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help リーダーに追加 RSS 映画評「めまい」

<<   作成日時 : 2006/02/22 11:39   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

アルフレッド・ヒッチコック第45作。原作はフランスの有名な推理作家コンビ、ボワロー=ナルスジャックの「死者の中から」。

初公開以降長い間TV放映を含めて封印されていたこの作品が、同じく封印されていた「裏窓」「ハリーの災難」「知りすぎていた男」と共に久しぶりにリバイバルされたのは1984年。我々ヒッチコック・ファンには垂涎の的だったわけだが、実際に観ても予想以上に素晴らしく興奮して家路についた。それ以来何度も観ているが、印象は全く変わらない。

サンフランシスコ、高所恐怖症の為警察を辞めた元刑事スコッティ(ジェームズ・スチュワート)が、旧友エルスター(トム・ヘルモア)から毎日外をふらふらする若い妻マデリーン(キム・ノヴァク)の監視を頼まれる。彼女は祖母の霊に憑依されたように奇妙な言動が目立ち、自殺願望が見られるという。
 この尾行場面の圧倒的な優美さ。サンフランシスコならではの坂道の効果と右折・左折に繰り返しに酔わされる。マデリーンが自殺を図る金門橋、教会へと続く海岸道路の美しさも目を引く。

高所恐怖症の彼は教会でマデリンの自殺を止めきれずに神経衰弱に陥るが、まともになったと思ったのも束の間マデリーンに似た黒髪の女性ジュディを観たことから再びおかしくなっていく。

ヒッチコックには恋愛映画の要素が多分にあるが、この作品は最も耽美的な趣味が発揮された傑作だと思う。
 彼を健気に思い続ける昔のガールフレンドのミッジ(バーバラ・ベル・ゲデス)が実に良いが、彼女を含めた<三人>の女性と一人の男性の恋愛感情の交錯を描いた作品でもあるのだ。

本作の大きな問題としてよく指摘されるのは、後半がスタートして程なくジュディの回想により、<マデリーンの自殺=殺人事件>という秘密を明かしてしまうことだ。これにより二人が同一人物であることも判明するわけだが、ヒッチコックが作りたかったのがミステリーではなくサスペンスであることを考えれば当然の作劇である。
 ヒッチコックも述べているように、例えば、観客がスコッティの知らない事実を知ることにより<彼が事実を知ったらどういうことになるか>といったサスペンスが生まれるわけである。「主人公は死姦に夢中になっている」とヒッチコックは言うが、そうした刺激的な言葉はさておいて、事実を知らない彼がジュディをマデリーンそっくりに変えていく場面は男のフェティシズムと恋愛感情が交錯し、たまらなくスリリングである。
 同時に、変えられる側の<恋する女性>のデリケートな心理もうまく描き込まれている。演じるキム・ノヴァクも彼女の芸歴の中では圧倒的に良い。グレース・ケリーを彷彿とする金髪時代の洗練された美しさと、ラテン美人のような野生美を発揮する彼女は、グレース、イングリッド・バーグマン、ジョーン・フォンテーンに伍して見劣りしないだろう。

以上、あらゆる面から全く興味の尽きない、正に観客に<めまい>を起こさせる傑作である。「ヒッチコックのベストは?」と訊かれても答えに窮すが、「好きな作品」ならベスト5に入れて良い。

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トラックバック(7件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『めまい』(1958) 特撮好きのヒッチ先生が送る、実験的な要素も多いサスペンス作品。ネタバレあり。
 ヒッチコック監督の1958年製作作品であり、特撮で有名な作品でもあります。ヒッチをあまり知らない人でも『鳥』・『サイコ』と共に、名前だけならば聞いたことがあるだろうと思います。個人的には、主人公の心理面の混乱を、いろいろな映像で示していたあたりが優れているとは思うのですが、突飛過ぎる幽霊話には内容の解りにくさがありました。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2006/02/23 02:16
「めまい」
「めまい」(Vertigo) 1958年アメリカ ...続きを見る
私が観た映画
2006/02/23 12:37
めまい
めまい ...続きを見る
cino
2006/03/02 22:48
#447 めまい
製作:アルフレッド・ヒッチコック 監督:アルフレッド・ヒッチコック 原作:ピエール・ボワロー 脚本:アレック コベル 、サミュエル テーラー 撮影:ロバート・バークス 音楽:バーナード・ハーマン 美術:ハル・ペレイラ,ヘンリー・バムステッド 編集:ジョージ・トマシーニ 衣装(デザイン):エディス・ヘッド 出演者:キム・ノバク 、ジェームス・スチュアート 、バーバラ ベル ゲデス、トム・ヘルモア,ヘンリー・ジョーンズ 1958年アメリカ ...続きを見る
風に吹かれて-Blowin' in th...
2006/03/21 18:38
「めまい」(2回目)
「めまい」(1958年、アメリカ、映画)      監督 アルフレッド・ヒッチコ ...続きを見る
N_ardis
2006/05/07 19:18
めまい 1958年/アメリカ【DVD#74】
前半、キム・ノヴァク演じるマデリーンは実に美しい。立居振舞いがなんともいえない。上品なコート姿もすばらしいし、スコッティの部屋で気がついたときの表情も魅力的。主人公のスコッティとともに彼女の行動を追ううちに、同じく彼女の魅力に引き込まれていく自分に気がつ.. ...続きを見る
オールド・ムービー・パラダイス!
2006/06/23 18:19
「めまい」
VERTIGO 1958年/アメリカ/128分 監督: アルフレッド・ヒッチコック 原作: ピエール・ボワロー /トーマス・ナルスジャック 脚本: アレック・コッペル/サミュエル・テイラー 撮影: ロバート・バークス 音楽: バーナード・ハーマン タイトルデザイン: ソウル・バス 出演: ジェームズ・スチュワート/キム・ノヴァク/バーバラ・ベル・ゲデス/トム・ヘルモア ...続きを見る
寄り道カフェ
2009/06/10 16:06

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
トラックバックしました。
個人的には、ジュディをマデリーンそっくりに変えようとするスコッティを腹立たしく感じました(^^)
ああいう感情って男性特有のもののような気がします。
オカピーさんはどう思いますか?
男性の意見を聞かせてください(^^)
カカト
2006/02/23 12:46
カカトさん、こんにちは。
 【良い映画を褒める会】の用心棒さんは<サディズム>と表現されていますが、そうかもしれませんね。男性を代表して謝罪申し上げます(笑)。
 しかし、特に片思いの場合は、殆どストーカーとばかりに対象を追い続けるという気持ちになりますよね。スコッティのこともちょっと解ってくださいね。
 ♪好きだよと言えずに初恋は ふりこ細工の心 放課後の校庭を走る君がいた 遠くて僕はいつでも君を探してた♪てな感じですよ。思い出すなあ、30年前。
 おっと、話が逸れてしまいましたが、爽やかな初恋も濃密な大人の恋もその点では大して変わらないのではないかなどと・・・
オカピー
2006/02/24 14:46
高校時代に スクリーンとロードショーをとっていて 美人女優をみるのが(レズっけがあるのかな)趣味でした。キム・ノヴァクは うっとりながめても あきない美女でした。めまいも TVで見てたしかに 耽美的。近所にボーイフレンド君がいるが、今年に入って めまいに悩まされて 悩んでいる。寝返りを打つと ふっと飛ばされそうになり 現在毎日耳鼻科へ通っている。男性がめまいを おこしても 気の毒なでけだが 美人とめまいは どこか官能的ですね。 サイコや 裏窓など 映画好きになったのも ヒッチコックのおかげです。また気に入った 記事がありましたら たちよります。
和登さん
2006/03/18 14:04
和登さん、こんにちは。
僕は「スクリーン」をいまだにとっています。今年で35年目に入りました。昔は勿論映画スターの顔を見たり名前を覚える為でしたが、いつぞや双葉十三郎氏の映画評から映画の見方を勉強する為の購読となり、現在は資料として利用しています。
男でも男に惚れ、女も女に惚れる。必ずしもホモっ気やレズっ気というわけでもないでしょう。美しいものは美しいのですから。

僕の映画評はクラシックな純然たる映画評なので、余り面白くないのですが、今後とも宜しくお願い致します。
オカピー
2006/03/18 16:49
かなえられなかった恋を病的に取り戻そうと必死になっているスコッティが哀れにすら思えてきました。古臭い手法をめまいの表現方法に取りながらも、それさえも味わい深く堪能できる作品ですね。
ヒッチコックってやっぱり巨匠だと思いました。
chibisaru
2006/03/21 18:43
chibisaruさん、毎度有難うございます。
この映画が撮られた頃は、あの手法は決して古くなかったんですよ。カメラをバックさせながらズームアップするという手法をヒッチコックが思いついて<めまい>を表現しましたが、これはスコセッシなどの後輩たちが別の場面で使っています。
ただそうした技術はすぐに古くなります。しかし、この作品の持つトータルの素晴らしさはより輝くでしょう。
オカピー
2006/03/22 13:41
オカピーさん、TB&コメントありがとうございました。
キム・ノヴァクばっかり観ていたこの作品ですが、確かにサンフランシスコの景観も秀逸。ビスタビジョンを活かすということなのか、横方向のスペースを意識した画面構成が多用されていたような。
FROST
2006/06/23 18:18
FROSTさん、コメント有難うございます。
映画館で観た時は本当に色彩が素晴らしくて、圧倒されました。その後数回に及ぶTV放送ではその面がどうも物足りない。
>ヴィスタビジョン
当然横の意識も強くなっていますね。ゴールデンゲイト・ブリッジでの描写とか。
今となっては当たり前なので余り指摘するコメントが見られませんが、トラックバックしながらズームアップすることによるめまいの表現はこの作品が初めてではないでしょうか。それも評価したいですね。
オカピー
2006/06/24 03:11
この作品の重い暗さってヒッチコック作品のなかでもちょっと異色な雰囲気みたい。でもこんなタッチは好きだわ。心理サスペンス、ラストシーン、作品そのものが「眩暈」だわって思う。
子どもの頃ヒッチコック劇場を毎週見ていて、淀川さん解説なんかの洋画劇場でも何回もヒッチコック作品って子どもの頃に観ていて、馴染みが深すぎて逆におざなりになっている。今シネフィルでヒッチコック特集を毎月2本10ヶ月放映されるから性根入れて観てみようかと思ってます。
でもヒッチコック作品のファンって、ヒッチコックの面白さを分かるのは男性が多いんじゃないかしらって気がするわ。私の性格判断による「根拠のない直感」だけど(笑)
本作とか「裏窓」なんかが好きな作品だわ。
また頑張ってTBもってきま〜す!
シュエット
2009/06/10 16:29
シュエットさん、トラコメ有難うございます。

>作品そのものが「眩暈」
僕も記事の最後にそう書いておりますが、本当に素晴らしい。
これはリバイバル時にどでかいスクリーンで観て色にも魅了されましたね。TVで観ると古臭い色彩なんですが。

>ヒッチコックの面白さを分かるのは男性が多い
恐らくそうですね。
ヒッチコックはお話そのものもさることながら、構成とテクニックが物凄いでしょ。しかし、そういうことに興味を覚える女性はブログなんか拝読していても非常に少ない。

>「裏窓」
も素晴らしい恋愛映画としての側面もあるので、女性にもファンが多いですね。
オカピー
2009/06/11 02:20

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