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zoom RSS 映画評「夜よ、こんにちは」

<<   作成日時 : 2007/05/14 17:08   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2003年イタリア映画 監督マルコ・ベロッキオ
ネタバレあり

四半世紀くらい前に「夜よ、さようなら」というフランス映画があったが、勿論全く関係がない。こちらは1970年代から80年代にかけてイタリアを恐怖に陥れた極左テロ組織<赤い旅団>を主役に据えたイタリアの異色ドラマである。

78年グループがキリスト教民主党党首にして前首相アルド・モロを誘拐して55日後に殺害した事件がモチーフ。モチーフであって再現ドラマではない。

彼らはメンバーである図書館司書キアラ(マヤ・サンサ)の<家>に監禁、様々な声明を発表するが、政治犯要求に応じない政府に苛立ち、ローマ法王の請願にも拘わらず遂に殺害する。
 という話は事実に即してはいるが、家族を愛し神を愛する人間モロにほだされてテロリズムに疑問を抱くようになるキアラの目を通しているので、主題は寧ろ暴力否定、自由への賛歌となっている。
 キアラの夢という形で幻想的な描写を織り込み、モロが外気を浴び自由を満喫する最後の幻想場面のムードが断然優秀。

画像

内容としては、モロがカトリックをベースにした政党の党首であり、バチカンが絡むので、テロリストを共産主義への狂信的信者と見立てた一種の宗教対立の様相に見えてくるところに興趣がある。それにしては、出てくる<赤い旅団>のメンバーは迫力不足、立て篭っているばかりで能がない。

対比や比喩、暗喩や伏線を多く使っているので二度続けて見たほうが明らかに理解が増し感興が湧くのは間違いないが、大概の方が二度続けて観ることはないはずなので、僕も映画評を書く上で一回観ただけで判断することにしている。その限りにおいて−まして当時のイタリアの政治・社会情勢に疎い一般日本人にとっては−すんなり理解できないところが多く、手応えがあるとは言いにくい。

背景の理解を度外視しても、序盤の赤ん坊騒動はそれ以降の外世界との接触遮断に対する対比にはなっているものの展開上は無駄な感じがあるし、映画のタイトルにもなっている「夜よ、こんにちは」というテロをテーマにした戯曲を書いた図書館利用者(?)が警察に逮捕される一幕も何だか訳の分らないところがある。彼女があやふやになった自分の気持ちを鼓舞すると同時に官憲の矛先を別の者に向けるという目的で嘘の密告をしたと僕は解釈したが、いずれにしても観客の理解に任せ過ぎである。

TVのねぼけた画面の大写しが多いのも映画的魅力を減殺、監督マルコ・ベロッキオがベネチア映画祭でグランプリを貰えなかったのに怒ったそうだが、主催者側のその判断は正しかったと思う。

ヒロイン役のマヤ・サンサは適役好演。

「光の雨」に出てきた連合赤軍の連中なら、「総括しろ」と言って<赤い旅団>を全滅させてしまうでしょう。やれやれ。

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<夜よ、こんにちは> 
2003年 イタリア 108分 原題 Buongiorno, Notte 監督 マルコ・ベロッキオ 脚本 マルコ・ベロッキオ 撮影 パスクァーレ・マリ 音楽 リカルド・ジャーニ 出演 キアラ:マヤ・サンサ    マリアーノ:ルイジ・ロ・カーショ    アルド・モロ:ロベルト・ヘルリッカ    エルネスト:ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ    プリモ:ジョヴァンニ・カルカーニョ ...続きを見る
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
本作は記事にはしてませんが連休直後に観たものですから、
ちょっとオジャマさせてくださいませ。

シュエットさんが睡魔に襲われたと拙宅でコメントして
らした通り、エピソードの意味合いというか
使われ方がまことに不十分で3分の2くらいまでは
正直、辛かったですねぇ〜。(笑)

でもプロフェッサーの載せられているお写真のあのシーンの
解放感は率直に私、モロ氏の気持ちに投影しちゃいました〜。^^

>ヒロイン役のマヤ・サンサは適役好演。

御意!
くわえてモロ首相役の方の落ち着きと渋さで
最後まで観れた、という感が強いかも。

旅団の首領は「輝ける青春」の兄さんの役者さんでしたね。
viva jiji
2007/05/15 17:20
viva jijiさん

さあどうぞどうぞ、相変わらず水しかありませんが(笑)。

傑作と称する方も多いので余り言いたくはないですが、一人で良い気になっているところがあるんですよ。傑作という声も聞くのですが、どうですかねえ?
内容が難解な映画と作り方が難解若しくは下手なのは厳密に区別する必要があると思いますが、どちらかと言うと作り方が不親切、露骨に言えば独善的なので、最低2回は観ないと面白味が出てこない。
序盤不動産屋らしき人物が色々と構造を説明するのは伏線なのですが、こういうのをもう少し上手く扱ってほしいわけです、例えば「暗くなるまで待って」のようにね。

姐さんと同じで、あの自由を満喫する幻想場面というか一連のショットは本当に良かった。それが監督の願いであり、狙いでもあったのでしょうが、それ以外について全体的にもやもやした感じが強くて私は余り買えませんでした。

>「輝ける青春」
そうでしたね。南イタリア系の濃〜いお顔。
オカピー
2007/05/16 02:35
連日のTBで恐縮です。P様はと探したらやはりレビューあげられておられた。JIJI姉のコメントで一度夜遅く見て途中で寝てしまったんだわ、私。「輝ける青春」再見に絡んで、今回、改めてきちんとみての感想です。グダグダかいてしまいました、私にはキアラの葛藤の中に、監督のあの時代に対する視点が見出せず、絵空事的とかんじてしまうところもありました。映像はそれなりに緊張感があり、P様も書かれているように最後の街をあるくモロの映像は、とてもよかったと思うのですが…。
ちょっと私、言いすぎかなと思いもするのですが、お時間ある時で結構ですのでご意見お聞かせ願えたら嬉しいです。
シュエット
2007/10/05 05:38
シュエットさん

viva jijiさんともお話させて戴きましたが、TBましてコメントがあると励みになるので、ご遠慮なさらずにどしどしお願い申し上げます。(笑)
悪口雑言でなければ反論・異論もへっちゃら。

毎日記事をUPされているのに、精密に観て精密に書かれていらっしゃるのに感心する一方で、燃え尽き症候群にならねば良いが、とちょっと心配もしております。
後ほど伺いますから、阿呆なことを記させて下さいまし。
オカピー
2007/10/05 16:27
P様TB&コメントありがとうございます。精密にといわれると困ってしまうのですが…。文章量が多いだけで。本作も観ていて出てきた思いを頭の中で簡潔に纏め上げらればいいのですが、なにせ論理的思考ができない方なので、グダグダと書いてしまって、書いてからある程度結論が出たのですが、もう一度簡潔な文章に…とも思ったのですが、そうしたら逆に他人的な文章になってしまうので、あえて書きたいままに綴ったわけです。仕事の合い間に目を盗みもってシコシコと、です。結局、私がいらだったのは、私はこうした運動を生み出した視点が見えていないとか、」時代への切り込みガ見えないってグダグダ書いてますが、要はP様が言われているように当時のイタリアの政治・社会情勢を描いていなかったところにあるんですよね。それらしき映像を持ってきているけれど、内容は心情に訴えるだけのもの。
シュエット
2007/10/06 04:48
(つづき)心情的には、一方で、この時代に青春を送った映画作家は、やはりこの時代を語ろうと、4半世紀すぎてやっと語れるところにきたわけで、その一方でキアラのように「殺していいの」と言うレベルで苦悩されて、自由だ平和だ愛だって持ってこられると「お前なぁ…」って腹が立ってきて…です。この作品評判が良かったんですね。本作監督はこれしか知りませんが、「輝ける青春」記事書くときにもう一度パンフ読んでいたらイタリア映画についての記事もあって、この監督については「夜よこんにちは」などの作品で彼も80年代の自家中毒的作品から脱出したって評されてました。自家中毒も時代を語ろうとして、どっかで視点が欠落していたんでしょうね。
シュエット
2007/10/06 04:50
(さらに続き)「輝ける青春」ではアニマルズ、CCR、ディープ・パープルなど当時の音楽を使用しており新鮮に思えたのですが、本作でもピンクフロイドの楽曲を使用しており、また「輝ける青春」の監督は別の作品でも「朝日のあたる家」を使用しており、こうも続くと、なにやら楽曲で受け狙いをしているような、穿った見方もしてしまいます。また遠慮せずにTBさせていただきますね。p様のレビュー読ませていただくと、まとまりきれなかったもの、うまく言葉にできなかったものが見えてきて、私の欠落している視点も見えてきて嬉しいです。
シュエット
2007/10/06 04:50
シュエットさん、こんばんは。

ウェブリのコメントが反映されるまでかなり時間がかかるでしょう? 
弊ブログを創設した頃はすんなりと行ったのですが、昨年の前半くらいにスパム対策か何かでひどく遅くなりました。ご迷惑をお掛けしております。

評判は良かったらしいですね。評価も☆☆☆と☆☆★の間で迷ったのですが、結構褒める方が多かったので良い方を取った記憶があります。^^;
いずれにせよ、イタリアの政治的映画の中では決して上位に来る作品とは思いません。描いた時代は違えどベルトルッチの「暗殺の森」みたいに強烈でなくては。

「輝ける青春」の音楽はその時代を感じさせる為に起用したと思われ、時代に即した使い方でしたよね。一方、本作のピンク・フロイドは一応70年代とは言え、事件より大分前の曲ですし単独の曲としてヒットチャートをにぎわしたわけではないですから、環境音楽的に使った可能性が高いでしょう。監督が好きであるなら嬉しいですが。
オカピー
2007/10/07 00:31

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