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zoom RSS 映画評「殺しの烙印」

<<   作成日時 : 2007/06/02 14:36   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1967年日本映画 監督・鈴木清順
ネタバレあり

日活の社長をして「訳がわからん」と怒らせ遂に追放に至った鈴木清順監督の問題作で、久しぶりの再鑑賞になるが、今回初めて観た六本に比べ自由奔放な面白さがいっぱいである。もはや日活アクションの影も形もない。

殺し屋No.3の宍戸錠が、税関吏、眼科医、宝石商の暗殺を命じられ見事に実行する。
 役人を射殺する時に利用するどでかいライターの看板、医師殺しに使う水道管、宝石商を殺した後逃げるのに利用するアドバルーンといった小道具が大変面白い。特にライターの看板はヒッチコック的な香りがして大いに気に入った。

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しかし、そんな彼も真理アンヌに依頼された外人殺しに失敗すると、彼女や情婦・小川万里子にまで命を狙われるのだ。

真理アンヌが絡んだ場面がこの作品の方向性を語っているような気がする。画面外で台詞を言わせる手法などがマルグリット・デュラスとアラン・レネのコンビによるアンチ・ロマンを思わせるのを見ると、一般的な物語構成を超越するという狙いがあったのではないか。
 このシークェンスでは、真理アンヌが暗殺を依頼する時系列と主人公が情婦と戯れる時系列が自在にコラージュ風に繋ぎ合わせられる。昨今流行の時系列交錯とも違う大変面白いものなので実際に見るに如くはない。

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ここだけが芸術映画風に目立つものの、アンチ・ロマン的に破壊された物語にふさわしい、映画文法無視の編集は序盤の撃合いから最後まで一貫して取られているので、突出していると受け取るのは間違いである。文法無視も全体に散らばれば大変魅力的な手法となります。

さて、この一連の暗殺は実は一つの陰謀であると判明するが、並行して殺し屋同士のランクアップを狙った殺し合いの模様が描かれる。ヘマをした宍戸を殺す役目を担った殺し屋No.1南原宏治との決着前に組織の派遣した殺し屋たちを相手に繰り広げられる、車を使った場面の面白さも邦画アクション史上に名を残すものと言っていいかもしれない。宍戸が車の下に身を隠しながらロープを使って車を動かし相手に接近するのである。いかすねえ。

画像

また、南原が相手を脅かす為に宍戸に接近するシークェンスは実に珍妙で、トイレを我慢して小水を洩らす場面など劇画的な面白さで満ちている。

よくよく考えると、殺し屋組合みたいなのがあるようで、実はその内部のゴタゴタを描いた狭い世界のお話に過ぎない。終ってみれば実に単純な物語で、狙いも明瞭、少しも難しい作品ではない。ストーリーを追うよりイメージ群を純粋に楽しめば良いのである。リメイクとも続編とも言われる2001年の「ピストルオペラ」と違って独善的な作品ではなく、鑑賞者の映画に対する柔軟性を試すには最適。

おかげで僕の文章も文法無視になっちゃいました。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『殺しの烙印』 〜実は解かりやすい映画〜
1967年/日本/日活/91分監督:鈴木清順脚本:具流八郎撮影:永塚一栄音楽:山本直純出演:宍戸錠真理アンヌ小川万理子南 ...続きを見る
キネマじゅんぽお
2007/06/02 16:52
★5月・6月の厳選・旧作(1)★
今回はカルト映画特集みたいになっちゃいました(笑) う〜む、遅かれ早かれ・・・私のブログはこうなるだろうと考えていたけれど、良識ある映画ファンの方々にドン引きされるかも^^; ...続きを見る
シネマ蟻地獄
2007/07/11 16:42
1980年の映画(DVD)
1980年■アカデミー賞★作品賞:普通の人々 監督:ロバート・レッドフォード※長男をボート事故で亡くした一家。父親(ドナルド・サザーランド)と母親(メリー・タイラー・ムーア)は、精神を病み、兄と一緒にボートに乗っていて生き残った次男(ティモシー・ハットン)は自殺未遂を起こす。★監督賞:ロバート・レッドフォード「普通の人々」※ロバート・レッドフォードは、1937年8月18日カリフォルニア州生まれ。舞台美術の仕事を経て、俳優に転向し1959年にブロードウェイにデビュー。1969年... ...続きを見る
中年映画館
2007/09/25 21:34
完成! 「殺しの烙印」 
&nbsp;通勤時間を活用して、ポータブルDVDプレイヤーを使っての地下鉄内鑑賞にいそしんでいます。 ...続きを見る
ポータブルDVDによる 車内鑑賞レビュー
2009/04/22 23:04

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
「ツィゴイネルワイゼン」と「陽炎座」を観て、なんて面白い映画を撮る監督なんだと、勇躍して鈴木清順のフィルモグラフィーを調べてみれば何のことはない。昔観て「ひどい映画だな〜」と思った「関東無宿」などの諸作が含まれていて驚いたのでした^^;

この人は、今でも何だかよく解りません(笑)
「ピストルオペラ」も「オペレッタ狸御殿」も、内容は理解できるが、どこが面白いのか見当がつかないのです^^;
そういう意味で「けんかえれじい」は、すっごく明朗単純ですよね。

けれど、鈴木清順ファンは理屈じゃないのでしょう。
あの強烈な色彩感覚、大胆な構図や編集が、観ているうちにクセになってくるのではないか、なんて風に思います。
薬品臭くてマズイけど、つい病みつきになって飲んでしまう清涼飲料水って、昔ありましたよね。あんな感じで(笑)

かく言う私も、この先、鈴木清順にハマりそうな嫌な予感がするのであります^^;
優一郎
URL
2007/07/11 17:01
ウサワには聞いていましたが、本作は正真正銘、面白かったです!

車を降りてトンネルを走り抜け銃を撃つ。すると、突如として現れた洋館の屋根からスナイパーが転げ落ちる。
ビックリするようなモンタージュで、ムチャクチャだなあと苦笑しながらも、かなり面白い。面白いので問題ない(笑)
廃墟の窓から爆弾を投げ入れる。次のカットは引きでの爆破シーン。常識的には廃墟から走って遠ざかる宍戸錠を挿入すべきで、全くもってインチキな繋ぎなのですが、やっぱり面白い(笑)

ライターの看板から狙撃したり、車の下に身を潜めてのホフク前進などなど、プロフェッサーご指摘の箇所は、まさしく映画的アイデア。
照準に蛾が止まって誤射するなんてのは、今ではシュールな描写ですが、昔の映画にはあんなの沢山ありますよね(笑)
優一郎
URL
2007/07/11 17:02
日活の社長を激怒させたのは「二十四時間の情事」みたいな真理アンヌのシーンかな・・・と想像してますが、全裸の情婦と戯れるクロス・カットなどは、かなり凝っていて、雰囲気はヨーロピアン。初号段階でバッサリ切られなかったのが不思議なほどです。
コアな映画ファンには面白いが、宍戸錠の主演作を観に来たファンには退屈かもしれず、私が社長なら再編集を命じます(笑)

とにもかくにも・・・
当事の日活カラーに縛られず、好き放題に撮らせていたら、この異常天才は次から次へと大怪作を連発していたのでしょうね。
今となれば惜しい気もしますが、それでも本作が残っていることが救いでしょうか。

(長々と書き込んでスミマセン!)
優一郎
URL
2007/07/11 17:03
優一郎さん

「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」「夢二」と復活してから暫く調子が良かったですが、最近の作品は独善的に映ります。前の三作だって独善ではないかと言えばそうなのですが、絵を観るだけで楽しかったですよね。「ピストルオペラ」「オペレッタ狸御殿」は絵を含めて今一つ。

日活の枠に半ば嵌められていた時代はカラーで色彩で勝負した感がありますが、復活前の後期モノクロ作品では構図や文法無視のショット構成に突っ走って良い意味で変てこな監督になりましたね。

「イントゥ・ザ・サン」という日本を舞台にしたアクション映画で、双眼鏡を持った男のミディアムショットの次に、双眼鏡で覗くべき先を歩いている本人のロングショットが挿入されたのには腰を抜かしました。こういうのが連続してあれば確信犯でしょうが、あれは文法を知らないのだと断言しちゃいます(笑)。双眼鏡の後は常識的には彼の主観ショットでしょうに。その後に再び本人。しかし、ロングはまずい。
オカピー
2007/07/12 02:48
(続きます)
本作の文法無視は最初から最後まで一貫していますので、これは鈴木清順独自の文体と思われるわけで、面白く観られますよね。

当時は五社協定時代。まだまだ会社の力が強かったわけですが、皮肉なことに追放の翌年68年にニューシネマが始まり、有名俳優・監督の独立が相次ぎ、そうした専属システムが空中分裂する時代が日本にも訪れるのです。ちゃんちゃん(笑)。
オカピー
2007/07/12 02:52
オカピーさん、お邪魔します。

レビューを興味深く拝見いたしました。

“宍戸が車の下に身を隠しながらロープを使って車を動かし相手に接近するので ある。いかすねえ。”

いかしてましたね! ビックリしました。

ボクも今作のレビューを(非常に舌足らずですが)書いておりますので、何卒、トラックバックをさせて下さいませ。
マーク・レスター
URL
2009/04/22 22:56
マーク・レスターさん、お久しぶりです。

あの車に隠れての匍匐前進は、いかにも映画的興奮を誘われますよね。
これだけでも後世に残る価値があるでしょう。

>舌足らず
いや、大意は弊記事と同じように思いました。^^
オカピー
2009/04/23 02:46

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