。
viva jiji
URL
2008/04/28 19:27
kiraさん、初めまして!

僕は男性ですから、本作に出てくる男たちの不甲斐無さに情けない思いを抱くところもあり。
だから、不倫した旦那をちょっと持ち上げてみたんですけどね、kiraさんのご意見は如何でしょうか。^^

恐らくそうした男女の生態が現在の日本なのでしょうし、作家さんはさすがに上手いことを書くなあなどと思っておりました。
オカピー
2008/04/29 02:00
viva jijiさん、こんばんは。

>うふふ〜ん。
>そう、きますか〜?(--)^^
想定内の反撃でございまする〜。^^
勿論「ありがとう」の意味は姐さんのご推察通りだと思いますが、男が一度は好きだった女から離れ別第二の女に走る時、最初の女に無言のメッセージを吐くものではありますまいか。勿論本作の奥方は愛人が言うように<鈍感>で、いつの間にか彼女は<家具>になってしまったのではないか。しかし、彼は<家具>の有難みを知っていただろう。
ということなんです。
本作はメロドラマではないからそこは描かず、色々考えられて面白い。
それと、本作の男たちは情けないですから、ちょっと庇ってみた、というわけ。

>妻よりも愛人が人生を謳歌
いやいやその通り。愛人が<日陰>というのは演歌の世界くらい。そのことを本作の愛人もよく知っていて、嫌らしかったですね。^^;
オカピー
2008/04/29 02:16

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