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zoom RSS 映画評「ブロークバック・マウンテン」

<<   作成日時 : 2007/10/18 14:46   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 15 / コメント 9

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督アン・リー
ネタバレあり

「ハルク」の質はそれなりに高かったもののアン・リーの撮る作品ではないと思ったし、「グリーン・デスティニー」は展開がぎこちなくアカデミーの主要部門に絡んだ作品としては戴けなかったが、本作は「いつか晴れた日に」以来の秀作と言って良い。

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1963年、牧場の季節労働者としてワイオミング州のブロークバック山での放牧管理に従事することになった二十歳の青年ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールが衝動的に同性愛の関係を結んでしまう。
 レジャーは同郷の娘ミシェル・ウィリアムズ、ギレンホールは農機具業者の娘アン・ハサウェイと夫々結婚して子供も儲けるが、一度燃え上がった思いを断ち切ることが出来ず、20年に渡り密会を続けた挙句に離婚したレジャーは交通事故死したギレンホールの遺灰の一部を届ける為に彼の両親を訪れる。

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70年代以降同性愛を主眼にした作品は少なからず作られているとは言え、朴訥で男らしいイメージのある牧童同士を当事者にした作品は記憶にない。
 当初はその珍奇さに注目していたが、次第に彼らの純粋な愛情交換に神経を研ぎ澄まさざるを得なくなる。我々はいつか彼らが同性であるということを半ば忘れ、その強い思いに心打たれるようになる。偶々相手が男性だったというだけではないかと思えてくる。

物語のスタートはまだ同性愛が激しく差別されていた60年代前半であり、しかも舞台がその為に殺人すら起きかねない保守的な地方(田舎)であるが故に、彼らの【反道徳的】行為への理由付けが足りないように思われるかもしれない。
 しかし、「人を好きになるのに理由が要るだろうか」と僕は素直に思うし、男女の恋ならそういう要求はまず出ないであろう。繰り返しになるが、運命の人がたまたま男だっただけと理解すれば良いのではないか。
 男性を主役にした同性愛映画には生理的に抵抗を覚える僕をして、そう思わせるまでにアン・リーの描写は純粋である。いや、説明不足に見えるこの唐突さは登場人物に突然湧き起こった激情を表現する為の計算と認めざるを得ないのだ。

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しかるに、映画の中の二人、特にレジャー演ずるイニスはそう簡単に割り切れない。
 元々潜在的に同性愛的資質があったと思われるギレンホール扮するジャックに対し、イニスには自身の同性愛を素直に受け付けられない理由がある。父親に見せられた凄惨な情景である。それ故逢瀬についてもジャックほど積極的にはなれない。

自己における矛盾がイニスに離婚を経て孤独な人生を送らせることになるのだが、葛藤を克服するのは結局は純な思いそのものである。そして終盤で思い出の品を抱き締めて爆発する彼の思いに観客も感極まっていく。

そこにあるのは人間の裸の姿である。
 従って、僕自身は同性愛をテーマにしたことをそれほど重視しないが、同性愛という内容故に保守的傾向の強いアカデミーにおいて作品賞を実力的には些か劣る「クラッシュ」に譲る形になったと言わざるを得ないのは残念である。

配役陣も頗る好調。これまでも印象深い活躍をしてきたギレンホールは一段上の段階に進んだと思う。これまで大した印象のなかったヒース・レジャーはさらに秀逸で、これから注目してみたい。女優ではミシェル・ウィリアムズが圧巻。容貌的には好きなタイプとは言いかねるが、「ランド・オブ・プレンティ」に続いて演技は断然宜しい。

撮影も抜群で、上記採点は新作では2年ぶり。すっかり脱帽しました。

映画の出来栄えはロッキーどころかヒマラヤ級じゃよ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『ブロークバック・マウンテン』
----この映画って昨年の映画賞のほとんどを受賞しながら アカデミー賞を逃したと言う曰く付きの作品だね。 「うん。ゲイを扱ったことから アカデミー会員には敬遠されたのではないかと言われている」 ----実際に観てどうだった? 「その前に一言。 映画館の観客があまりにも少なかったのには驚いたな。 アカデミー賞を逃すとこういうものなのかな。 映画は確かにゲイのふたりが主人公なんだけど、 観る前に予想していた内容とはだいぶ異なっていたね」 ----どう違ったの? 「ブロークバック・マウンテンで関係を持... ...続きを見る
ラムの大通り
2007/10/18 21:50
胸のざわつきを言葉に〜「ブロークバック・マウンテン」
「ブロークバック・マウンテン」のこと アン・リー監督のこと ゲイ・ムービーのこと  ...続きを見る
寄り道カフェ
2007/10/18 21:56
ブロークバック・マウンテン
 たまってるのなら羊を・・・って昔の小噺にいっぱいあったなぁ・・・ ...続きを見る
ネタバレ映画館
2007/10/18 22:11
「ブロークバック・マウンテン」からの情景
ブロークバック・マウンテン プレミアム・エディションジェネオン エンタテインメントこのアイテムの詳細を見る 「ブロークバック・マウンテン」&#8194;(2005年製作) 監督:アン・リー 製作:ダイアナ・オサナ&ジェームズ・シェイマス 原作:アニー・プルー「ブロークバック・マウンテン」 脚本:ラリー・マクマートリー&ダイアナ・オサナ 撮影:ロドリゴ・プリエト 音楽:グスターボ・サンタオラヤ 出演:ヒース・レジャー(イニス・デル・マー) ジェイク・ギレンホール(ジャック・ツイスト... ...続きを見る
豆酢館
2007/10/18 22:22
★「ブロークバック・マウンテン」
ゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞で話題をさらった作品。 アカデミー賞ではアジア系初の監督賞を受賞したアン・リー監督作品。 主演はヒース・レジャー。  ...続きを見る
ひらりん的映画ブログ
2007/10/18 22:36
■ ブロークバック・マウンテン (2006)
監督 : アン・リー 主演 : ヒース・レジャー / ジェーク・ギレンホール /       公式HP:http://www.wisepolicy.com/brokebackmountain/ 監督は「 グリーン・ディスティニー 」のアン・リー。「 SAYURI 」で共演したサユリ役のチャン・ツィイと、か... ...続きを見る
MoonDreamWorks
2007/10/18 23:48
ブロークバック・マウンテン
(2005/アン・リー監督/ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムズ、アン・ハサウェイ、ランディ・クエイド、リンダ・カーデリーニ、アンナ・ファリス、スコット・マイケル・キャンベル、ケイト・マーラ/134分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2007/10/19 08:13
ブロークバック・マウンテン(映画館)
はじまりは、純粋な友情の芽生えからだった――― ...続きを見る
ひるめし。
2007/10/19 12:28
映画「ブロークバック・マウンテン」
映画館にて「ブロークバック・マウンテン」★★★★ ...続きを見る
ミチの雑記帳
2007/10/19 16:57
<ブロークバック・マウンテン> 
2005年 アメリカ 134分 原題 Brokeback Mountain 監督 アン・リー 原作 アニー・プルー 脚本 ラリー・マクマートリー  ダイアナ・オサナ 撮影 ロドリゴ・プリエト 音楽 グスターボ・サンタオラヤ 出演 ヒース・レジャー  ジェイク・ギレンホール  ミシェル・ウィリアムズ    アン・ハサウェイ  ランディ・クエイド  スコット・マイケル・キャンベル ...続きを見る
楽蜻庵別館
2007/11/05 09:50
NO.179「ブロークバックマウンテン」(アメリカ/アン・リー監督)
大都市では「ゲイ解放運動」が進んでいたときも、 西部ではホモセクシュアルは秘匿されなければならなかった。 ...続きを見る
サーカスな日々
2007/11/06 19:13
追悼ヒース・レジャー、「ブロークバックマウンテン」における声...
ヒースの急死について、日本のネット上のニュースサイトでも詳しい情報が流れ始めた。CNN日本語版によると、23日の検視でも死因は特定されず、死因が判明するまでにあと10〜14日かかる見通しだという。お昼のABCニュースでも同様のことを言っていた(そして、またも「ブロ... ...続きを見る
Mizumizuのライフスタイル・ブログ
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速報 ヒース・レジャーは「事故死」
ヒース・レジャーの死因に関して、ニューヨーク市のヘルス&メンタル衛生局の主任監察医の所見が発表されました。2008年2月6日ヒース・レジャーの死因についてヒース・レジャーは、オキシコドン、ヒドロコドン、ジアゼパム、テマゼパム、アルプラゾラム、ドキシラミンの複... ...続きを見る
Mizumizuのライフスタイル・ブログ
2008/02/07 02:24
『ドーソンズ・クリーク』の第2シーズン以降のDVD
を待ち焦がれている人、どうかどうかご賛同お願いします!! たのみこむ(商品化リクエストサイト) https://ssl.tanomi.com/ 『ドーソンズ・クリーク』で検索してください。 やっぱりこのドラマ最高…。もう8、9年前になるだろうか、たまたまwowowでこのドラマをやっていて.. ...続きを見る
*watakushigoto*
2008/11/24 03:59
映画評「ムーンライト」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2016年アメリカ映画 監督バリー・ジェンキンズ ネタバレあり ...続きを見る
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2018/03/13 08:31

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
これは劇場に3回通いました。先日WOWOW放映でみて、二人がであったワイオミングの自然と二人を時間をかけてじっくりと描いている。あらためてアン・リーの演出の見事さにうなりました。本作は本作の映画感想というよりも「ブロークバック・マウンテンに寄せて」というとこで記事あげたものですが、TBさせていただきます。ベネチアで金獅子賞とってからずっと公開を待ち焦がれていた映画でした。自然の中で人間を描いているというのもアン・リー作品にはめずらしい。2枚組DVDも買って。純愛映画でもあり、そしてカーボーイ映画でもある。映像が終わってからクレジットが流れた瞬間に感動がわっと押し寄せてきました。アン・リーの抑えた演出がここでも見事。だから何度観ても感動します。
シュエット
2007/10/18 22:06
Pさま続き。ヒース・レジャーね、「チョコレート」見てください。冒頭数十分間の出演ですが、ビリー・ボブ・ソーントンの息子役で自殺するんですけど、私この時の彼をみて演技上手いなぁって思った。アン・リーもこのときの彼をみてキャスティングしたとか。「ブラザーズ・グリム」でも弟役でした。本作と全く違う雰囲気ですよ。彼、役によってがらりと雰囲気変わる。「サハラに舞う羽根」もまた違う雰囲気で。最新作「キャンディ」はオーストラリアに戻って映画。この時の演技も良かったです。「カサノバ」」ではコメディ的雰囲気だったし…。ともかくも本作ジェイクとヒースのキャスティングは最高でした。
シュエット
2007/10/18 22:22
シュエットさん、こんばんは。

私は撮影だけでやられてしまいました。あれだけ自然をうまく撮影してくれたなら、文句の付けようがありませんよね。
そこへ演技陣の素晴らしいアンサンブルが加わり、いやあ堪能しました。
正直言いまして、お話は後から考えれば良いや、みたいになってきましたよ。

>ヒース・レジャー
「チョコレート」は観ていて、息子役は強く印象に残っていますが、これが彼だとは気付かなかったなあ。^^;
「ブラザーズ・グリム」「サハラに舞う羽根」・・・そうでしたか。観たのにね。お恥ずかしい。

最近は余程目立ってこないと役者も憶えないんですよねえ。監督も新人ばかりで憶える気もなくなってきましたし、老化現象ですかね。(笑)

勿論新作2本は注目して観ますよ。
オカピー
2007/10/18 23:03
TBありがとう。
僕は、これは、「遠距離恋愛」映画と捉えました。
だから、ふたりの邂逅は切ないし、マウンテンの風景のなかに溶け込んでいく。
これが、どっぷり同棲していたら、幸せかもしれないけど、こういう哀歓は出ないですね。
kimion20002000
URL
2007/11/08 00:31
kimion20002000さん、こんばんは。

確かに遠距離恋愛ですねえ。
これがNYやLAの大都市では珍しくないわけですから、田舎の同性愛者というのが話の妙で、二人が同棲するとなると大都市になりますね。
その逢瀬の場所が山地。それが抜群に美しく捉えられていたのが、大量の星に繋がりました。
オカピー
2007/11/08 20:14
古いエントリーにコメント失礼いたします。ヒース・レジャーの急死をうけて拙ブログでも昨日から連載で「ブロークバック」を取り上げました。本当によくできた映画でした。もしよろしければ拙ブログものぞいてみてください。トラバも一応送ってみます。こちらへのトラバも大歓迎です。
Mizumizu
URL
2008/01/25 12:40
Mizumizuさん、初めまして!

何でも作品に関係するTB,コメントなら大歓迎です。
本作には全く惚れこみ、昨年観た350本弱の初鑑賞作品のベスト1にしてしまいました。

>ヒース・レジャー
頭の中のハード・ディスクがいかれてきてなかなか若手俳優の名前を憶える気力も湧かない昨今、本作で俄然注目、今後は目を離せないぞと思った矢先ですからびっくり、がっくりです。
オカピー
2008/01/26 00:04
オカピーさん、拙ブログにもコメントとトラバありがとうございました。
ブロークバックは本当に素晴らしくよくできた作品でしたね。
明日もまたこの話題で書くつもりです。
トラバ、私のほうでは表示できましたが、ちゃんと一般の方も拙ブログから見えてますかね? もしよろしければ、再度拙ブログで貴ブログのトラバが反映されているか、確認して教えてくださいまし。
Mizumizu
2008/01/26 02:11
Mizumizuさん、こんばんは!

TBの反映を確認致しました。
続きも実に興味深く、更なる続きを楽しみにしております。
オカピー
2008/01/27 03:06

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