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<<   作成日時 : 2007/08/11 16:07   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督デーヴィッド・スレイド
ネタバレあり

日本で起きた事件をグリム童話「赤ずきん」風にアレンジした心理サスペンスである。

出会い系サイトで知り合った14歳の少女エレン・ペイジが30代の写真家パトリック・ウィルスンの自宅へのこのことついていく。しかし、多くの観客の予想とは裏腹にひどい目に遭うのは、赤ずきんではなく、オオカミの写真家である。

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全て彼女の用意周到な計画であることは立場が逆になった時から判るわけだが、クラシックな評価スタイルで分析すれば弱点が多い。つまり、写真家がヒロインの言うような殺人犯なのか、それとも彼女の単なる逆恨みなのかが最後まで分らないので、観客は誰についてサスペンスを感じるべきなのか解らないのである。
 かつての「サイコ」「コレクター」のように犯人を巡って作者に自由自在に操縦される面白さもなければ、「ケープ・フィアー」などの逆恨みの恐怖を被害者に対し持つこともできない。何故なら彼は重罰に値する悪人かもしれないからである。

しかし、古典的なサスペンスは楽しめない代わりに、スクリーン上で行われている奇怪な行為と心理合戦により大いに手を汗を握らせてくれる。クロースアップが多く、意外なほど二人が一つのショット(専門用語でツー・ショット)に入って来ないことから、本作が本格サスペンスやサイコ・スリラーではなく、心理サスペンスを目指していることが分かる。
 途中でかなり猟奇的な設定が出てくるが、彼女の行為がフェイクなのはほぼ想像が付く。本作の作り方が心理サスペンスであり、彼女がじわりじわり責めようとしているのがその用意周到ぶりから伺えるからだが、それでも男性諸君はおそらく急所部分が縮んだことでありましょう(笑)。

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総じて心理サスペンスとしては上出来の部類と言って良いのだが、終盤が勿体ない。写真家の恋人が家を訪れるのだが、ここは心理ではなく本格サスペンスを見せるに打ってつけの場面だったのに、殆ど細工を弄することもなく終わってしまい、二つくらい押しが足りないのである。その前の日系婦人(サンドラ・オー)が訪れる場面でもやや工夫が足りない。

しかし、殆ど二人芝居で1時間40分を持たせた脚本・演出・演技は一定以上に評価できる。その成否は半ばヒロインを演ずる女優の双肩にかかっていたわけで、童顔エレン・ペイジはその期待に応える力演と言って宜しい。

終わってみれば案外常識的なお話でした。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
プロフェッサー、体調はいかがでしょうか?
実は昨夜あたりから私も、ノドの加減がなんとなく
ヘンでございます。やっぱり扇風機をつけっぱなしで
就寝するのは良くないですね。(--)^^

いやはやこれは劇場で観ましたが
ドッと疲れる作品でございました。
でもキライじゃないです、こういう心理劇は。(^^;)
かなり幼く見える女優さんの存在感が効を奏していますかね。
多少の綻びはありましたが人物の顔をこれだけ大写しの
畳みかけを多用しながらラストまで持たせるチカラはなかなか。

A・リックマン、M・ストーの「クローゼット・ランド」
(ラダ・バラドワジ監督)の緊迫した2人劇とまた
趣きの異なる面白い映画でした。

きっと殿方は2度と観たくない作品ですよね。^^;
viva jiji
URL
2007/08/11 20:30
viva jijiさん

体調の戻りは8割くらいでしょうか。
風邪はともかく胃痛は凄まじかった。「灰とダイヤモンド」の主人公のようにのたうちまわり、悶死寸前でしたよ。
今回の夏風邪は、胃痛で出た大量の冷や汗がもたらしたものと自己分析しております。決して逆ではない(笑)。

本作のあの場面で主人公は、胃痛の私より冷や汗をかいたでしょうね(当たり前だっちゅうの)。
でも、彼女が実際にやることはないと思っていたので、観客たる僕は案外冷静に見ていました。映画を長く観ているとそういうことまで解ってくるんですねえ。嫌ですねえ(笑)。

終わってみれば、手の込んだ<勧善懲悪>なんですけどね。
オカピー
2007/08/12 03:05
夏バテしてませんか?
遅まきながら本作観ました。男性陣はどうか分かりませんが、いやぁ面白かった。TBべたりと張り付けます。
シュエット
2007/08/16 22:31
シュエットさん

普段が体が弱いくせに夏バテをしないと豪語していたのですが、先日の胃痛→風邪がリピートするようになってしまって、胃痛を何度も起こし、また軽い風邪を引いて、総じて夏バテなのか、という状態です。

七転八倒した胃痛の原因がビールではないかという結論に達し、この暑いのにビールを自粛している状態。一番うまい季節なのに。

クラシックな観点から観ると困る部分もありますが、現在は謎自体がテーマになることが多い時代ですから、それも良いでしょう。
しかし、最後に彼の前の彼女だか何だかかやってくる場面はもう少し正攻法のサスペンスを見せてほしかったとは思います。
オカピー
2007/08/17 00:18
言われるとおり、最期はちょっとね。でも、男って案外純情で、やはり、この期に及んでも彼女には知られたくない、そこに執着して、どつぼにはまった状態になっていた。人間って極限状態になると、案外こんな判断もしてしまうんではないかなって思いもします。そういう点ではこの映画、かなり人間の心理を等身大でリアルに捉えて描いていると思う。だから目が離せなかった。
シュエット
2007/08/17 01:02
シュエットさん、こんばんは。

心理学的にはよく考えられていますね。
一方で、サスペンスには客観的な現象も含まれますから、そこにハプニング的要素が加わったほうが私としては総合サスペンスとしてもっと凄味を増したと思ったわけです〜。
オカピー
2007/08/17 20:36
おはようございます^^
TBを持参つかまつりました。
プロフェッサーご指摘の「サスペンスとしての弱点」。私が鑑賞中にブツクサとぼやいていた内容とほぼ一致しております。
ただ、「彼女の行為がフェイク」 というより、全てがマゾ男の妄想、映像自体がフェイクだと思って、私は途中まで観てました。オペがフェイクだと判明した時点で「ああ〜リアルだったのか」と気がついた次第^^;
あんなことをする14歳の少女は、男の妄想の世界にしかいませんよ。もっとも、映画というのは監督の妄想の映像化なわけですが(笑)

多忙につき、しばらく拙宅の記事更新をお休みします。もちろん、御記事は楽しみに拝読させていただきます^^
優一郎
URL
2007/09/22 08:57
優一郎さん、こんにちは!

つまり、夢落ちという予想ですね。
シャマラン以降、サスペンスやホラーの場合、観客は映画の中に遊ぶのではなく、どんでん返しを巡って監督と【仁義なき戦い】をするようになっていますが、私は敢えて映画の中で楽しもうとしているんです。
監督と勝ち負けを争うのはやはり映画鑑賞の本道ではなかろう、最後が夢落ちならまあそれも良いか、ってね。

その点アレンの「マッチポイント」のミスリードは(多少ご都合主義的ではあるが)上手い。あれがやはり映画というものではないでしょうか。

>記事更新お休み
それは寂しい。なるべく早めにお戻りください。
当方は暫く変な作品が続きます。最近は消極的鑑賞スタイルなので、自分でコントロールできないわけです。久しぶりにレンタルにでも行ってみようかと思っているんですが。
オカピー
2007/09/22 14:02
さるおです。
おひさっす。

> seesaaとの相性も最近今一つ

そうそう、これにはさるおも困ってる。seesaaは、webryさんへはまぁまぁなのだけど、gooさんなんてお手上げだし、livedoorさんとも相性よくない。なんとかならんかねぇ。

被害者っぽいほうがじつはワルモノ。こーゆーのは多いね。
この作品も、じつは写真家がワルモノで、あかずきんちゃんは世直ししてるというのが正解なのかな?さるおにはそうは見えなくて、コドモがひたすら怖かったでござるー(笑)。
さるお
URL
2008/07/10 23:16
さるおさん、こんばんは!

>相性
うちはgooとは抜群ですが、Livedoorは先方が先に貼ってくれないとTBできないパターンが多いです。

>あかずきんちゃんは世直ししてるというのが正解なのかな?
とも言い切れないような気がします。
いずれにしても、最近ははっきりさせずに終わる作品も多くて、これもその手でありましょう。
僕の好きな正統派サスペンスは激減していますよ(泣)。
オカピー
2008/07/11 03:17

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