|
☆☆☆(6点/10点満点中) 1997年日本映画 監督・河瀬直美 ネタバレあり 最新作「殯の森」で今年のカンヌ映画祭グランプリ(名前に偽りありで、最高賞ではない)を受賞した河瀬直美が同カメラドール(新人賞)を受賞した作品。10年前に観たが、話題に乗じて再鑑賞することにした。 奈良県西吉野村、林業を営む田原(國村隼)は鉄道のトンネル工事に携わっていたが、計画が白紙撤回されてしまう。行き場を失った彼は村の人々を収めた8ミリカメラを残して自殺、未亡人となった妻(神村泰代)は実家に戻ることを決め、同居する従兄(柴田浩太郎)に淡い恋心を抱く中学生の娘(尾野真千子)を連れて村を出る。残された母(和泉幸子)は大きな家を出て、孫が勤める旅館に住み込みを決意する。 染み入るような西吉野村の美しい風景の中に、過疎化に伴なう家族の崩壊を描いて切ない。従兄妹がオートバイを乗る場面などを観ているうちに不思議な郷愁に誘われる一方で、必ずしも悲観的なことだけではないと思わせる辺りは殊勲であろう。 全体的に説明不足気味ではあるが、突然挿入される村の人々を捉えた8ミリ映像が自殺した父親のものと判ってくる辺りの構成はなかなか上手い。 屋内外を問わずライトは殆ど使わず、同時録音らしいがそれ故の不明瞭な音声もそのまま残すという極めてドキュメンタリー寄りの演出は、いかにもカンヌ好み。音声が聞き取れず若干お話が掴みにくいところもある。 しかし、河瀬がこの後作った「火垂」は延々と続けられる手持ちカメラが不快だったのに対し、同じようなセミ・ドキュメンタリーでもこちらは固定カメラを多用していてずっと見やすいのは有難い。 演技について以前観た時は「自然な演技が印象に残る」とだけ書いて済ましているが、実際には三種類の<演技>が混在している。 この映画できちんとした演技歴があるのは國村だけで、発声が他の役者と違う。他の家族を演じる新人たちはごく自然体だが、純アマチュアとは一線を画す演技を披露している。そして、一般の村人は恐らくは台本なしの完全ドキュメンタリー。混在により若干居心地の悪さを感じるものの、素人衆には半端な演技をさせないほうが無難と思う。 プロの役者と全くの素人大勢を一緒に演じさせたのが印象に残る最初の作品はロベルト・ロッセリーニ「ストロンボリ」と思うが、イングリッド・バーグマンというスター女優が素人の中で浮いてしまう失敗作だった。同じような<演技>の混在で成功の部類と言えるのは小泉堯史の「阿弥陀堂だより」。もっと広い意味において本作と共通する演出タッチで最も成功したのは「誰も知らない」であろう。 一昨日の「天河伝説殺人事件」に続いて、今週は奈良県吉野郡宣伝週間になりました。 |
| << 前記事(2007/07/11) | トップへ | 後記事(2007/07/13)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
『萌の朱雀』 〜河瀬ワールドの真骨頂〜
1997年/日本/95分 監督:河瀬直美 脚本:河瀬直美 撮影:田村正毅 編集:掛須秀一 音楽:茂野雅道 出演: 國村隼 ...続きを見る |
キネマじゅんぽお 2007/07/14 00:03 |
<萌の朱雀>
1997年 日本 95分 監督 河瀬直美 脚本 河瀬直美 撮影 田村正毅 音楽 茂野雅道 出演 田原みちる:尾野真千子 田原栄介:柴田浩太郎 田原泰代:神村泰代 田原幸子:和泉幸子 田原孝三:國村隼 田原栄介(少年時代):向平和文 田原みちる(少女時代):山口沙弥加 ...続きを見る |
楽蜻庵別館 2007/07/17 02:40 |
『萌の朱雀』(1997)河瀬直美監督が最初にヨーロッパで認められた美しい作品。
『萌の朱雀』は奈良県出身の河瀬直美監督がその名をはじめてヨーロッパ及び日本(なぜか日本では海外で評価されるまではまったく一般に評価されない。)に知らしめた記念すべき作品である。 ...続きを見る |
良い映画を褒める会。 2007/08/17 01:30 |
『につつまれて』(1992)河瀬直美初陣!ドキュメンタリーで始まった映画作家人生。
カンヌ映画祭でグランプリを取った、河瀬直美監督がその名を始めて世に知らしめた記念すべきデビュー作品がこの『につつまれて』であるが、これはいわゆる劇映画ではなく、ドキュメンタリー映画でした。 ...続きを見る |
良い映画を褒める会。 2007/08/17 01:31 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
コメントとTBありがとうございました。 |
ジューベ URL 2007/07/14 00:45 |
私は河瀬作品は「沙羅双樹」をみて、奈良の、妙に郷愁をさそわせるような映像、そのくせ、心には沁みず、頭でみないとよう分からん作品に、「好みじゃないな」と今回の「「殯の森」も公開中ですが見てません。「沙羅双樹」の時にパルムドールを受賞した監督という紹介があったけど、これがその作品だったんですね。海外には受ける映像だなって、私的な偏見を彼女にもったので、この作品にまで手が伸びませんでしたわ。でもP様の文をよんでいると、これはある程度、私がみてもそれなりに胸に響きそうですね。これも食わず嫌い返上でどこかで観ましょう。 |
シュエット 2007/07/14 08:30 |
(続き)レンタル作品がたまってるもんで。Jiji姉に教えてもらってサボー監督作品「メフィスト」「コンフィデンス/信頼」レンタルしてもう一度観てから返そうと思っていて、さらに又台風で外出できない時用に昨日もレンタルして…サボー作品どちらも、はまりました。最新作「華麗なる恋の舞台で」をみて舞台での巧みな演出うまいなって思っていたら、「メフィスト」みて納得しました。作品と同じ時代を生きた人だから描ける痛みは凄みがある。こういう凄みのある痛さ、重さは〜好きだなぁ。メフィストはP様推奨のサボー作品だとか。 |
シュエット 2007/07/14 08:31 |
ジューベさん、こんにちは。 |
オカピー 2007/07/14 14:45 |
シュエットさん |
オカピー 2007/07/14 17:36 |
>オカピーさん、こんにちは。 |
トム(Tom5k) URL 2007/07/21 15:46 |
トムさん、こんばんは。 |
オカピー 2007/07/22 02:44 |
>オカピーさん、昨日この作品ビデオ鑑賞いたしました。確かに傑作ですね。見事といえば見事です。テーマも手法もしっかりされているように思います。しかも邦画の歴史のなかでも自然な流れのなかに位置しているように思いました。 |
トム(Tom5k) URL 2007/07/26 03:11 |
続き |
トム(Tom5k) URL 2007/07/26 03:27 |
トムさん、こんばんは。 |
オカピー 2007/07/26 22:19 |
| << 前記事(2007/07/11) | トップへ | 後記事(2007/07/13)>> |