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☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1954年日本映画 監督・山村聡 ネタバレあり 1949(昭和24)年に起きた下山国鉄総裁轢死事件(通称下山事件)を基に井上靖が書いた同名小説を俳優・山村聡が映像化した力作。主演もしているが、俳優の監督作品と侮ることのできない、寧ろ専業の山本薩夫監督が作った「松川事件」より余程完成度の高い秀作である。 従業員を大量に解雇した秋山国鉄総裁が轢死体で発見される。 大多数の新聞が他殺説を取る中、毎朝新聞のデスク速水(山村)は客観的事実に則り自殺説寄りの中立的態度を取り続ける。 当時はGHQが共産主義を排除しようと躍起になっていた為自殺説は共産主義のテロリストに利するものであると批判の矢面に立たされるわけだが、映画は突然16年前に戻って妻の心中事件における真実から程遠い興味本位な報道を見知った経験から客観性を固持する立場を取るようになった背景が述べられる。構成的にぎこちない印象を残すものの、説明が具体的なのが宜しい。 ここまでは<ジャーナリズムの良心を守る男>という今年観たアメリカ映画「グッドナイト&グッドラック」と似たテーマで推移するが、後半ではその良心が時の権力の前に機能しなくなる様子が描かれていく。 下山事件に材を求めながらも事件そのものを主題にせずにジャーナリズムの良心をテーマにした、日本ではごく珍しいタイプとして後世に名を残した作品と言っても良いのではないか。 主人公の人物像も精緻に彫り上げられているが、彼の上司になる部長(滝沢修)の陰影のある扱いが印象深い。速水の客観主義を支持した部長は美鷹(三鷹)事件が起きると掌を返すように「失敗だった」と冷たく言い放ち、彼を博多支局へ飛ばす。部長は【君子は豹変す】を地で行ったのか。いや違う。新たな事件が起きたことで社関係者の関心をそちらへそらせ、飛ばすことで冷却期間を設けたのだ。最後に部長が辞表を出したことが判るという構成が効いている。 余談となるが、当時他殺説は国鉄組合員のテロ的犯行を意味していたわけだが、現在いずれの事件もGHQが絡んでいたという説がまことしやかに囁かれている。共産主義の拡散を異様に恐れたアメリカ即ちGHQが労働組合員の犯行に見せかける為に事件を起こしたというわけだ。 研究者ではない僕には何とも言えないが、「さもあらん」という気にもさせられる。本作で「自殺である」とする警察の発表が直前に取り止めになる圧力にも、共通する不気味な匂いが漂っている。 |
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